70:心得違の悪夢
街の上空では魔物が飛び交っており、そいつら目掛けて矢や炎弾がそこら中から打ち上がる。
しかし倒しても倒してもどんどん追加の魔物が現れていてらちが空きそうにない。
ただ、襲撃に来た全て魔物は有象無象の雑魚で、強力なドラゴンだとかの一匹で街を滅ぼせそうな力を持った魔物がいないのはせめてもの救いだろう。
そんな中で俺がまずすべきことは、俺達の存在に気付いてすぐにでも襲い掛かろうとしている魔物達を迎え撃つ事。
今もデモンが戦って食い止めてくれてるが数が多くて一匹ずつ倒していく戦法だと時間が掛かっている。
範囲攻撃を持たないデモンは集団を相手するのが苦手なのかもな。
出来ないことを補い合うのは仲間って感じがして好きだ。
「毒打つぞ、離れてろ!」
「分かった!」
元気な返事と共に、垂直に飛び立つ。
素早いデモンに追い付けなかった魔物は屋根の上で立っている俺にターゲットを変えた。
全方位から襲い掛かられたので、体を回転させて毒を撒き散らす。
足場が不安定だったせいで、屋根から転げ落ちそうになるがなんとか踏ん張る。
魔物はというとやっぱり毒を耐えた奴が少数。けど問題ない。
天から急降下してきたデモンが一匹を踏みつけ、残りの魔物も黒い霧を纏った手で一匹ずつ切り裂いていく。
デモンの勇姿を見ていると後ろから何かが飛んでくる音がした。
それにビビってバランスを崩し、屋根から落っこちてしまう。
この建物は二階建てで高さでいえばそれほどでもないが、無傷では済まないだろう。
「うわあああぁ!」
「モミジ!」
デモンが最後の魔物を倒して、急いで俺を助けに来てくれたおかげで落下は免れた。
「こ、怖ぇ……」
「全くもう、気を付けてね!」
油断しとった。
地面を見下ろすと、俺達が倒した魔物の山が築かれていた。
多分、あのまま落下したとしても魔物がクッションになって怪我はしなかっただろう。代わりに怪我をするよりも嫌な不快感に襲われていた。
デモンには感謝しかない。
「へぇ、さっきの矢を避けたのか」
「お前が犯人か」
建物の陰から細身で長身な男が現れる。
その男は何も言わずに持っていたクロスボウを構え始めた。
「待って、ちょっと待って。自己紹介して?」
「必要ねぇな」
「ヤバッ、離すよっ!」
俺の腰を掴んでいたデモンの手が離され、その直後矢が放たれる。
矢は俺の髪の毛をかするまでに近くを通り、天高く飛んでった。
「チッ、避けんなよ」
「お前っ、頭ヤベェだろ! 何がしたいんだよ!」
「珍しい魔物を狩って金貰うだけのマトモなことだ」
「だったら街にいっぱい飛んでる魔物を狩ろうぜ? 金だけじゃなくて名誉のおまけも付いてくると思うんだが」
「お前らもその仲間だろ?」
そうなるのか……。
これは違うと言っても証拠もないし絶対信用してもらえんな。
誰か事情を説明してくれる人が欲しい。
「さぁ、もう一発いくぞ!」
「させない!」
男が矢を放つと同時にデモンも走り出す。
その辺に倒れていた魔物を盾にして矢を防ぎつつ一気に距離を詰めていき、男の目の前で羽ばたきながら後ろにジャンプする。
羽ばたいたことによりリンプンが舞い、それを吸った男は苦しそうに咳き込む。
「ゲホッ、チビ妖精。ふざけんじゃねぇぞ……。ゲホッゲホ。あぁ、苦しい」
「懲りたか?」
「ったりめーだ……」
後方から足音が聞こえる。
人間の足音とベチャベチャという少なくとも人間のものではない足音。
「魔王、これはどういう状況だ?」
レッシェといつぞやのゼリー状ゴーレムだ。
そこら中に倒れている魔物と苦しむ男。
うん、見ただけじゃ理解できる筈がない。




