36:スパンダの眷属
ディアと呼ばれた狼はレッシェに甘噛みや舐め回しを繰り返し行った。
レッシェもそれを止めさせようと抵抗するが、ディアの力の前には何も意味を成さなかった。
「ま、流石に止めさせるか。ディア、こっちに来い」
スパンダが呼ぶとレッシェを踏みつけつつ、こちらに向かって来た。
近くで見るとディアの大きさがよく分かる。
もしかしたら俺と同じくらい身長があるのではという程だ。
「紹介する。こいつは俺の眷属の【ダイアウルフ】のディアだ。戦いに貢献してくれるはずだぜ」
「ガウッ!」
俺はやってやるぞと言うように吠える。
確かに頼もしそうだ。
「ディアのスキルを見たかったら好きに見てもらって構わないぞ。情報の交換は大事だしな」
「じゃあ遠慮なく……」
ディアの頭を撫でつつ、「ステータスオープン」と発言する。
モフモフを期待していたが、ディアの毛は思ったより固く少し驚いた。
種族:ダイアウルフ
名前:ディア
レベル:5
ランク:B
筋力:中
俊敏:高
魔力:低
スキル:剛毛 ドレインバイト
俺達とは違い、小細工無しで戦いそうな能力とスキルを持っている。
貰えるんだったら喜んで貰いたい程だ。
「どうだ? 気になる事はあったか?」
「俺達とは真逆って位に違うかもな。戦い方とか」
「なるほどな。見たところモミジのダンジョンも罠で防衛するタイプだったな。俺のダンジョンとは全く違う」
となるとスパンダのダンジョンは魔物でダンジョンクリスタルを守ってるという事になる。
それと多分ドラミクのダンジョンも。
「さぁて、正直もう話す事も無いんだよなぁ」
「ドラミク待ちか?」
「そうそう。作戦会議は揃ってからやりたい」
先に作戦会議をしたとしても意見の食い違いになったら困る。
なので最善はドラミクが戻って来るまで待つ事だ。
「いや、だとしても他にやれる事はあるはずだぜ」
「例えば?」
「ほら、敵の情報とか教えてくれよ。それで少しは対策が出来るはずだ」
そう言えばスパンダは魔王戦争がある事だけを知っている状態だったか。
ドラミクも詳しく説明してなさそうだし。
俺が今知っている事だけでも教えとくか。
◇
~ドラミク目線~
「あなた達。サイッコーにイカれてるわね! 私も混ぜてちょうだい?」
私は運が良い。
こんな所でも協力者を発見出来たのだから。
そして彼女が私が探せた最後の協力者になるだろう。
太陽は沈みかけ、もうじき夜が訪れる。
夜目は利く方ではないので早めにモミジのダンジョンに戻りたい所だ。
「私に掴まって目を瞑りなさい。飛ばして行くわよ!」
「りょーかい!」
彼女が私の背中に掴まったのを確認したら、変身を始める。
ドラゴンに変身するのは一瞬で出来る。
しかし、その一瞬はあまり見られたい物では無い。
彼女に目を瞑ってもらったのもそのためだ。
「さぁ、行くわよ!」
「もう目は開けていいよね?」
その質問に答える前に私は空を飛んだ。