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「まあ、なんのことでしょう、お兄様」

リリアナはしれっと目をそらしながら答えた。


兄弟の中で長兄、レイモンドが最も論理的で言いくるめるのが難しい。

「お前は外遊に出たこともなければ、諸国の式典に参列したこともない。どうやってタタラニア王国と接点を持ったのかと聞いているんだ」

わお。直球で攻めるな。

「お兄様。きっと諸国で私の美貌がうわさになっているに違いありませんわ」

言ってはみるがつい口元が笑ってしまう。カタリナとソフィーナの評判がたつことがあっても、自分はまずないな、という自覚はある。

「私にとっては、お前はかわいい。が、客観的に見て評判が立つほどの美貌ではない」

レイモンドもニヤリと笑う。にーちゃん、手厳しいな。

「お前のうわさが立つとしたら、その頭脳と行動力だろう。私は正直、お前に国に残ってほしかった。兄弟の中でお前が最も政治にも経済にも明るい。国内で嫁ぎ私を支えてほしかったのだが、お前は別の考えを持ったのか」

レイモンドがリリアナをまっすぐに見て言った。


リリアナは目を閉じてため息をついた。レイモンドのことを一番理解できるのはリリアナだ、という自覚があった。

だからこそ、何も言わずに他国へ嫁ごうと思ったのだが。


「こういう時は、何も言わずに離れるのが恰好いいのですけどね」リリアナはレイモンドの目を見返して答えた。

「最近、諸国の均衡が崩れていると思いませんか。タタラニアは大国なれど、現王は体調不良で王子が政権を担っていると聞きます。しばらくは不安定でしょう。そして、その向こうのローランドやわが国の北、ブレアが猛烈な勢いで力をつけてきています。ローランドとブレアが近づきつつある噂もあります。今、タタラニア王国と我が国はしっかりと手を結ばねばクイモノにされかねないと思ったのです。私には離れていてもお兄様の考えることが理解できますし、私が行くのが適任でしょう。タタラニア王国の王子はなかなかモノのわかる方で話が早うございましたわ」


大真面目に話をしたリリアナだったが、レイモンドは盛大に眉をひそめた。

「お前今、だいぶん話をはしょっただろう」

「あはは。ばれましたか」リリアナは破顔した。

「実はタタラニアの王子とはちょっと面識を持ちまして」

「どちらとだ」

「どちらとも。もともと第二王子のナルセフ様と面識をもち、第一王子のセルフィ様も紹介していただきました。なかなか面白いご兄弟ですよ」


レイモンドがこめかみを押さえた。

「どこの国に公式ではなく裏ルートで王子と面識を持つ王女がいるんだ」

「趣味がたまたま一緒だったのです」

「趣味ってなんだよ」

「釣りとかお金儲けとか」

レイモンドがさすがに盛大にため息をついた。

「釣りと金儲けでよその国の王子と面識もったって言ってんのか!お前は一国の王女としての自覚はあるのか!!」


真面目に国のこと考えているつもりなのに、レイモンドに説教されるリリアナだった。


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