64:筋肉大王
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城に近付くためには石で出来た長い架け橋を渡らなければいけないようだ。
小さく聞こえる波の音から橋の下は海でそれなりに高さがあると推測する。
橋は丈夫で揺れはしないがちょっと怖い。
俺は高い所はあまり好きではないのだ。
恐怖かそれとも潮風のせいなのか、少し肌寒い。
「あ、ドジアロ王!」
「え、居るの?」
「ほら、前にいるあの人です!」
身を乗り出して前を見ると、橋の中央で仁王立ちをする大きな人影があった。
この人物がサイルマードの国王、ドジアロのようだ。
マントとパンツ以外何も身につけてない。
本物の裸の王様だ。
「ハァッハッハ! よく来たな!」
歓迎の言葉と共に、ポーズを取りこちらに上腕二頭筋を見せつけてくる。
さっきレッシェが言ってた筋骨隆々と言うに相応しい肉体美だった。
「お前が王か! 私と戦おう!」
「おや、元気なオチビちゃんだ」
「だれがチビちゃんだ!」
デモンは既に馬車の外におり、いつでも準備OKの状態だった。
対してドジアロは、悠々と別のポーズを取っていた。
てか、デモンよ。
王に戦いを挑むってとんでもない無礼を働いているぞ。
「元気があるのは結構だ。しかし、今日は晩餐会もあるし戦うのは明日以降にしないか?」
「むぅー、分かった」
ドジアロは怒りの色を全く見せず、穏便に場を収めた。
そしてまたポーズを取る。
一々ポーズを取るのが笑えてくる。
「さぁ急ごう! 我が居城まであと少しだ!」
「おぉー!」
それだけ言って、走り去ってしまった。
デモンも飛んで後を追う。
二人のスピードはほとんど同じで、抜きも抜かされもしない。
「ドジアロさん、随分速いですね」
デモンの飛んで移動する速さは自転車を普通にこいだ速さに近い。
今回もそれくらい。
つまりドジアロの走る速さは自転車とほとんど同じってことになる。
しかも全速力で走ってるようには見えない。
すげぇな。
◇
馬車が遅れて城前に着いた頃にはドジアロは最初のポーズを取って待っていた。
おや、もうネタ切れか?
「では私はこの辺で……」
「む、そうか。一日御苦労だったな。感謝のハグしてやろうか?」
「え、遠慮します!」
馬車の操縦者は俺達を下ろしたら逃げるように来た道を戻ってしまった。
筋肉ムキムキにハグされるなんて嫌に決まってるな。
俺が彼の立場だとしても絶対逃げる。
「ドジアロさん、一人くらいは護衛をつけとけって言ったよね?」
「娘よ、それは彼等を信用してないと同意義になる。失礼極まりないだろう」
確かにそれは思った。
ふざけた服装をしているが、仮にも一国の王のはずだ。
いくらドジアロが強いとしても、護衛が一人もいないのは無防備すぎる。
しかし、そんなことよりドジアロの言葉に一つ気になったことがある。
「レッシェを娘って呼んでた?」
「そうとも。レッシェと私は血の繋がりがある」
聞けばレッシェさん、ドジアロの弟の娘にあたるらしい。
伯父と姪の関係なんだと。
言われてみれば顔立ちが似てる?
「驚いた……けど、あれだな。オーエンが二十代だったって方がインパクトが強いな」
「モミジさんもそうですか。オーエンさんからはレッシェ嬢と呼ばれてましたし、まだ納得できます」
「驚くならちゃんと驚いてくれ!」
「そこキレるか!?」
レッシェは不満げな様子だった。
俺達のやり取りを見て、ドジアロは二つ目に見せたポーズをとりながらガッハッハと笑っていた。
もしかしてローテーションがあるのか。
「そろそろ城に入ろうか。旨い飯も用意してあるぞ!」
ドジアロが城の扉を押すと、ギイィーと音を立てながら開き城内の様子があらわになってゆく。
城の中に入るのは人生で初めてなのでワクワクしてる。




