序章
着実に未来への階段を歩んでいた地球。
あらゆる技術が進歩し、人間の飽くなき探究心はもはや停滞に近い段階へと差し掛かる。
もちろん、思いつけば思いつくだけの技術への欲望は途絶えることはなく、進化へのスピードを緩めているに過ぎない。
進化のし過ぎは世界を壊し、人をも壊す。
現に、数十年前の人間からすれば現代の技術はもはや神の所業とも思える程だろう。 空を飛び、声を伝え、月へ立ち、命を繋ぎ、時をも越えようとしているのだから。
もはや世界のバランスを保つ為の開発スピード、躍進を許さない世間と世論。そして革新的な技術を隠し隠さざるをえない企業と国家。創作物の中に夢を描き、妄想の中で生きる力になりつつある能力革命。
誰もが夢見た未来の姿。
今を生きる人達には無縁の未来。
それでも思い描いてしまう未来への希望。
一体誰が考えただろう。
可能性の一端にはあった筈の僅かな綻びを。
誰が想像しただろう。
ゆっくりと進む筈だった未来への駆け足を。
誰が望んだだろう……こんな苦しまなければならない進歩を。
誰が託すだろう……破滅しか見えない悲壮な進化を。
世界は動き出す。いや、動かされ始める。 未来へ向かう歯車か、はたまた破滅へ誘う死出の門か。
ーー未来は加速する。




