いきなり新床!?
「けっ」
ベットの上に胡坐をかいたナルセフは一瞬リリアナを見た後フイっと横を向いて確かにそういった。
「な、なんですの、その態度は。それが妻を迎える夫の態度ですか」
リリアナは緊張して固まっていた反動で、声高にナルセフに詰め寄った。薄着の夜着が心もとない。
ナルセフは明らかに起こった様子でリリアナをにらんだ。
「なにが、「妻を迎える夫の態度」だっつうの。めちゃくちゃ怯えた顔しやがって。俺が何したんだっつーの。だいたい寝室を共にする羽目になったのはリリーのせいだっていうのに、何で俺が悪いことしたみたな気にならなくちゃならないんだ」
プライベートではナルセフはリリアナのことをリリーと呼ぶ。侍女の名前はリリアナのニックネームだ。
リリアナは少ししゅんとして謝った。
「ごめんなさい。確かに私の態度も悪かったですね。どうしてよいのかわからず緊張していただけで、決してナルセフに対して怯えたわけではないのです」
ナルセフはため息をついた。
「ほら、言葉づかいだって緊張したままだ」
今まで市井で会っていた時にはカジュアルな話し方だったのに、今は丁寧語で話してしまうリリアナだった。
リリアナは「そ、そうですね」そう言ってしまってからまた口ごもってしまう。
ナルセフはまたため息をついてリリアナに手を差し伸べた。
「ほら、そこにいたら冷えちゃうからとりあえずベッドにあがりなよ。何もしないから」
ナルセフが差し伸べた手をおずおずとリリアナが握るとベッドに引っ張り上げてくれた。
「慣れてるんですね」少し悲しそうにリリアナがいうと、ナルセフが呆れたように返した。
「ばーか。そんなわけあるかよ。とにかくお前は、海よりも深く反省しろ。寝室を共にする羽目になったのは、間違いなくお前のせいだ。」
「ナルセフは私と寝室を共にするのはそんなにいやだったのですか」リリアナがますます萎れてそう聞くと、ナルセフはリリアナのおでこを軽くたたいた。
「っとに、お前は・・。いいか、俺たちは同志だ。そういって、この結婚を決めた。でも俺たちには守らねばならないものがある。いざという時にはそれぞれが敵対する可能性だってある。その時はお互いがすべきことをしよう、恨むまい、そう話し合ったのを忘れたのか。この結婚は今はお互いの国にとって非常に重要だ。でも万が一の時に白い結婚の方がお互いの道を進みやすいかもしれないだろ。お前はそれは考えなかったのか」
リリアナははっと顔を上げた。
「いいえ!私はそうは思いません。確かに私にとってスマリ王国が一番重要です。でもナルセフもタタラニア王国も重要なのです。どうにもならない事態にならない、という保証はありません。でも私は最後まですべてを守る道を模索します。私たちに子ができればその子はタタラニアとスマリの大きな架け橋になる、そう思って嫁いでまいりました。白い結婚で終わらせようとは思っておりません」
リリアナの言葉を聞いてナルセフが今度は驚いた顔をした。
「そうか、そうだよな。俺たちは最後まであきらめちゃダメだったな。リリアナの言うとおり俺たちの子は双国の架け橋だな」
くいっと、ナルセフはリリアナをあごを指で持ち上げた。
「じゃあ今から子づくりするか?」
リリアナがまたひっ、といって固まった。
ナルセフが苦笑する。
「冗談だって」そう言いながらリリアナのあごは持ち上げたまま瞳を覗き込んだ。
俺たちが力を合わせればなんだって乗り越えられるな。そういってリリアナの唇に軽くキスをした。
「これは契約のキスだから」ナルセフはそうつぶやいた。
タタラニア王国では16歳が成人とされる。ナルセフは年明けに成人する予定で、二人の結婚式はそれに合わせて行われると予想される。
ナルセフは赤くって固まったままのリリアナにやさしく上掛けをかけながら、言った。
「結婚したらお前の貞操は俺がもらう」
ナルセフは上掛けごとリリアナを抱きしめた。
「それまでに覚悟決めとけ」
ナルセフはリリアナを抱きしめたまま、眠りについた。
リリアナは固まったまま、ほとんど一睡もせずに朝を迎える羽目になった。




