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67:楽しいディナー

 女性陣はワインを楽しみながら会話を弾ませていた。

 そんな彼女らを横目にドジアロはワインの入ったグラスをゆっくり回しながら俺に問い掛けてくる。

 

 「さて、モミジ君。君はどうしてこの世界に来たのか覚えているかい?」

 「……全く覚えてないです。寝てたらいつの間にかこの世界にいました」

 

 何なら俺が聞きたいくらいである。

 あの日の事を思い出してみても、特に思い浮かぶ出来事がない。

 あの日は雨でじめじめしておりちょっぴり憂鬱な気分だった位だろうか。

 これが理由だったらたまったもんじゃねぇぞ。


 「そうか。世界を繋ぐのに重要な手掛かりになるかと思ったが。残念だ」

 「申し訳ないです」

 「謝る必要はない。そっちの世界に行けなくなった訳ではないのだからな」

 「そういえば、何でこっちの世界に来たいんですか?」

 

 このタイミングでワインを一口飲んでみた。

 ほんのり甘口で美味だった。

 ただ、これがいいワインだなというのは分からなかった。

 普通のと飲み比べても判断出来ない自信がある。

 

 「君の世界の技術を学んで、この世界の文明を発達させる為だ。調べた所だと、薄い板のような通信機や、燃料さえあれば馬車なんて比ではない程有用な乗り物なんてものあるそうだな」


 ドジアロが言ってるのはスマホと自動車の事だろうか。

 ここで俺はカイトの存在を思い出した。

 アイツに頼めばこれらの物は出してもらえるんじゃないか?

 名案かと思ったが、カイトがこの世界のどこで魔王をやってるのか全く情報がない。

 それに、頼んだとしても出してくれるか分からない。

 

 それでもカイトについて言うべきか悩んでいると、部屋の扉が開かれ、何人かのメイドさんが入ってきた。

 

 「皆様、お料理をお運びします!」


 メイドさん達は料理を机に並べていく。

 鳥の丸焼きだったり、白身魚のカルパッチョだったり、見たことのない野菜のサラダだったり。

 五人でも食べきれるのか怪しい程の料理が出てきた。


 「どうぞごゆっくり!」


 仕事を終えた召し使い達はそそくさとこの部屋を出て行った。

 

 「さぁ、遠慮せずに食べろ!」

 

 こんなに種類があるとどれから手を付ければいいか迷ってしまう。

 とりあえず、手当たり次第に料理を食べていく。

 どれも美味で特にカルパッチョが個人的に気に入った。


 「質問を続けようか。食べながら答えてくれればいい。君は勇者の存在を知っているかい?」

 「あ、そいつには前に襲われた事あります」

 「おっと、そうだったのか」

 「その勇者がどうしたんですか?」

 「アレは全ての魔王を討ち取ると狂ったように息巻いててね。モミジ君に警告しておこうと思ったんだ」


 だからあの時は鬼の形相で追って来てたのか。

 何か深い事情でもあるのだろうか。

 

 ていうか勇者って今どうなってんだ? 

 魔神王が勇者を倒しに行った後は何も聞かされてない。

 報告することも無いほどに終わったのなら嬉しいのだが。

 ドジアロはこの動向を知ってるのだろうか。

 

 「ドジアロさん、勇者を最後に見たのっていつ?」

 「三日前に、王国内で勇者を見たと兵が言っていたな」

 「その時の勇者の様子はどうだった?」

 「勇者がいたとしか聞いていないな。恐らく変わった様子はなかったと思うぞ」


 なるほど。

 逃がした、返り討ちにあった。

 理由は分からんが、魔神王がしくじって勇者は普通に生きている。

 おまけに三日前に見たって事は、まだ王国内に滞在してもおかしくない。

 王国内ならよっぽどの事がない限り攻撃はしてこないだろうが、それでも出会いたくはないな。

 正直怖い。


 「モミジ! 勇者なんて怖くないよ! なんたって私とアラクネがいるからね!」


 話を聞いていたらしいデモンが元気付けてくれた。

 こういうデモンのポジティブな性格は不安を飛ばしてくれる不思議な力がある。気がする。

 とにかく彼女の頼もしさはありがたい。

 

 安心したらどっと疲れが体にのし掛かってきて、眠気も襲ってきた。

 アルコールが効いてきたのもあるかもしれない。

 あ、ダメだ。重くなるまぶたに抗えない。

 あっという間に夢の世界へと誘われていく……。

 

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