62:魔物の襲撃
王国に向かう道中、魔物の群れに襲撃された。
魔物の種類は大きな芋虫だったり鋭い爪を持った猿だったりと多様性があったが、兵士達と俺の眷属連合の前には大した脅威にはならなかった。
ちなみに俺は馬車で見学。
血飛沫が舞い、魔物の体が斬られていくという見てるだけで気分が悪くなりそうな光景を眺めていた。
俺は魔王だし平気だろうとたかをくくっていたが、見るべきではなかったと後悔した。
吐きそう。
特に芋虫。
デカイし、体を切断されてもうねうねと動いてるのがキモい。
「この魔物共、やたらと狂暴だったな。やはり紅い月の影響が出ているか」
「何それ?」
「文字通り紅い色の月だ。それのせいで魔物が狂暴化している」
紅い月って中二臭くて格好いいな。
一度見てみたい。
あ、ちょっと待った。
紅い月が昇った時、デモン達はどうなるんだ。
狂暴化するのだろうか。
「モミジ! 中入ってきてる!」
「え!?」
紅い月について思考を巡らせていたら、馬車の入り口で足音がした。
そっちを見ると一匹の猿が「キャーキャー」と奇声を上げながらがら空きの俺の背中に飛び掛かろうとしている瞬間だった。
猿自体は大きい訳ではないが、生えている爪はナイフのように鋭い。
それに引っ掻かれたら間違いなく怪我をする。
この距離だと避けるのは無理だと悟り、目を瞑って身構えた。
「あれ?」
何も起きなかったので、恐る恐る目を開けて猿の様子を確認してみる。
猿は俺の足元で倒れていた。
右腕から腹にかけて黒い斑点がヒョウ柄のように浮き出ている。
「モミジー、無事かー?」
デモンはあまり心配してなさそうに馬車の中を覗く。
血が付いた右手の人差し指の先から黒い霧のような物を出していた。
「これデモンがやったのか?」
「いや、モミジがやったんだぞ! 手からブワーって毒を出してた!」
そう言われて手が濡れていたのは毒のせいだと分かる。
手汗を出すかのように無意識に毒を出していたようだ。
今回魔物相手だったのでよかったものの、無意識の毒振り撒きをサイルマード王国でやらかしたら大惨事待ったなしだな。
気を付けよっと。
そんな事を考えながら倒れて動かなくなった猿を外に放り出した。
「モミジさんの倒した猿で終わりですかね?」
「そのようだな。怪我した奴はいるか?」
オーエンが確認した所、兵士数人が切り傷を負ったようだが、大怪我をした者はいないようだ。
「少しでも傷を負った者は薬草軟膏を塗っておけ。小さな傷でも雑菌が入ってくるからな。面倒くさがるなよ?」
そう言って辺りを見渡す。
誰一人軟膏を塗ろうとしてなかったので、オーエンが厳しい睨みを効かせると、兵士達は気だるげに傷口に軟膏を塗った。
中には「団長の心配性には困ったもんだぜ」と愚痴を溢す者もいた。
「私、このお薬の匂い好きじゃない……」
デモンは軟膏のミントにも似た爽やかな匂いがお気に召さないようで、鼻をつまんで我慢していた。
侵す者と治す物。
両者が相容れぬ関係にあるからだろうか。




