7:魔王集会 ルール説明
「【知を持つウェアウルフ】スパンダ!」
「ウォォォン!」
さっきの獣の咆哮とは違う叫びを上げて出てきたのは、巨大な狼男。
よく見たら舞台の上に立っている魔王達はほぼ人間と同じような見た目をしている。
明らかに人外だと分かるのは今入場してきた狼男のみだ。
「七人目!【炎帝】ボルドマ!」
炎を纏った男が飛んできた。
熱い。
「これで最後!【異界の知識保有者】カイト!」
すさまじい轟音と共に入口をぶっ壊して出てきたのは戦車だった。
そして中から一人の男が出てくる。
いや、ちょっと待て。
この世界に戦車なんてあるのか?
その思考を遮るように司会の少女の叫びが聞こえる。
「新たな魔王八人が出揃った! そしてこの儀式を行ったら本格的に魔王として認められるわ! 手元の本を見てみなさい!」
そんなの持ってないぞ。
と、思ってたが上着の中に何故か入っていた。
いつの間に入っていたんだろうか。
本の方は淡い薄紫色を放っている。
「その本は魔王としての命ダンジョンクリスタルになっていくわ! これをダンジョンに設置すればダンジョンとして機能するわ! しかし気を付けて。これを壊されるイコール魔王としての『死』ですからね!」
本は俺の手に収まる程の大きさの宝石に姿を変えた。
アメジストのようで綺麗だ。
そして割ろうと思えば簡単に割れそうな感じがする。
「さぁ、私のやることは全て終わったわ。後は魔神王様に任せますわ! おいでくださいませ! 魔神王様!」
「ハッハッハ、今回も賑やかだね」
舞台の中央。
そこにタキシード姿の老人が立っていた。
どこからか来たというわけでもなく、気付いたらそこにいたという具合だ。
「皆、ごきげんよう。そして新たな魔王達よ。初めまして。私が魔神王です」
魔神王としては威厳が感じられない。
いや、もしかしてこの姿は仮の姿で本当の姿はおぞましい物なんだろうな。
勝手な妄想。
「さて、私からは魔王のルールを説明させてもらうよ。まず一つ。これは毎回言ってる気がするけど、全ての魔王のトップを目指して頑張ってね。そして二つ目。トップを目指すためにはルールなんて無い。戦争でも侵入でも魔王同士なら何でもありさ。」
うわっ、何でもありって言ったぞ。
なるべく目立たないようにすれば大丈夫かとも思ったが、それも多少の時間稼ぎにしかならなそうだ。
「三つ目。何も行動を起こさなずにただじっとしてるってのは無しでお願いしたいな。そうだな、今から一年以内に何も行動を起こさなかった魔王にはペナルティを与えようかな。」
多分これは自分から相手の魔王のダンジョンに侵入したり戦争を仕掛けろって事だろう。
嫌なんだが、ペナルティも何されるか分からないしこっちの方が嫌かもしれない。
「こんな所かな? では後は皆でパーティーを楽しんでね」
その言葉を言い終わったら魔神王は黒色の何かに沈み、その姿を消した。
そして舞台下に集まっていた魔王達は魔王同士で話を始めたり、用意されていた料理を食べ始めたりしてた。
「私も楽しませてもらおうかしらね」
そう言ってパンクな服装の女性、俺の予想は一番最初に入場した人。
その人は舞台を飛び下り、パーティーの輪の中へと入っていった。
それに続いて他の魔王達も続いていった。
俺もそれに続いていく。