52:いよいよ開戦!?
「リズミカ、あなたも起きなさい。焼くわよ」
「ん……あと五分……」
ドラミクはまだ虚ろな意識のリズミカに顔を近付ける。
そして息をふっと吹き掛ける。
「アッヅ!」
「おはよう。いい目覚めかしら?」
男みたいな声を上げリズミカの意識は覚醒する。
その凄い声もビビったが、吐息一つでここまで熱がらせる事が出来るドラミクもやべぇなと思った。
さっさと起きれて心底良かった。
「あー、リズミカ。大丈夫か? すげぇ声だったよ」
「う、うん。腕がめっちゃ熱いけど……」
腕を上下に振りつつ答える。
それを何故か勝ち誇ったような表情でドラミクが眺めている。
まったくもう。今は味方の関係なんだからもっと仲良くしようぜ。
「あー、皆起きた事だしそろそろ最後の作戦を立てようか」
スパンダが部屋に響く程大きな音で手を叩く。
その瞬間部屋が静まり返り、代わりに緊張感が部屋を包む。
「さて、まずは各々初動をどうするか教えてくれ」
「先陣を切るのはこの私に任せなさい。ドラゴンの軍勢で活路をこじ開けてやるわ!」
スパンダの問いに間髪入れず、そして自信満々にドラミクは宣言する。
彼女の戦闘力とか性格とか考えると適任ではある。
俺以外の魔王かはと異論は出なかった。
「分かった。俺もそれに続こう」
どうやら最初はドラミクとスパンダが魔物達を引き連れて敵のダンジョンに攻め入るようだ。
「ちなみに俺とリズミカはどうすればいい?」
「あぁ。二人でダンジョンの防衛に当たってくれ。作戦もそっちに一任しよう」
俺とリズミカはダンジョンに待機して、侵入者を迎え打つ事になった。
とりあえず危険そうな役目を任されなかったことにホッとする。
かといって防衛も安全な仕事ではないが。
ところで一つ気になる事がある。
これっていつ始まるんだろう。
この部屋に来ていよいよ始まるかと思ったが、特に何かが起こる気配はない。
こちらから何かしないといけないのだろうか。
部屋の中を見渡してみると、不意にドラミクが立ち上がった。
「まったくもう! 焦れったいったらありゃしない! あなた達、そこの扉を開けるわよ!」
ドラミクは俺がビビる程の勢いで指を差してくる。
一瞬、俺に指差してきたのかと思ったがすぐに俺の後ろの方を差しているのだと分かる。
振り向くとそこには大きな扉があった。
この何も装飾のされてない部屋のように飾り気が無く、ただ扉という役目を果たすために存在している。
この大きさなら多分スパンダでも屈まずに通れるはずだ。
ドラミクはその扉に蹴りを一回、二回、三回と繰り返し、八回目の蹴りで遂に扉を破壊され、扉という役目を終えることになった。
彼女は二倍近くも体格差がある扉に勝ったのだ。
て言うかもう蹴りの途中から開いてそうな雰囲気出してたし、普通に開けてやれば良かったんじゃないか?
そんなことより外の景色だ。
この部屋から見える範囲だと草の一本も生えていない、それこそ荒野のような大地が広がるだけだ。
「お、これってもしかしてカイトとドラミクが魔王戦争した時の所じゃねぇか?」
「ん? そうなのか?」
「狼だしやっぱ野生の勘みたいなのあるの?」
「まぁ確かにリズミカの言う通りこれは勘だ。だが、ここで魔王戦争が始まるってのは見れば分かるぜ。あれを見てみろ」
スパンダの目線の先には屋敷……いや、あれ俺のダンジョンだ。
俺のダンジョンと繋がるように洞窟、砦が並んでいる。
「これもしかして最初に攻略されるのって俺のダンジョン?」
「この並びを見たらそう考えるのが妥当だろうな。……まぁドンマイってこった」
「元気出して、モミジ。私もちゃんと守ってあげるから」
今思い出したが、あの本に『ダンジョンは指定の無い場合、仲間のダンジョン全てが合体したものになる』ってあったな。
しかし、特に指定を行わなかった。
やり方が分からなかったというのが大きな理由だが。
「やぁ、君達。そっちは皆揃ってるかな?」
足元に黒い液体。
何度か見たことはあってもこういきなり来られるとビビる。
魔神王だ。
「いや、ドラミクがどっかに行っちまってる。大方敵のダンジョンの所にでも居ると思うぜ」
「ふむ、ではちょっと失礼して……」
魔神王は黒い液体の中を手で探る。
「お、いたいた」
ドラミクがお姫様だっこをされた状態で引き上げられた。
そして魔神王の腕の中で暴れだす。
活きのいい魚みたい。
「痛てて、降ろすから落ち着いて」
傷つけられても意に介さず、優しくドラミクを地面に降ろす。
その姿は真の紳士と言えるだろう。
「さて、私が伝いたい事を手短に話そう。心して聞いてくれ」
ここで魔神王は一呼吸置く。
そして俺達は発される言葉を聞き逃さないよう、神経を集中させる。
「今回の魔王戦争は中止だ。君達の相手が皆、何者かに襲われて再起不能のレベルにまで追いやられた」
その言葉は耳を疑うような一言だった。
それと、心が踊るほどに嬉しい気持ちが湧いてきた。




