02-余計なお節介。
課題を終えて明日の予習もパラパラと済ませる。
明日の英語では読み上げに呼ばれる筈だったので、そこだけは先に見ておかねばと
珍しく、復習も踏まて勉強していたのだ。
時刻はそろそろ12時をまわるところ。
いい加減寝るかぁ~と既にパジャマに着替えていたその体そのままに布団に
伸びをするつもりで、ベッドに背中から倒れこんだ。
友人に見られたら少女趣味と笑われそうな臙脂色に近いピンクにウサギ模様のパジャマ。
やわらかい素材で最高である。まあ誰に見られるわけでもないから…などと
益体もない事を考えていたら唐突に睡魔がやってきた。
珍しく勉学にいそしんだからかな。
寝る前に明日の寝癖つかないようにカーラーつけとかな…きゃ……。
思考は散り散りになり、急激に体が重くなったように感じて沈み込んでいく。
あ、やばい。寝てしまう…。
◆◆◆
かくして私は睡眠についた筈、だったのだが。
声を大にして言いたいのだが、私は眠った筈なのだ。
だが、意識は覚醒している感じがする。だって色々と考えられるもの。
これが明晰夢ってやつかしらね?
体は、動かないな。金縛り?
視界は辛うじて確保できている。うん、私の部屋で、天井が見えてる。
悲しいなだらかな自分の胸もぎりぎりチェックできる。
なんなんだよー、金縛りとか初めてだよ。
≪あ、すまんすまん。久しぶりじゃから忘れとったわ。≫
は?へ?
多分おじいさんの声だと思うんだけれど、声が重なりまくったような
ビブラートが聞きすぎというか。ふわふわした声がしてギョっとする。
え?変質者がいるの?あれ?ボイスチェンジャーとかそういうやつ?
≪おぬし、なかなか失礼じゃの。お主を心配してきてやったというに。≫
はああああああああああああああああああ!?
≪大声を出すでない!!びっくりしたわい!老骨に失礼だと思わんのか!≫
いやいや、声出してないじゃないですか。
っていうか、どちら様ですか。
一応これでもうら若き女性の部屋で、女性がベッドにいるところに無造作に入ってくるとか
失礼とは思わないんですか。
っていうか思考読んでるんですか?乙女の思考を?そっちのが失礼じゃないです?
っていうかその来てやったとか偉そうに言う前に名乗るとかないんですか?
っはーこれが老害ってやつかー!
≪こ、このアホたれ!!待っておれ!!≫
どうやらこちらの思考を読んで返事していると思われる相手に
だんだんとイライラしてきて、敵意むき出しに答えていると体がふわっと浮いた感覚がした後に
視界がぐるぐると回る。
ちょ、ちょっとまって、吐く!吐く!!!
◆◆◆
幸いにもベッドをキラキラしたモザイクで隠した何事かで溢れさせずにすんだけれど
精神的にはもうぎりぎりだ。もういいからはよ寝かせてくれ。
ようやくうっすらと目をあけると、今度は高高度の空の上。
なんかたくさんの人に囲まれておめでとう!とか言われそうな見晴らし。
ありがとうなんて絶対言わないぞ!言わないぞ!!!!
≪さて、切り替え忘れておってすまんな。わしはまあ俗に言う神様ってやつじゃ。≫
『あ、宗教の押し売りお断りなんで帰っていいですか、っていうか帰らせてください。〛
≪ば、ばかもの!!このような機会滅多にないのじゃぞ!!ありがたりこそすれ全くなっとらん!≫
『ありがとうなんて絶対言わないってさっき思った筈なのに…〛
≪は?先読みでもできるのか?お主。まあこの空間じゃったら思考を読む必要もないんじゃ。
対等に話し合えるようにしてあるからの。≫
『対等って…お姿見えませんけど?』
≪まあしょうがないじゃろ。何らかの形をとるのは吝かではないが、お主は余計な思い込みをしそうじゃからのう。≫
『はあ…。で。あの、なんですか。なんで来たんですかね。』
≪お主、恋愛に興味ないんじゃろ?まあ確かに?他の神やら様々な神々は人間の繁栄を喜んでおる。
それこそ、生めよ増やせよ地に満ちよとな。だが子をなすだけが幸せではない、とも思うのじゃ。≫
『はあ…。(なんか語りだしたぞ声じーさん)』
≪じゃが、それはそういった未来になってからでも遅くはない!!若人が今から嘆くのはわしらとしても
大変心苦しいわけじゃ≫
『(いきなり熱血かー…修○さんかな?)……ってえ?いや、あの私の苦難を助けてくれるとかでは?』
≪まあ、そうじゃな!だから、あれじゃ。丁度よくお主の希望に沿うような男子が現れるじゃろう。≫
『え?お告げ?っていうかさっき言った事との差は?』
≪お告げ、フフ、わし、神様っぽい。≫
『いや、聞けよ。……じゃなかった、聞いてくださいよ。』
≪ちょいちょい失礼な娘っ子じゃの。まあ明日を楽しみにしておれよ。では、さらばじゃ…!≫
さらばじゃ…さらばじゃ……さらばじゃ………
声がエコーしていき、自分の体が急速に落ちていく。
そう、ロケーションとしては真っ青な空と雲の上のようなこの世界観から
「う、わああああああああああああああああああああ………!!!」
何かをつかもうと必死に空に手を伸ばすが何をつかむ事もできない。
恐怖で息が、息が…でき、な…
◆◆◆
ドゴン…!!
衝撃に目を見開けば、朝の光とつけっぱなしの部屋の光。
そして、見慣れた自分の部屋。
「ちょっとぉ、あんた朝からうるさいわよー!朝ごはん出来てるから早く支度しておりてきなさーい!」
ベッドから盛大に転げ落ちたらしい。
心臓はまだまだバクバクしている…が、母の声で少し落ち着いてきた。
どうやら本当に夢だったようだ。
とんでもない夢を見てしまったものだ。まったく朝から体は痛いし、最悪だ。
そう思いながら、朝の学校への支度を始めた。




