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ブラ・コン対決

「きゃー、ナルセフ、久しぶり!元気だった?ちょっと会わない間に大っきくなったんじゃない?」

リリアナは馬から飛び降りナルセフに駆け寄った。

「どっからつっこんで良いのか分からないが、なんだって使者と一緒に嫁入りしてんだよ、お前。しかもなんで馬なんだ。つーかその言い方親戚のおばちゃんみたいなんだが。それに輿入れがその恰好って・・」

ナルセフが呆れ顔で笑いながらリリアナを迎えた。


まだ若干リリアナより低い身長を気に病むでもなく、ピンと背筋を伸ばした姿は育ちの良さを感じさせる。

少し長めのアッシュブロンドを1つに結わえ、切れ長の瞳はグレー。数年で美青年と呼ばれそうだが、今はまだ美少年という言葉がよく似合う。ナルセフは鍛錬中だったのかそれらしき服装で、汗をかいたままだ。


「こんな恰好で悪いな」大して悪びれた風でもなくナルセフが言った。

「まあでもお前が普通に輿入れしてくれれば俺だって第二王子としてお出迎えしたけどね」

「ごめん。ごめん。どうもきな臭さが増してる気がして、一刻も早くタタラニア王国入りしたかったのよ」

リリアナも大して悪びれもせずに返す。お互い、今最重要視すべきことが何かわかっている。

「クラウド様たちにも無理させたわ。どうもありがとう」リリアナはクラウドたち使者に腰を折って礼をした。

「ナルセフからも労ってあげて。私が彼らを急がせたの。本当は視察も兼ねてたんでしょ?おそらく城下を視察する暇ものなかったのじゃないかしら」

リリアナはこの部分はさすがに申し訳なさそうに告げた。

「そういやこんなに早い輿入れで、花嫁道具とかどうしたんだ」ナルセフが不思議そうに聞いた。

「ああ、後から送ってもらうことにした。別にいらないとか言ったんだけど、さすがに国の威信とかあるらしくて。とりあえず最低限のものは持ってきたから生活には困らないわよ」

リリアナがなんでもないように答える。


「お前一国の王女とは思えんな」ナルセフが破顔した。

「まあ一国の王女が国境の釣り場で釣りをしてるなんて普通ありえんが」

「ちょっと、ちょっと、一国の王子が国境の釣り場で釣りするのが許されて王女に許されないなんてずるいじゃない。同じ穴のムジナなのに、1人で棚に上がるのはよしてちょうだい」

リリアナがナルセフに眉を上げながら言い返した。


海岸沿いは情報の宝庫だ。のんびり釣りをしながら話す相手が一国の王子や王女だと誰が思うだろう。

市井の意見をこれほど吸い上げやすい場所はない。国境付近ともなれば、隣国の情報も手に入る。そんな理由で趣味と実益を兼ねた釣りをしていたリリアナとナルセフは出会った。ただの釣り人として。

もっともリリアナはナルセフにすぐ気が付いたが。リリアナは公式の場に王女として出たことはなかったが、ナルセフはその天使のような風貌が他国で評判になるくらいには公式の場に参列していた。

偉ぶるでもなく、釣り好きのおっちゃんと話す姿はリリアナにとって印象が良かった。


クラウド一行はナルセフとリリアナの仲の良さに目を見張った。お互いの国の為の政略結婚だが、2人とも悲壮感はまったくない。なすべきことを成す同志のような信頼関係があった。

15、16歳で上に立つものの覚悟を持っているナルセフとリリアナはややもすると第一王子の対抗馬として神輿に乗せられかねない危うさがある。

クラウドは第一王子セルフィの乳兄弟であるためセルフィの緻密さ計画性、辛抱強さをよく知っているが、ナルセフのようなタイプが施政者として受けることもよくわかる。

ナルセフがクラウドに向き直って労う姿にひやりとした不安を覚える。


この方が自ら国を治めようと思ったら敵対せねばならない。

今はまだ少年の色が抜けないが、今後成長すれば、その美しさも人懐こさも大胆さもすべてが脅威になる。

そんな不安をクラウドは抱えている。

そしておそらくナルセフはクラウドがそんな不安を抱えていることを知っている。だから今回の求婚も自分の腹心の部下ではなく、兄の乳兄弟であるクラウドに命じたのだ。自分は兄に背くことない、と。今回の嫁取りも自分自身が隣国と結びつき、個人の力をつけようという意図はないと証明する為に。

ただ、ナルセフと同じように頭が切れ、覚悟がある隣国の王女リリアナを迎え入れたことで、ナルセフの力が増すことは事実。

やはり国内の反対を押し切ってでもセルフィの正室に迎えるべきだったのでは、という後悔がクラウドにはあった。


ナルセフがリリアナの腕に手を添えながらクラウドを向き直ってニヤリと笑う。美少年だけにこういう笑い方をするといっそう含むところがあるように見える。

「リリアナ。改めて紹介するよ。クラウドは兄セルフィの乳兄弟なんで。で、強烈なブラ・コン。もう兄者がかわいくて仕方ない、って感じ。王族なんて難儀だよな。本当の兄弟は一緒に育つことはないのに、乳兄弟は本当の兄弟のように育つんだから。あれは俺のにーちゃんだ、つうの」

リリアナがくすくす笑う。

「確かに、クラウド様がセルフィ殿下を大好きなのはよくわかったわ。打ち解けて話すようになってみれば、二言目にはセルフィ様は、なんだもん」

まあでも。いったん口をつぐんでリリアナもニヤリとしながらナルセフを見た。

「一緒に育ってないのに、ナルセフも極度のブラ・コンだよね」

爆弾発言にナルセフとクラウドが固まる。


「ナルセフだって二言目にはにーちゃんは、だよ」

まったく、どれだけ愛されてるのセルフィ殿下は。長男と末っ子とで次兄を取り合っているようにしか見えないよ。

早くセルフィ殿下と話がしたいわ。リリアナが笑いながら二人を眺めたら、ナルセフもクラウドも赤面して目をそらした。どうやらブラ・コンの自覚はあるらしい。


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