26:魔神王の訪問
おや、またダンジョンに誰か来たようだ。
クリスタルで入口を確認する。
そこに立っていたのはタキシード姿の見覚えのある老人。
魔神王だ。
こちらを一瞬見たかと思ったら、後ろで小さくゴポッと音がした。
そして後ろを振り向くと、そこには魔神王が立っていた。
「やぁ、モミジ君。ごきげんよう」
「こ、こんちは。お茶でも飲みますか?」
「いや、気は使わなくて結構だよ」
めっちゃいい笑顔で。更に穏やかな口調で話す。
ていうかこの人何しに来たんだろうか。
「おじいさん! 何しに来たんだー!」
「こらこら、小さな眷属ちゃん。私はまだ若いしお兄さんと呼んでくれないか?」
「いや、おじいさんはどう見てもおじいさんだぞー!」
「ぐぬぬ」
デモンは容赦なく言いたい事を口にする。
魔神王はお兄さんと呼んで貰えなかったのが悔しかったのか、膝を着いて地面に座り込む。
もしかしてこの人、妹系キャラにお兄ちゃんと呼んで貰いたいタイプのロリコンかな?
「ほら、さっさと立って下さい。デモンも聞きましたが何しに来たんですか」
「あ、あぁ。そうだね。ある事を伝えに来たんだ」
魔神王は何事も無かったかのようにスッと立ち上がる。
そして俺に紫色の液体の入った小瓶を渡して来た。
「簡潔に言おう。魔王が一人増えた。しかもそれがかなりの厄介者でね」
「……は?」
百歩譲って魔王が増えたのはいい。
だが、昨日俺が魔王になったばっかだぞ。
いくら何でも早すぎないか?
「ええっと、実はその魔王はね、人間が他の魔王達に対抗するために別の世界から召喚されたんだ」
「ほぉーん。で、この小瓶は何ですか?」
「それを使えば新しい眷属を召喚出来るよ。色々あって渡す時期を早めたんだ」
その色々とやらも気になるが、戦力を確保出来るのはありがたい。
「何か問題の魔王にあまり興味無さそうだね」
「分からなさ過ぎますもん。実際にそいつに他の魔王が倒されたりしてますか?」
「うん。ガタル君のダンジョンクリスタルが破壊されてるよ」
ガタルって確か新たな魔王の一人だったよな。
それを聞くと急に危機感を覚えた。
ガタルの実力は知らないが、もし彼が俺より強かったら、必然的に俺もそいつと戦ったらヤバイということになる。
「じゃ、私はこの辺で」
ちょっと考えてたら、魔神王はもういなくなった。
さて、どうしよう。
色々心配だが、とりあえず新たな魔物を召喚してみるか。
「よし、デモン。新しい魔物を召喚するぞ」
「おー! 私が先輩として面倒を見なくっちゃね」
デモンは嬉しそうに背中の羽をパタパタと動かす。