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61:街を出発

令和最初の更新です

 買ったアクセサリーを手に、集合場所に着いた時には兵士達は全員馬を用意して、待機していた。

 早いなぁと思ってたら、どうやら俺達が遅かったらしく、十分近く遅刻してしまったようだ。


 「おっとぉ、あの厳しいオーエンさんが遅刻ですか!?」

 「どうせ彼女さんのプレゼント選びに時間費やし過ぎたのでしょう!?」

 「このリア充め!」


 日々の鬱憤を晴らすかように、オーエンの遅刻について文句を言う。

 言いたい放題しているだけに思えるが、遅刻してきたオーエンにはそれを怒る権利はないので、うつ向いて兵士達の文句を聞いていた。


 「魔王殿、これは恒例行事みたいな物なのでお気になさらず」


 こちらに気付いた兵士の一人が耳打ちしてくれた。

 そういうことならこの様子を眺めてよう。

 部下に色々言われてるオーエンの姿はちょっと面白い。


 ◇


 恒例行事とやらが終わった所で、サイルマード王国に向けて出発する。

 日が落ちる前には着くそうだ。

 今回走っているのは平坦な草原なので、馬車が揺れて体を打ったり酔う心配が無いのは安心だ。

 

 さっきまであんなだった兵士も、今は真面目に馬を走らせて、俺とデモンが乗った馬車に護衛をしてくれてる。

 素晴らしい切り替えの早さにちょっと怖くもある。


 馬車に乗っていないアラクネはどうしたかというと、この馬車が狭くて乗ってるのも疲れるとのことで、他の兵士達と同じように馬に乗って移動している。

 蜘蛛足で馬の体を掴み、前屈みになって乗っていた。

 何も知らずに見ると、馬を襲っているようにしか見えないが、馬は特に暴れたりもせず、他の馬と同じように草原を駆けている。

 

 「蜘蛛の女性、あの姿勢でよく馬に乗れますね」


 馬車の操縦者がアラクネを見てぼそりと呟いた。

 あれは人間で例えるとどういう姿勢なんだろう……うつ伏せ?

 それは本人に聞かないと分からないし、聞いても分からない可能性もありそう。

 

 「気にしなくてもいいんじゃない? 女性はミステリアスな方が素敵って言うし」

 「そんな言葉聞いたこともないですが、その意見には同意です」


 こうは言ったが、デモンやアラクネについて気になる事は山ほどある。

 機会があればそれらを知っておきたい。

 

 「団長! 前方に魔物がいます!」

 

 兵士の一人が何かを見つけたようだ。

 馬車が止まり、アラクネがこちらに移動してきた。


 「何がいたの?」

 「あれは……何なのでしょうね」

 

 アラクネも魔物の正体が分からないらしい。

 自分で見た方が早いと判断し、馬車から降りて魔物の姿を確認しに行く。

 数メートル先で俺達の進行方向に立ちふさがるような位置に、蟷螂に似たクリスタルの体を持つ何かがいた。

 その透き通った体は神秘な雰囲気を醸し出す。


 「何あれ。ゴーレム?」

 「わあっ! 宝石みたいで格好いい!」


 見ても何の魔物なのかは分からなかったが、デモンの言った通り、格好いいなと思った。


 クリスタルの魔物は何かを探すように頭を回す。

 蒼く光る単眼がこちらを睨み浸ける。

 が、すぐに別の方角に頭を回した。

 敵意があるわけではなさそうだ。


 「団長、どうします?」

 「無視でいいだろう。こちらから手を出さなければ無害そうだ」


 オーエンを先頭に、クリスタルの魔物から少し距離を離した場所を進む。

 

 「うおっ、こっち見た」


 クリスタルの魔物と目があった兵士の一人が驚きの声をこぼす。

 しかし、クリスタルの魔物は微塵も興味を示さず、全く関係ない方角を見つめている。

 何事もなく全員が通り抜けることができた。

 

 「よし、全員無事だな。先を急ぐぞ」

 

 王国に向けて移動を始めるとクリスタルの魔物も俺達の進行方向とは逆の方向に歩き始めた。

 

 「モミジー、これアイツの声か?」

 「え? 何か聞こえる?」

 「聞こえるぞ! あるじ? を探してるっぽいぞ!」


 クリスタルの魔物は主を探しているらしい。

 それを踏まえてあの魔物の後ろ姿を見ると、どこか悲しげに感じた。

 

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