第一章
俺は部活動とやらに入っていないので家に直帰できる。かといって家に帰っても何もすることがないのだがな。自称スペックの低いパソコンの電源をつけても、ネットサーフィンとかするぐらいだし、さすがに土日はプログラミングとかしているがな。結局、挫折して一週間後にまたやっての繰り返しが目に見えてるぜ。
さて、家に着いた。安定のやることがないのでとりあえずパソコンをつけ、ツイッテーの通知を見たりタイムラインを見たりしていると、
「ピンポーン」
インターホンのチャイムが鳴った。幻聴でないのなら誰かが来たか、ピンポンダッシュでもされたのか。普段通り、階段を駆け降り玄関に向かった。
玄関のドアを開けると中学生ぐらいの背の人が二人立っていた。記憶の中を探しても見つからない。単純に忘れているか、まだ会ったことのない人かもしれん。そんなことを考えていると、俺よりも背の高いほうが、
「おといろさん…ですか?」
そうだ。俺はおといろだ。だが、なぜ知っている。限られた人しか知ることの無い俺のネット上でのニックネームだ。
「いつも放送見てるぜ」
俺はニカ生で時々配信しているからな。常連さんという訳か。
「私も見てますよー」
と。それなら完全に、あの二人で間違えなさそうだ。
「まさか、しけとあんぱんかね。」
聞いてみた。そのまさかみたいだ。ほほう。ツイッテーであんぱんから聞いた話によると「身長、一六九センチメートル」というのは本当だったみたいだ。確かにしけもスカイペで「【悲報】おといろさんよりも背が低かった。」的なのを言っていたので実際このことも、本当だったみたいだ。
さて、何故ここに来れたのか。また、なぜここに来たのかを聞いてみるとするか。その前に部屋に入れてやらないとかぜをひきそうで、来た理由がなんでも東京と愛知から来ているんだ。さすがに俺も鬼ではないので入れてやることにする。
「あんぱんよ」
「はい?」
「何故ここに来れたんだ。俺は、一人を除き住所を教えた覚えがない。」
「その一人から教えてもらったんですよ。」
あいつ…教えたのか…。何て名前か確認しないと怖いな。
「その一人とは」
「たつさんです。あのTATUHANIXの。」
やはり…。口止めしておいたはずだ。
「それで何でここに来たのかね。何か伝えようとしているのか?スカイペとかツイッテーとかで間に合わないのかね。」
「別に理由なんて無いんですよね…。ただ単に来たかったというか。でもこれからこの地域で何か起こる気がするんですよ!」
「まあ…大体のことは分かったがあとで詳しく教えてくれ。」
「はい!」
こんなことをあんぱんと話している途中に、しけは何をしていたかというと、タブレット型パソコンにキーボードをつなげてコマンドプロンプトかわからないが、何やら黒い画面に白い文字を浮かべながらプログラミングをしていた。だめだ。理解できないぞ。お前はC#とPHPが専門ではなかったのではないか。
「ピンポーン」
インターホンが鳴った。遠田急便でも来たのか。通販で何か買った覚えはないぞ。
玄関を開けてみると俺と大体身長が同じ人が立っていた。俺は、
「どなたですか?」
と聞かなかった。聞く前に相手が名乗ったからだ。
「埋庫ですー。前、年越し通話したあの。そういえば、あんぱんさんとしけちゃんは先に来てますか?先に行くって言ってたんだけど…」
「ああ。ちゃんと来てるよ。大体の話の内容は聞いた。」
あらかじめ言っておくが埋庫はおとこだ。スカイペとかでは、かなり言葉遣いが女に近いぜ。
とういことで埋庫を部屋に連れていき、部屋にいるのは四人となった。
埋庫とあんぱんは雑談をしていたし、しけは安定のプログラミングをしていた。やることのなくなった俺は先ほどから寝ているパソコンをキーボードをたたいて起こしてやった。スカイペの通知が五十を超えていたのでテキトーに消化して個人チャットの応答を始めた。二人ほど話し終えたところでたつからメッセージが来た。基本的には、たつはグループとかで話しているので個人のほうは何か大切な連絡ぐらいなのだが今回はどうしたのか。
「TATUHANIX_E7: いるかね」
「音色: いるいる」
「TATUHANIX_E7: そっちに、しけ、あんぱん、埋庫居る筈だよな。」
「音色: いるぜ。埋庫はさっき来たところだ。」
「TATUHANIX_E7: kk。じゃ、そこから絶対に動くなよ。」
「音色: ういうい。」
さて、何をするのかね。メッセージのやり取りを終えたところで、急に世界が暗転したかのように、外が暗くなった。ネットが切れたのか、スカイペのオンライン表示が青くぐるぐるしている。それが大体三十秒ぐらい続いたのかな。
ようやく外が暗転し、太陽が真上に上がっていた。確かさっきまで、午後六時を過ぎていたはずだ。スカイペのメッセージ受信音が鳴った。送信先はたつからだ。
「TATUHANIX_E7: 今何時だ?」
「音色: 八月十九日の十一時五十七分だ。たつが何かしたのか。したのなら何をしたか説明してくれ。」
「TATUHANIX_E7: んー」
メッセージの受信を待っている間にしけと話す。
「そういえば、さっきからそのパソコンで作ってるやつは何なんだ。」
「ん。時間酔いをプログラムが実行された点を中心にして十メートルの範囲の中で防止するプログラム。」
わからねえ。まず時間酔いとは…と聞きたかったがスカイペのメッセージ受信音が鳴り話が中断した。
「TATUHANIX_E7: 結論から言うと樹幹を二〇十六年二月二十六日から二〇一五年八月一九日に戻した。これは、俺の所属している「団体」の上からの命令だ。「団体」からの命令は絶対に拒否することはできない。あと、指定された場所に指定された人がいないと時間を変更するなとも言われている。」
「TATUHANIX_E7: あと、しけも「団体」の一員で俺のサポートをしてくれている。詳しく話すことが「団体」から禁止されているので言えないが、しけは、TFAというものを開発して、今までできないといわれていたことをできるようにした時間操作のプロフェッショナルって感じだな。」
「音色: たつとしけが「団体」に所属して時間を操作するのが仕事ということは分かった。しかし、何故時間を変える必要があったんだ。それこそ、時間が狂っちゃうんじゃないか。」
「TATUHANIX_E7: 実を言うと時間を変える(時空改変)前からこっちは八月だったんだ。それが何らかの理由でそっちの地域の時空が狂ったらしい。もし、また時空が狂うこと(時空震)が起きたり起きそうなときはしけの発言にしっかり従えよ。」
「音色: 了解。」
死にそう。頭がパンクして爆発しそう。自分なりにまとめないと頭が。
つまり、日本の標準時は現在、二〇一五年八月十九日だけど、この地域周辺で時空震が発生し、それを修正するために時空改変したということか。また、こういうことがあるかもしれないから注意せよ。ということなのか。何とか自分で理解できるようにまとめられたがどうかね。俺にしては、うまくまとめられているだろう。
さて、これから大変なことが起こりそうだ。俺の中学校生活に影響の出ることがあったらただじゃ済まないからな。