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いきなりラブコメ!

「むーん」

リリアナは思い切り背伸びをした。

朝モヤのかかる厩の先に広がる草原、その向こうに見える森までが城の敷地でその先に城下がある。こちら側は街側ではなく、海岸に面している。といっても、断崖になっていて、海からの侵入は難しく、自然の要塞になっている。

海に行きたいな。

リリアナは思った。昨夜はほとんど一睡もできなかった。心臓が爆発するかと思った。あの状態でいつか眠れるようになるんだろうか。

まだぼんやりとした頭で不安に思う。



昨日のセルフィとの会合の後、少し3人でお茶を飲みながら談笑してていたとき、リリアナはついに気になっていたことを聞いた。

「ところで、わたくし、ナルセフ殿下の寝室にご一緒した方が良いのでしょうか」

ナルセフは紅茶を吹き出し、セルフィはむせて咳き込んだ。

「な、な、何言ってんの、お前」

ナルセフが茶碗をガチャンと音を立てておきながら立ち上がって声を上げた。

人前ではお互いに「殿下」「姫」と呼び合うはずがすっかり忘れ「お前」呼ばわり。


セルフィは気管に入ってしまった熱い紅茶にしばらく口を聞くこともできずに咳き込んでいた。

「だって、わたくし、輿入れしてきたのですよね。輿入れとはしとねを共にすることだと聞いております。お役目を果たさねば」

「いやいや、まてまて。早すぎるだろ!それに・・そうだ!お前は今はリリアナ姫付の侍女リリーだろう。リリーとしとねを共にしたら、俺は妃の侍女に手を付けたことになるんじゃないか!!」

ナイス言い訳!俺ってすごいぜ、とナルセフが勢い込んで説得にかかる。


セルフィはようやく咳が収まり、今度は笑いをこらえるように袖で口を押えた。

弟ナルセフのこんなにあせった姿を見ることなど、そうはない。

「おや、そうですか。この宮の外に出るときには「侍女リリー」である必要がありますが、宮の中ではリリアナ姫として過ごしていただいて良いでしょう。特にあなたの寝室などこの宮の中で最も堅牢な場所。そこで過ごされた方がリリアナ姫の安全の為にも良いのでは」

穏やかに話すセルフィの声が若干震えているのは決して気のせいなどではない。


「兄上!!」セルフィの思わぬ意見にナルセフはさらに焦る。

「一国の王女が婚姻前にしとねを共にするなどあってはならぬことでしょう!」

セルフィはついに噴出した。

「今時そんなことをいうのは我が国広しといえ、あなたくらいでしょう」

セルフィはここで真面目な顔をして断言した。

「ともあれ、リリアナ姫の安全は最重要事項です。寝室はあなたの寝室が最適です。別に今すぐ契れと言っているわけではありません。しとねは広い。2人で寝ても十分な広さです。夜の姫の安全はあなたが守りなさい」




と、いった経緯があり、リリアナとナルセフはしとねを共にすることになった。

国の為に、という覚悟はあったリリアナだが、恋愛経験はまったくない。ついでにしとねの教育はオールドミスの教育係より受けた「何事も殿方の導かれるままに。どんなに苦しいことがあっても声を出さずじっと耐えるのです」というものだけ。よくわからないが、恐ろしさだけがつきまとう。

でも、これも、国の為。

そう決心し、いざ、と勢い込んで寝室に入ってナルセフを見たら、ひっ、と声が裏返り固まってしまった。



あ、寸止め。

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