待ってました!
リリアナは釣り針にイソメをつけながら、潮目を見ていた。
見たってわからないけど、わかったふりをしてみるのも釣り師のうちだ。
イソメっていうのはお魚さんの大好きな虫。ムカデとミミズのあいのこみたいな形状で、口がついてて噛まれると痛い。正直グロテスク極まりないが、生きのいいコイツがあるのとないのとでは、釣果が違う。
断然魚の食いつきがいい。
潮目がわかったふりをしながらリリアナはイソメを付けた竿を大きく振りかぶり海へ投げた。
そうそう、あのあたりがポイントだわ。
どっこいしょをワンピースをたくし上げながら岩場に座って、撮れた魚を料理長にどうやって料理してもらうかと釣れてもいないのにうしし、と笑いながら考えた。
「姫様!姫様~!!リリアナ姫様~!!」
侍女のマリアが探し回っている声が聞こえ、リリアナはため息をついた。
短い休憩時間だったわ。
「マリア、ここよ!ここにいるわ!」
リリアナが返事をするとマリアが息を切らせて飛んできた。
「姫様!釣りはおよしくださいと、あれほど申し上げているのに!」
説教が始まりかけてリリアナは首をすくめ、急いで話を逸らした。
「何か急ぎの用があったのではないの?」
「そうでした。姫様。タタラニア王国から使者が参りました。和平の証の求婚のお申し出のようで」
マリアが早口で告げる。
告げられたとたん、リリアナは立ち上がってマリアに釣竿を押し付けた。
「ついに、来たのね!」
後はよろしくね~と慣れない釣竿にオタオタするマリアに声をかけながらリリアナは城へ駈け出した。
マリアはここスマリ王国の第3王女。現国王に子は全部で5人。第一王子が国を継ぎ、第一王女が国の有力貴族へ嫁ぎ国を支え、残りの第2王女から第4王女は他国へ嫁ぎ国の和平に勤めるのが役目。
つまりリリアナは隣国のどこかへ嫁ぐことが決まっている。どこへ嫁ぐかは政情と運と順番。
第2王女のカタリナはスレンダー美人、第3王女のソフィーナはベビーフェイスで巨乳。二人に挟まれたリリアナは悲しいかなそのどちらにも恵まれなかった。中肉中背。髪も瞳も茶色。
決して不細工ではないが、美姫と言われるには何かが足りない。
ありがたいことに頭は悪くなかったので、あとは努力しかない、と幼いうちに悟った。自国のみならず、隣国諸国言語、歴史を勉強し、国王には内緒だが街の商会で貿易の手伝いなどして利益を上げている。
スマリ王国は三方を国に囲まれ、一方は海だ。ただ海岸が狭く、大きな港が作りにくいため、海岸沿いの広く港の大きなタタラニア王国と太いパイプを持つことは国の繁栄に非常に重要なことになる。
タタラニア王国とは過去に大きな争いもあったが、ここ数十年は落ち着いている。
パイプを太くする上でもこの婚姻は重要だろう。
タタラニア王国の王子は現在18歳と15歳。片やスマリ王国はカタリナ17歳、リリアナ16歳、ソフィーナ14歳。誰が選ばれてもそれほどおかしくない。




