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72::勇者の悪夢

 隙間の中。創造主のカルツィは裏世界と呼んでいるこの世界を悠々と飛ぶ勇者達に外を飛ぶ魔物達は気付いていない。見えてすらいない。

 魔物がこちらに突っ込んで来ても衝突はせずにすり抜ける。

 中から外に、外から中に。どちらからも干渉することはないのだ。

 なので、臆せず最短距離で飛ぶ。

 

 『レン、腕は大丈夫?』


 それは誰かの口からではなく、勇者の脳内に直接言葉を送っていた。

 勇者も「炎のせいで少し痛いが、人も抱えられるし別に問題はない」と口には出さずに返答する。

 

 『そう。だったら加減はいらないわね』

 「加減はしてくれ。街を燃やされたらたまったもんじゃねえ」


 勇者に語りかけているのはアリア。赤髪が特徴的な魔法使いだった。

 彼女は先週、魔神王の奇襲を受けて命を落とし、勇者に魂と右腕を託して運命共同体となっている。

 業炎はその影響で出せるようになった。


 「あれってレンが前に言ってた妖精じゃないか? 紫髪で幼いってやつ」

 

 カルツィが示した先は海が近くにある街の一角。

 そこには建物の壁にもたれ掛かって座る者、黒い巨人を連れた者。

 そして以前逃がした妖精と魔物の味方をしていた少年がいた。

 蜘蛛女の姿はないが、恐らく近くにいるだろう。

 

 「間違いなく人を襲ってますよね。早く助けにいかないと」

 「分かってる。このまま妖精の後ろを取って、気づかれる前に殺す」

 「人間はどうするんだ?」

 「捕らえる。あれには聞きたい事が山程あるからな」


 作戦が決まれば早い。

 勇者は二人を強く抱きしめ、急降下を始めた。


 ◇


 「レッシェ嬢! 俺はこいつらが人を襲ってたからそれを止めようと!」

 「嘘つけ! お前が金稼ぎだとかぬかして、矢を撃ったんだろ!」

 「そうだぞ! さっさとハクジョーしろ!」

 「黙れ! テメェらがしろ! っゲホッ」

 

 俺とクロスボウの男は子供じみた口論を広げていた。

 それを苦笑いしながら聞くレッシェ。


 「もうお前ら面倒だからその辺にしとけ。お前は咳が止まったら魔物退治に増援、魔王とデモンは城に戻れ」

 「はぁ!? なんで魔物を庇う!?」

 「悪いがそうさせてくれ。金が欲しいんなら口止め料もやるから」


 それを聞いた男はこれ以上何も言わず、咳を止めるために呼吸を整え始めた。

 金が貰えると聞いて大人しくなったようだ。現金な奴め。


 「ちなみに、俺達が城に戻る理由は?」

 「お前はともかく、妖精の方は今みたいに敵と勘違いされそうだからな。野放しにはしたくないんだ」


 それは一理あるな。

 この男は勘違いではなく故意だったように思えるが。

 

 「モミジ、何か破れる音が聞こえない?」

 

 デモンが聞いた音を俺も聞き取ろうと耳を澄ませてみた。

 その瞬間、頭を掴まれて地面に叩き付けられる。

 何が起きたか理解しきれず、しばらく放心するしかできなかった。

 

 「チッ、一匹逃げたか」


 その声は森で追ってきた男の声だった。

 彼が勇者とは別人という望みに賭けて質問をしてみる。


 「お前、勇者?」

 「そうだ」


 はい勇者で確定ですね。

 王国内にいるかもしれないのは分かっていたが、まさか出会ってしまうとは。

 自分の不運さを嘆きたくなってくる。

 

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