魔王と遊ぼう
家を出て左へ10歩進むと、この国を治める偉大な魔王の城へたどり着いた。
そして、門の近くにいる大きな鎧を着た番人にいつもの言葉を言った。
「魔王様に用事があるんだけど入っていい?」
「どうぞー」
即答だった。
むしろ言い終わる前に答えていた。
そしてこのやり取りをしていてリベルタがいつも思う事がある、それは。
(ザル警備だなぁ……)
こんな警備で国が落とされないという事実はリベルタ自身が最も理解に苦しむ事である。
そうこうしてる間に魔王の居る部屋の前にたどり着いた。
コンコンコン……
広い部屋にノックする音が響きわたる。
ギィィィ……
分厚い大きな扉がゆっくりと開きだす。
やがて野太い声が聞こえてきた。
「入りたまえ……」
「…」
2人は何故かその場から動かない。
「…入りたまえ……」
少し間を置いて再び野太い声が聞こえてきた。
「…」
それでも動かない2人。
「あれ? お二人さん入んないの? えっ……ちょっとマジ何してんの? 」
魔王の反応にサユリはクスクスと笑った。
声の主が慌て始めた頃に2人は部屋に入った。
「…来たか……」
声の主はRPGでよく見る魔王というに相応しい風格の持ち主だ。
大きな椅子に座り、脚を組みながら偉そうに座るあたりかなりの強者の様に思える。
「我は魔王ラグーン、この魔界の全てを統制する者……汝、何を求めここへ来た……」
「あ、そういうのいいから」
リベルタは威厳のありそうな魔王の問いをサラッと受け流す。
「え?」
サユリもリベルタの言葉に続く
「いっつもそれ聞いてるもんね〜。ちょっと飽きた」
「えぇ……でもこれ恒例行事じゃん? 勇者とかその仲間たちが我をリンチする前によくする会話の一つだし結構大事なセリフと思っていつも言ってたんだけど……うん、さすがに飽きるか」
ラグーン、反省。
ここでサユリがラグーンに一つ提案した。
「そろそろ他のセリフ考えてみない?」
「12年くらいずっと同じセリフ言ってるからなぁ……でもさぁ、王道を貫く事こそ魔王の仕事な気もするんだよなぁ」
「魔王の鑑かよ」
「よかろう、ならば我と遊ぶか!」
突然、声色が明るくなったと思うと椅子から立ち上がり、2人の元へ歩いてきた。
「で、今日何すんの?」
軽い口調でリベルタは問う。
「すごろくでもするかね?」
魔王ラグーンも軽い口調で答える。
「よし、やるか。サユリにリベンジしたいと思ってたとこだしな」
「そのリベンジ、受けて立つわ! 次も絶対負かす」
なんだかんだ言いながら、ゲームは始まった。
その時は誰も、これから恐怖を味わう事はこの時は知るよしもなかった……