悪者になりたい!
「ねぇ、悪者ってどうやったらなれるのかな」
隣に座ってテレビアニメを見ている幼馴染のサユリが、ふと問いかけてきた。
(? 何を言ってんだ……? …こいつ……?)
「…」
呆れた顔を向けると不機嫌そうなサユリの顔が目に入った。
「何を言ってんだこいつとか思ってないでよリーリ」
「あのさぁ、リーリっていうのやめてくんない? テラリア・リベルタとリーリってどう考えても接点無いだろ。あと、女っぽくて嫌なんだけど」
「テラリアのリとリベルタのリが続くから、私はリーリって呼んでるんだよ?」
「それ何度も聞いた」
「何度も言ってるもん」
「だったらいい加減女っぽい感じの名前から変えてくれよ! 俺、男なんだからさ!」
怒鳴るリベルタに少し気圧され、少し気が小さくなってしまうサユリ。
サユリは渋々リベルタのあだ名を考え始めた。
「じゃあー……」
どうやら名前が決まったようだ。
「テラリアのラリアットでどうよ!」
新しいあだ名を言い終わった直後、サユリはラリアットをかまされた。
「ラリアットォッ!?」
あまりに突然な事態に思わず叫ぶサユリ。
「何がラリアットだぁ!」
「さーせん……わざとです……」
「んじゃあ、俺が考えるわ。そうだなぁ……」
「そんな事より悪者になるために私はどうすればいいのよ」
体制を立て直したサユリはリベルタの話を無視し、本題に戻った。
「無視すんなし……。ていうかなんで悪者になりたいんだよ」
「ふっふーん。 内緒!」
なんだそりゃ、それ以外の言葉はなかった。
「あっそ、まぁ、魔王ラグーン様のとこにでも行って聞いてみればいいんじゃねーか?」
その言葉に、サユリは笑顔を浮かべ、勢いよく立ち上がった。
「その手があったか!」
すると、サユリはリベルタの手を掴み、言った。
「今すぐ出発しよう!」
その表情はとても悪者になれそうにないほど明るく清々しい笑顔だった。