65:サイルマードの大臣
城の中の最初の部屋は細長い回廊になっており、中央には赤いカーペットが敷かれ、両脇の壁には何かの紋章が描かれたタペストリが掛けていたり、見たことの無い花が入れられた花瓶等の装飾品がある。
「わぁー! カッコいいな! 乗っ取りたいな!」
「ハッハッハ、やれるもんならやってみるといい」
「なら覚悟しとけー!」
デモンとドジアロはすっかり仲良くなったのか、二人隣り合って歩いている。
二人が並んだことで改めて分かったのだが、ドジアロは背が高い。
大男だったオーエンの身長も優に超えてるだろう。
具体的に言うと小学一年生程度の身長のデモンが二人積み重なるとドジアロと同じくらいにはある。
スパンダにも思ったが、こんなに身長があると生活に支障が出そうだ。
そんなことを考えながら回廊を進んでいると、奥から一人の小柄な老人が走ってきた。
「ドジアロ殿、護衛は付けときなさいってあれほどいいましたよね!?」
老人は肩で息をしながら、ドジアロが護衛を一人も連れていないことを責めていた。
「ラクス、さっき娘にも言ったが彼等に失礼だろう」
「いやいや、だから護衛はいらないなんて危険すぎます! もしこの魔物共が国を乗っ取ろうとしている悪党だったらどうするのです!?」
そう言ってラクスと呼ばれた老人はこちらを睨み付ける。
この人の言っている事は正しいし、王の心配もしてるので恐らく悪い人ではないのだろう。
現にさっきデモンが城を乗っ取りたいとか言ってたし。
だけど何だろう。気に食わんな。
「レッシェさん。あの人は何者なんです?」
「大臣のラクスさんだ」
「こら、レッシェ嬢! 魔物なんかに私の名前を教えなくてもよろしい!」
うわ、ラクスがこっち見た。
レッシェに黙っていろと目で訴えているようだった。
「まぁ、あんなだけどいい奴だよ」
「そっか……」
うわ、ラクスがこっち来た。
俺は無意識に一歩後ずさろうとしていた。
「な、なんすか?」
「魔物よ、貴様らが今日まで人を殺めていないのは私も知っています。ですが、私はあなたを信用したわけではありませんので」
俺の胸を軽く小突いてくる。
その小さな体に見合った非力さで全然痛くなかったが、精神的に来るものがある。
「ラクス、心配性なのは結構だがその辺にしとくんだ。失礼が過ぎるぞ」
「で、ですが……」
ラクスは何かを言おうとしていたが、それを邪魔するかのようにデモンが口を挟んだ。
「おじさん、大丈夫だよ! モミジはそんなことしないぞ!」
「ほう、何故そう言えるのですかね?」
「それは……なんでだろ?」
デモンは俺に助けを求める為に俺の顔をじっと見つめてくる。
ちょっと恥ずかしくなって視線を反らしそうになったが、なんとか堪えてデモンの期待に応えてやる。
「えーと、ラクスさん? 俺らはそっちから攻撃されない限りは大人しくしてるよ」
「なるほど。ではその逆、そちらが少しでも悪事を働いたら、こちらも容赦なく潰させてもらう。この条件も飲んでもらいますよ?」
「上等だ」
当たり前の条件。
これくらいは飲めなければ、協力をするなんて不可能だ。
ラクスはしわくちゃの手を差し出してきたのでこちらも強く握り返す。
この光景を見てドジアロは腕を組ながら大きく頷いていた。




