66:ディナーが始まる!
「ひとまず、貴様らが大悪党ではないことが分かりました。が、しかし! 王に手を出さないとは限らない! 私も護衛としてお供しますぞ!」
この場の誰にも有無を言わさず、ラクスがついてくることになった。
護衛としてらしいが、この人強いのだろうか。
なんなら俺でも勝てそうだ。
「厄介な人が増えましたね……」
アラクネが小声で呟く。
それを聞いたラクス。
「誰ですか!? 厄介な人とか言った人は。失礼ですよ!」
と、注意をする。
それにしても、よく今のささやきにも近い声を聞き取れたな。
老いているにも関わらず、かなりの地獄耳だ。
そんな厄介なラクスを先頭に回廊を進み、大きな広間に入った。
吹き抜けがある造りになっており、開放感がある。
広間の中央は何も無いのでここでドジアロが好きだという戦いを行い、それを上から観戦するなんてことも出来そうだ。
床に傷跡も残っているし本当にやってそうだ。
それはそれとして、吹き抜けというのは良いな。
お洒落なのは勿論、高低差を活かした攻撃が出来る実用性もある。
帰ったらダンジョンに造ってみよう。
それと、広間の奥で立つ女性の石像が気になったが、ラクスはそれに目もくれず、広間の出入口の一番近くにある階段を上っていく。
「モミジ君。あの石像が気になるのかね?」
「あ、はい。あの人は誰なんですか?」
「彼女は初代の国王だ。おしとやかそうに見えるが、あの服の下は俺のように筋肉ムキムキだ!」
なるほど、筋肉って遺伝するのか。
実際どうなのかは知らんけど。
階段を上り、これまた一番近くの部屋に案内される。
真っ白な布が敷かれその上に食器や花瓶、蝋燭などが置かれた細長いテーブルがある部屋だ。
偉い人がここで会議をしながら食事をしてそう。
「では皆様、まもなく料理が運ばれますのでしばしお待ちを。それと再三になりますが、よからぬ事ををしないようにお願いしますよ?」
ラクスは俺達に念押しをしてから部屋を去った。
そんな心配は杞憂でしかないのにな。
「立ち話もなんだし、とりあえず座ろうか。好きな所に座っていいぞ」
ドジアロに促されたので、適当な椅子に腰掛ける。
うおっ、座り心地最高だな。
「私、モミジの隣座るー!」
デモンは俺の右の椅子に座った。
そして足をパタパタさせ、料理が運ばれてくるのを待っている。
その更に右にアラクネが座る。
二脚の椅子を使い、蜘蛛の足を器用に曲げて椅子に座っていた。
レッシェとドジアロは反対側の椅子に一人分席を離して座った。
その際、レッシェは後ろにある戸棚から一本のワインボトルを取り出した。
「ドジアロさん、この高そうなの飲んでいいか?」
「勿論いいぞ。客人に出す物として申し分ない」
「おっしゃぁ!」
レッシェは男のような歓声を上げ、勢いよくコルクを開けた。
「君達、酒は大丈夫か?」
「大丈夫……だよね?」
以前の祝勝会で普通に酒を飲んでいたのは知ってるが、念のため聞いておく。
「私達は大人だからな! 飲めるぞ!」
「私も大丈夫ですよ」
「じゃあ俺も飲む」
折角の機会だし、良いワインというのを味わってみたい。
それと仲間外れが嫌だという思いで飲むことにした。
「そうか。ではレッシェ、彼等にもワインを入れてやってくれ」
レッシェはグラスにワインをなみなみと注いだ。
ブドウの甘く芳醇な香りがする。
「皆、グラスにワインは入っているな? ならば、人と魔物の珍妙なこの出会いに乾杯だ!」
ドジアロが音頭を取り、直後にグラス同士をを軽くぶつけて乾杯をする。
その音が人と魔が共に過ごすディナーの合図となった。




