49:危機は思いもよらない時に訪れる
無駄に暑苦しい黒白衣を脱ぎ捨てパンツも脱ぎ捨て一度、全裸になる。
そこから持ってきた水着に着替えれば準備は完了。
軽く準備運動をして川へ入る。
水が冷たいので一気に入るのではなく、ゆっくりと体を慣らしながら川へ入っていく。
川は穏やかな流れだが、腰が浸かる程度には深い。
油断して流されるなんて事にならないよう、最低限の注意は払おう。
「モミジ! ドボーンするぞ!」
有無を言わさずにデモンは川へとダイブする。
水しぶきを上げるほど勢いよくやってきたせいで思いっきり水を浴びてしまった。
気持ち良いから別にいいけどさ。
ちなみにデモンの水着もDPで買った物だ。
スク水みたいなやつ。
自ら飛び込んできたデモンとは対照的にアラクネは川岸で佇んでいるだけで川に入ろうとはしない。
「アラクネー、入らないの?」
「はい。私、水に浸かると調子が悪くなってしまうので……」
嫌だと言うなら無理強いはしない。
しかし、アラクネの水着姿は見てみたかったものだ。
彼女は普段から中々にエロい格好をしているので有り難みは薄いかも知れないが。
「ですが……」
「ですが?」
「これくらいなら出来ますよ!」
アラクネは両手を組み合わせて水鉄砲を俺の顔目掛けて飛ばしてくる。
「おわっ! 何すんだ!」
「フフフ、さぁデモンさん。あなたもモミジさんに水を掛けるのです」
「おー!」
デモンも容赦なく水をぶっかけてくる。
二人へのお返しとして俺も水掛けをしてやった。
そんな感じでしばらく水遊びを楽しんだ。
そろそろ帰ろうかと川から上がって、着替えようとした時、森の方から一人の男が現れた。
生意気にも異世界に転生した系のラノベの主人公が着てそうな服装をしており、背中には剣を背負っている。
もしかしてこいつも転生者か?
そんな事を考えていると男はこちらに気付き、こちらに近付いて来る。
「お前、どこかで俺の仲間達見てないか?」
なんだこの質問。
いままでそれらしい人物も見てないし、仮にいたとしてもそいつが仲間かどうか俺が知るわけないだろ。
しかし、無礼を働いて後で報復とかされたら怖いので丁寧な対応を心掛ける。
「いや、それらしい人物は見てませんね」
「そうか。それともうひとつ」
男はいきなり背中の剣を抜き、アラクネの首元に突き付ける。
「あんたは魔物だよな? 何で人間といるのかは知らんがここで死んでもらう」
「そんな事はさせない!」
俺は戸惑ってしまい動くことが出来なかった。
デモンは咄嗟に男に飛び掛かり右手で凪ごうとする。
それのお陰で男はアラクネから手を離し、少し距離を取る。
「ちっ、何で邪魔をする」
「あ、当たり前だろ? 仲間だからな」
さっき動けなかった代わりにここは格好をつけとく。
しかし、どうしようか。
アイツは殺る気満々だし、話し合いで解決とかは無理よな。
そうなると……
「二人共、逃げるぞ!」
「りょーかい!」
「分かりました!」
男に背を向けて全力で走り去る。
俺は半裸で、デモンは水着のままだが、着替える時間なんてあるわけない。
勿論男も追ってくるので、毒液や糸で足止めを謀る。
しかし、毒液を浴びても糸で足を縛られても一瞬だけ止める事しか出来ない。
更に男の方が足が速いので追い付かれるのも時間の問題。
おまけに俺はもう走るのがしんどい。
「ウォングルルルゥ……」
進行方向に白狼の群れ。
これは詰んだかと思ったが、白狼の群れは俺達を無視して男へと襲いかかる。
男はその狼の対処の為に足を止めた。
もしやこの狼達、スパンダの魔物か?
そうだろうが違かろうが、やることは一つ。
ひたすらに逃げる事だ。
もうすでにへばりかけている俺にアラクネが気付いてくれて、俺を担ぎ上げたまま逃げてくれた。
森の外に出る頃には男の姿を見ることはなかった。
ひとまず危機が去ったことに安堵の溜め息をもらす。




