17:勝負の後は互いを認めて
流石に結果を焦り過ぎたか。
私と数体のワイバーンでカイトのダンジョンに突撃した。
が、カイトの作った武器を持った魔物達に思ったより苦戦した。
具体的な被害はワイバーンが全滅した事。
そして私の胴体が吹き飛んだ事だ。
しかし、カイトの防衛軍も壊滅させた。
私に残された頭で跳ね回り、クリスタルの捜索を開始する。
捜索を開始してから対して時間も経たない内に、カイトのクリスタルを発見した。
屋敷型ダンジョンは複雑で障害物も多いが狭い。
ワイバーン達が自由に飛行出来ない程にだ。
そのせいでワイバーンがただの飛ぶ的に成り下がった。
さぁ、後はクリスタルを破壊するだけだ。
頭だけの私でもクリスタルを噛み砕く事くらい可能だ。
私はクリスタルに大きく口を開き、飛び掛かる。
クリスタルに牙が食い込んだら、力を入れるだけの簡単な作業だ。
私が力を入れた直後にクリスタルは砕け散り、破片が地面に散らばる。
思ったより簡単に砕けた。
そして疲れと痛みで力が入らなくなり、人間形態に戻っていた。
なお、体は無い。
「はい、そこまで。勝負ありだ」
魔神王が私の頭を抱え上げ、こう伝えた。
砕いた瞬間にこっちに来たんだ。
絶対に勝利を伝えに来てくれたのだろう。
「お見事。君の勝ちだ。カイト君の方も数秒後にクリスタルを破壊したね」
そうなのか。
私のプランでは圧勝するつもりだったが、ギリギリの接戦というのも中々に良いものだ。
勝利した喜び。
相手を称える称賛の気持ち。
色々な感情が湧いてくる。
「さ、どれくらいの差だったのか見せてあげよう。移動するよ」
黒色の何かが私と魔神王を包み込んだ。
◇
「と、言うわけだ。勝ったドラミクちゃんには後で報酬を送っとくからね」
「いや、先に私を元に戻して下さいまして?」
「おっと忘れてた」
魔神王は手に持っていたドラミクの頭を放り投げた。
そして何か呟くと、ドラミクの体がきちんと戻っていた。
ドラミクは元に戻ったその足で、綺麗な着地を決める。
「さぁ、勝負は終了だ。ではパーティーの続きを楽しんでくれ!」
言い終わると魔神王はいつもの黒い何かに包み込まれ、次の瞬間に姿は見えなくなっていた。
「さ、カイト。貴方を私のライバルとして認めてあげるわ。光栄に思いなさい!」
「あー、はいはい。助け合ったり競いあったりするやつですね。ありがたく思っておくよ」
そして二人は握手を交わし、互いを認めてあった。