1「とーどーさん、問題です」
「とーどーさん、旅しましょう」
彼女の一言から…俺、東堂シュンは地元北海道を全各地巡ることになった。なんでこうなった。
***
「つかよ、お前どこいくんだよ」
「んー……ここから近いのは…網走ですかね」
「遠いだろ。自転車で行ったら」
「旅用の自転車ですからいいんですー」
「どこがよ」
俺らが今いるのは地元、北見だ。道東の方にあってサロマ湖の下ら辺にあるから知りたいやつは地図帳片手に持っとけ。
そして網走は北見のすぐ横……といってもそれは地図上だがな。東側にある。
自転車だと何日ぐらいで着くんだ?まぁそんなことこいつに聞いても「いつだっていいじゃないですか」と返されるに決まってるから聞かない。
「とーどーさん、問題です」
この旅を思いつきで考えそして行動に移したアスカイ…もとい、飛鳥井アサヒはまた唐突に俺に問題を出す。でも、なんだか憎めなくてついつい構ってしまう。
「なんだー」
「私達の地元、北見が世界一を誇っていた物とはなんでしょーか!」
「世界一ぃ?あー……」
まずこんな田舎が世界一をとっていたこと自体知らなかった。なんだ?生まれたときからずっと地元にいたがそんな記憶は……ないようなあるような。
「ヒントは、記念館ですよ」
「…………ピアソン?」
「違いますよ。物って言ったのになんで人なんですか」
あ、そうか。
ちなみにピアソンはとある夫婦で、宣教活動とかいろいろな功績を残していたはずだ。多分北海道遺産にも登録されている。多分。
「物……」
「じゃあ…ヒントその二!北見のマスコットキャラクターは?」
「あ?ミント君とかか……って!薄荷か!マジか!」
「正解です~!正解したとーどーさんにはハッカスプレーをあげます」
「いらねぇよ」
「もらってくださいよ。私五個も押しつけられたんですから」
「また随分と大量なことで」
確かに北見はミントも(そこそこ)有名だ。記念館があるんだが凄い薄荷の匂い。もう薄荷が薄荷って分からなくなるぐらい薄荷の匂い。自分でも何言ってんだか分からなくなってきた。
アスカイの話によると、北見が薄荷世界一を誇っていた当時は世界市場の約七十%が北見からの薄荷だったみたいだ。
あとミント君は薄荷くわえたエゾリス。皆大好きミント君。なんてな。
「しかし……網走に行くんだったら冬に行きたかったよなぁ」
「じゃあ冬になったら網走もう一回行きましょう」
「もう先の予定立ててるのかよ」
今は夏の少し手前。夏になったらここは何気に熱い。盆地だから。
網走と言ったら流氷とかそのぐらいだな。それしか俺には思いつかねぇ。あと魚介類。
「網走で有名なものって……何でしょう?」
「流氷だろ、有名かどうかは分からねぇけど海だから魚介類……あと何だ?」
「私もそれぐらいしか思いつきません」
「一息ついたら調べるか」
朝早いとやっぱり車が通ってるとは言え、まだまだ少ない。それにちょっと涼しいから快適だ。
というかこいつ、どこの道通っていけばとか分かるのか?
まぁ地図だってあるし、山に入るまでは心配いらねぇな。
「とーどーさん、山入ったらラジオ流しましょう」
「お前ラジオ持ってんのかよ」
「あったら暇しないじゃないですか」
「まぁ……でもラジオ山の中入ったら電波……トンネルとかだったら通じるかもしれんけど」
「…………あ」
どうやらラジオを持ってきたはいいが電波のことを考えてなかったようだ。というか無くても暇しないだろ。あったらあったで便利だけど。
しょぼーんという顔文字が付きそうなぐらいしょげているアスカイ。あまりにも話さないもんだから声をかけようと思ったその時。
「……とーどーさん」
「…………んだよ」
「しりとりしましょう」
「ホント心配してまた損した」
「え?」
それから俺はアスカイの「ま」攻めにあうこととなったのだ。
「またまかよ……あっ!ママ!」
「マグマ」
「………………」
こいつ、ホントしりとりだけは得意だな。