15:大蛇は暴れ狂う
「ケケケッ、そんな細い腕で俺と戦うってか? 何のジョークだよ」
「あぁん!? 舐めんじゃねぇぞ!」
威勢を張ったものの、思った異常に歯が立たない。
私の腕の太さとおなじ位細い尾で私の攻撃をいなしてくる。
しかし、あくまでも攻撃をいなしてくるだけであちらからは何も仕掛けてこない。
「あんたこそ防戦一方じゃないか。お前が死ぬのも時間の問題だぞ?」
「バカめ。気づいてネェのか? 俺の仕事はドラミクがお前らのクリスタルを破壊するまでの時間稼ぎだ」
「へぇ、だったら後ろを見てみなよ」
大蛇は私の後ろへ目をやる。
そして異変に気付いたようだ。
「1……2……嘘だろ? 猫共が全然いねぇぞ」
「馬鹿はあんただったな」
大蛇は尾で大斧を凪ぎ払い、急いでカイトの追跡に向かおうとする。
大斧は飛ばされたが、捕まえるだけなら素手でも出来る。
私は大蛇の尾を掴み、移動をさせない。
「離せ! これで負けちまったらドラミクにどやされる!」
「そんなのこちらには何にも関係無いね」
ライト役のチビネコレディ達が飛ばされた大斧を持ってきた。
大蛇の体を手繰り寄せて、頭の部分をここに持ってくる。
そして大斧の一撃で頭を切り落とす。
胴体と頭が離れ、動きが止ま……らない。
頭は切り口から血を流しつつのたうち回り、私から距離を取ろうとする。
そして胴体は暴れまわり、私を頭に近づけないようにしてくる。
嘘だろ、どういう体の構造してんだ。
「ケケケッ、俺の体と遊んでな! その内に奴等を追ってるからな!」
「させるかっ!」
私は一歩踏み出そうとする。
しかしそれよりも早く胴体が私の足に巻き付き、私の動きを封じる。
頭も胴体が無いのを関係無しに素早く這いずり、闇の中へ消えていった。
「エリー様、追いかけた方がいいですか!?」
チビネコレディが慌てふためく。
あの頭がどれ程の実力かは分からないが、普通にカイト達を追いかけようとしてたなら、ある程度の強さはあると思った方が良いだろう。
「悪いが奴を追ってくれ。ついでにこれも渡しておく」
ベルトから未使用の手榴弾二つを持たせる。
そして二人のチビネコレディは大蛇の頭の追跡に向かった。
◇
~カイト目線~
ドラミクのダンジョンは最初に大広間があって後は直線の通路があるだけの単調な物だった。
そして今その通路を進んでいるところだ。
通路にはコドラやワイバーンが立ちふさがる事もあったが、そんなものは時間稼ぎにしかならない。
ライフルを乱射し、敵を殲滅していく。
しかしこの通路が長い。
どれくらい進んだかは分からないがまだ先がありそうだ。
「カイト様、後ろから何かが這いずる音が聞こえます」
何かが這いずると言われて思い付くのは一つ。
さっきの大蛇だ。
まさかとは思うがエリーが負けたのか?
だったら選択肢は一つしかない。
「無視だ。もたもたしてたら先にクリスタルが破壊される」
俺はバリケードを作り、道を塞ぐ。
少しでも追い付かれるまでの時間稼ぎだ。
バリケードを立てたら後は全力で走る!