10:開戦
「やぁ、ドラミクちゃん。ちょっと失礼」
私の眷属と話している途中。
その背後に魔神王が立っていた。
「何の用かしら? 出来れば手早くお願いね」
「うん。今回の戦争で勝利したときのご褒美についての事でね」
魔神王から説明されたのはこの戦争の勝利者にはDP、そして相手の二つ名の魔力を貰える事。
大方、カイトのやる気を出させるための理由だろう。
しかし、私のやる気も涌き出てくる。
DPは勿論の事、【異界の知識保有者】の魔力も興味がある。
「じゃ、僕はこの辺で」
そう言って魔神王は黒色の物体に取り込まれていった。
「ナァ、あのオイボレが魔神王とやらか?」
眷属が質問してくる。
私の眷属はサープドラゴン。
腕も足もない蛇のような体、黒光りする鱗を持つドラゴンだ。
一言で言い表してしまうとドラゴンっぽくない。
「そうよ」
「ハハッ、マジかよ。あんなオイボレが魔神王なのかよ」
と、口が悪い。
まぁそれはそれとして、今回の作戦だ。
正直、何か対策をするというのは不可能に近い。
【炎帝】とか分かりやすい二つ名だったら対策は容易だが、カイトの二つ名は【異界の知識保有者】。
名前だけでは何をしてくるか分からない。
なので純粋に今用意できる最高の戦力をぶつけるのが単純だが、一番の得策になる。
カイトよ、覚悟しておくがいい。
私のドラゴンの力を特と見せてあげる!
◇
「魔神王様、そろそろ十分が経ちますわ」
サキュバスが手元の懐中時計を確認する。
そして魔神王は舞台の上、スクリーンの前に立つ。
「さぁ皆、準備は整った。新たな魔王同士の戦争。しかとお楽しみを」
観客の魔王達の歓声が辺りに響く。
そして開幕早々に動きがあった。
先制を仕掛けたのはドラミク。
コドラの軍団が大地を駆け抜け、相手のダンジョンへ向かっていく。
「構え、撃て!」
カイトの合図と共に屋敷の窓からアサルトライフルを持った猫耳の少女が身を乗り出す。
そしてコドラの軍団目掛けてひたすらに撃つ。
標準がブレブレで下手な狙撃だが、数打ちゃ当たる。
銃弾の雨がコドラの軍団を次々撃ち抜いていく。
しかしドラミクも負けてはいない。
自分のダンジョンから火炎球を一発、狙撃場所目掛けて放つ。
ダンジョン同士のあいだの距離は300メートルはあるだろう。
その遠距離火炎球は狙撃場所に的確にヒットする。
それにより狙撃隊は一時的に狙撃が不可能になった。
その隙間を生き残ったコドラが走り抜け、カイトのダンジョンへと侵入を成功させた。