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73:怒れる悪夢

 勇者に踏みつけられ、剣をうなじに当てられる。少しでも変な行動をすれば、頭と体を切り離すぞというのが、俺を睨む視線だけでも伝わってくる。

 生半可に刺激すると、怒りに任せた剣が振り下ろされるだろう。

 大人しくしてるか、一撃食らわせて勇者を退かす。選択肢はこの二つだ。


 「モミジ! 今すぐに助けるぞ!」


 デモンは当然後者を選ぶ。奪ったクロスボウを使い、矢じりを毒で染めた矢を射つ。それに続いて本人も突っ込んでくる。

 風を切って飛ぶ二段攻撃に対して、勇者は右腕で一凪ぎ。業炎の幕が作られて、矢を飲み込み、デモンの特攻を退けた。

 俺も直接炎に巻かれはしなかったが、それでも火傷しそうな熱風が体を通る。

 

 「勇者殿、こいつらは街を襲う魔物とは違うんだ。ここは見逃してくれないだろうか?」


 いきなり勇者が出てきて、俺達との攻防を傍観していたレッシェが気を取り戻して思い出したかのように言う。

 

 「はぁ!? 魔物であることには変わりはねぇんだぞ。魔物は全て殺して当然だろ」

 「だとしても停戦してくれないか? こいつらに死なれると困る」

 「うるせぇな。魔物を庇うってんなら、人間だとしても容赦しねぇぞ!」


 勇者は苛立の表情を浮かべながら黒煙が上る右手をレッシェに向ける。その体勢で何かを呟いた途端、手のひらから火花が飛び散るのが見えた。

 まさかとは思うが、レッシェにさっきの業炎を撃とうとしてるのか。

 やってることが魔物と変わんねぇな。

 出来れば助けてやりたいが、俺には何も……。

 

 いや待て。勇者はレッシェとデモンのいる前に視線を向けており、多分下の俺には剣の脅しで動けないだろうと、あまり意識を割いていない。

 俺もレッシェも助かる大チャンスだろう。


 「そうゆう訳だ勇者。毒を食らえ!」


 空いていた両手を上に。勇者の顔に届くようにして、毒液を発射した。


 「うおっ、苦っげ!」

 

 これで業炎を阻止して、俺の命を握っていた剣が離れて逃げれるようになる。

 そんな最高な結果に出来るかと思ったが、現実はそう甘くなかった。


 毒を飲んだ勇者は苦しそうに咳をしつつも俺の拘束は解かず、むしろ業炎を出すのを止めた右手も使って、がっちりと押さえ付けて来た。


 「お前、調子乗んなよ? 自分の立場が分かってねぇのか」


 ヤバイヤバイヤバイヤバイ。殺される。

 この世界に来て何度か危機はあったが、実際に死がすぐそこにあるのを知ると、段違いの恐怖を感じる。冷や汗が止まらない。

 

 「このまま首を落としてもいいが、お前には死なれるとちと困るんだよなぁ」

 「え? じゃあ……」

 「カルツィ、開けてくれ!」

  

 勇者が指示を出すと、空間に裂け目が現れる。

 裂け目はどんどんと広がっていき、人一人が問題なく通れる広さにまでなった。

 

 「おい! 早くモミジを返せ!」

 

 デモンが俺を助けようと飛んできていた。

 黒い瘴気を纏って、まるで弾丸のように。

 

 「両手が塞がってると思えば当然来るよな、妖精!」

 

 勇者が俺から手を離して剣で迎え撃とうとする。

 

 互いに剣や引っ掻きをいなし、小さな火の玉や毒の粉で牽制を入れ、一撃を入れる隙を探す。

 俺は二人が戦っている間に少しでも距離を取ろうと立ち上がったが、裂け目から現れた細い腕に襟を掴まれて、ずるずると引きずり込まれていく。

 毒液を浴びせる等の抵抗もしたが、意味を成さなかったので、諦めて裂け目の中に連れ去られる事にした。

 

 「デモン! 絶対に死ぬな!」


 最後にこれだけを伝えて、暗い裂け目の中に入っていった。

 デモンが何か叫んだようだが、裂け目が閉じると同時にその声は聞こえなくなった。

 

 

 

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