32:強制的な提案
「魔王、私が言うのもなんだがはっきりと言わせてもらう。お前に魔王は向いてない」
「おおぅ。本当にはっきりしてるね」
俺の目的を聞いておいて今度はこれである。
女戦士の意図が読み取れない。
何がしたいのかを知りたい。
しかしそれも無理そうだ。
ダンジョンの入り口の扉の奥から何か感じる。
めっちゃ強い人間がいるのか、それとも……
「女戦士、そこ退いた方がいいと思うぞ?」
「あぁ、私にも扉の向こうに強者がいること位分かる。ゴーレム達、私を隅の方へ運べ」
3体のゴーレムが女戦士を運ぼうとした瞬間。
勢いよく扉が開かれた。
そこにいたのは軽鎧を装備した明るい水色の髪の青年と、腰巻きだけを身に付けた屈強そうなオーク風な男。それと手のひらに乗りそうな程ちっこい妖精の3人。
一人は賢く、一人は強く、一人は素早そうだ。
「やぁ、ここはモミジ君のダンジョンだったか。話をしたいがその前にっ」
青年は倒れている女戦士目掛けて飛びかかる。
ゴーレムは女戦士を守るため青年を食い止めようと立ち塞った。
「はいはい邪魔だよ」
青年はゴーレムの攻撃をひらりとかわして、代わりにゴーレムの体に触れる。
触れた場所からゴーレムが凍りついていく。
凍らされ、動くことの出来なくなったゴーレム達は青年が軽く一押しするだけで簡単に倒れてしまった。
そして……
「女、ちょっと寝てな。この話は聞かれたくない」
青年の蹴りによって女戦士は吹き飛ばされ、壁に体を打ちつけて、動かなくなる。
俺は賢そうなやつでもこれ程の力があることに呆気に取られて、ただ見てる事しか出来なかった。
「さぁて、モミジ君まずは自己紹介だ。僕は【麗氷の貴公子】クーリだ。そしてあっちのデカブツがゴーロンゾ。隣の蠅がセペルだ。お分かりの通り、皆魔王だ」
「あ、そうですか。よろしくお願いしまーす」
正直、何されるか怖くてたまらない。
女戦士の時は圧倒的に有利な状況を作ってから調子に乗ってたが、今は敵が3人。
しかも一人一人が俺より強力な魔王の可能性も高いので下手な手を打って殺されないか心配で内心ビクビクしてるのだ。
「モミジ君、君は幸運だ。もし君が僕達側について、同盟の事についての情報を教えてくれたら、君は見逃してやっても構わない」
「もし、嫌だと言ったらどうします?」
「その時は君に魔王戦争を申し込むよ。もちろんあいつらも一緒にだよ」
彼等に大人しく従って仲間を見捨てるか、歯向かってボコボコにされるかの二択。
理想は歯向かって、彼等との魔王戦争に勝つこと。
だが、俺一人でそんな事出来るかと言うと答えはNO。
ならば、仲間も見捨てず、俺も助かるための方法を模索する。
「ずいぶん考え込むね。まぁ、後悔しない選択をするんだな!」
「お前ー! さっきから黙って聞いてあげてたけど、その態度は何だー! あの倒れてるやつよりへっぽこそうなくせに調子にのるなー!」
「ほう? ひよっこのくせに生意気な口を聞くんだなぁ?」
デモーーーン!
なーに喧嘩売っとんねん!!
今、名案が思い付きそうだったのに!!
あぁ、クーリの顔を見れば怒ってるのが分かる。
これは俺死んだかもしれん。