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60:アクセサリー屋でお買い物

 「さて、と。そろそろ行くか」

 「支払いはよろしく。俺達金持ってないし」


 この世界のお金は持ったことは勿論、見たこともない。

 いつか必要になったときの為ににある程度は持っておきたいとは思っている。

 今回はオーエンが金を払ってくれたが毎回奢ってもらえるとは限らないので、早いとこ金を稼ぐ手段を持ちたいものだ。

 魔王らしく略奪でもしようかな。


 店を出るとき、クーリと目が合ったような気がしたが、特に何事も起きなかった。


 「集合まで少し時間はあるが……どこか行きたい所はあるか?」

 「ゆっくり散歩でもしたいけど、時間足りんよね」

 「そうだな。いつかちゃんとした案内もしてやるから我慢してくれ」

 「案内はいらねっす」


 時計を見たところ、集合の時間まではあと三十分もないだろう。

 それで街全てを見て回れってのはとんだ無理難題だ。

 逆にこのまま集合場所に行くのは時間が余りそうだよな。

 

 「そこで悪いんだが……アクセサリー買うの付き合ってくれないか?」

 「そうゆう趣味あるん?」

 「何を考えとるのかは知らんが、ただのプレゼントだ」


 誰にとは言わなかったが、アクセサリーって事は……間違いなく交際関係のある女性へのプレゼントだろう。

 そんなことに付き合わせられるのは若干癪だが、アクセサリー屋ならこっちの女性陣も楽しめるだろう。


 「オーエンのおじさん! 私にもアクセサリーを買って!」

 「お、もちろんいいぞ。俺に付いてこい!」


 小走りするオーエンをデモンが飛んで追う。

 そんで着いたのがさっきの店から三軒離れた建物。

 めっちゃ近いやん。

 ちょっと呆気に取られたせいで、出遅れ、二人に置いてかれてしまった。


 「ふふっ、お二人とも元気ですね」


 共に置いてかれたアラクネが優しい微笑みをデモン達に向ける。

 子供を見守る母親のような雰囲気があった。


 「さ、私達も行きましょ? モミジさんにも良さげな物を見繕ってあげますよ」

 「お、嬉しい。期待しよっと」

 

 俺達もアクセサリー屋へと向かう。

 店には大きなガラスの窓があり、外からも店の中が眺めれるようになっていた。

 デモンとオーエンも含めた数人の客が棚に陳列されている色とりどりのアクセサリーを物色していた。


 店に入るとデモンがこちらに気付き、小さな手に溢れんばかりのアクセサリーを持ってこっちに来た。


 「モミジー、これ全部可愛いな!」

 「一応聞くけど、それ全部買うとか言わないよね?」

 「駄目なの?」

 「流石にオーエンが可哀想でしょ。三つくらいにしてあげて」


 それを聞いて残念そうな顔はしたが、持っていたアクセサリーを近くの台に置いて、欲しい物の選別を始めた。

 何だかんだ言って素直な所は好き。


 

 それはそれとして。

 今この店内ですっごい目を引く光景が繰り広げられている。

 他の客は特に気にしてないようだが、この光景はどう見ても異質だ。


 「この髪飾り……いや、こっちのブローチも捨てがたい」


 プレゼント用のアクセサリーを選ぶ険しい顔の男、オーエンだ。

 さっきも思ったが、自分の顔を弁えてほしい。

 彼と店の雰囲気の差がシュールだ。


 特にすることもなかったのでオーエンの様子を眺めていると、目の端でアラクネがこちらに手招きをしているのが見えた。

 何事かとアラクネの元へ行ってみると、ネックレスを首に掛けられた。


 「どうですか? このネックレス」

 

 このネックレスには紅葉に色も形も似た飾りが付いていた。

 自分と同じ名前の植物の飾りがあるアクセサリーというのはロマンを感じる。


 「これいいな。ありがとう」

 「気に入ってもらえてなによりです」

 

 それにしてもこれお洒落だな。

 ついついネックレスを触って確かめてみたくなる。


 オーエンとデモンがアクセサリー選びを終えるまで、他のアクセサリーでも見ながら時間を費やす。

 俺はアクセサリーについては詳しく知らないし、綺麗だな位の感想しか出せない程のにわかだが、元の世界のアクセサリーと相違はないように思える。

 

 「よし、これにするか!」


 しばらくするとオーエンの嬉しそうな声が店に響く。

 そのタイミングでこちらの買いたいアクセサリーを持っていき、代金を支払ってもらう。

 その時、他の客が「あの子達オーエン団長さんとどういう関係なのかしら」的なことでざわついてたが、変に拗らせるのは良くないので何も喋らないでおいた。


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