第4話「過去の噺」
目。眼。め。メ。
一般的に「目」というのは、何かを視野に入れ、自己に情報を取り入れるものでしかないであろう。
だがそれは飽くまで、『一般的な』話。
所詮、世の中なんて不条理で。それは、神の神託か、悪魔の戯れか。
その目に真紅の輝きを宿す奇怪な少年少女がいたりして。
その輝きは特別な力を有していたりして。
非難。そして、避難。
赤目の少年少女は、その目だけで差別されたりして。
彼等は逃げる様に、死んでいる様に、世界の片隅で暮らしていたり。世界の楽しさもただの夢幻と化していたりして。
だが彼等は一生黙ったままではなかった。
その「目」を生かし、社会に仇をなした。最初は「赤目」として、全員一丸となり、差別してきた奴等に「抵抗」した。
だが、ごく少数だが、自分たちの「誤り」に気付き始めたものたちがいた。
「誤り」に気付いた者達はその「抵抗」を止めた。その「抵抗」を無意味だと言い放った。
やがて赤目同士、二つの勢力は対立し始めた。
最初は篝火程度だった。
しかしその火は炎へと変わり、その威力を増し、ついには業炎と化した。
そして、「抵抗」は「共喰い」へと名を変えた。
数を圧倒的に気付いていない者達の方が多数だった。勝負は決したものと思われていた。
しかし勝利の女神は気付いた者達にその笑みを見せた。力量はやはり気付いていない者達の方が上回っていた。では何故か。
それはまもるものの違いだった。
気付いていない者達は自らの命を守るために戦った。しかし、気付いた者達は仲間を護るためにその刃を同志に向けた。
結果、気付いていない者達はそのまま、間違いに気付くことなく人生の幕引きとなった。
だが気付いた者達もただでは済まなかった。気付いていない者達からの攻撃によりその数を減らし、最終的には6人という数に落ち着いた。
彼らは人類に「謝罪」し、「共存」を誓った。だが人類は冷ややかなもので、提案を拒み、追放した。そして彼らは地上より姿を消した。
しかし赤目の血が途絶えたわけではなかった。
彼らは密かに代を継ぎ、その数をふやした。中には混血もいたり純血もいたりしたが、その「能力」が途切れることも皆無であった。数世紀に渡り、数を増やした赤目は「能力」を隠す技能を手に入れた。そして地上に進出し、人類にバレないようにひっそりほっそり惨めではありながら、世界に希望すら抱き生きてきた。
ふぅ。疲れた。まぁ、ここまで話せばいったい何が言いたいのかわかったと思う。
俺ヤマトやイシカ、ユカリやカズもみんな、「赤目」の生き残りだ。というか、この些端羅団は「赤目」によって構成されている。早い話がもう二度と同じ過ちを繰り返さない為に、そして社会に貢献するために、このような「何でも屋」というかたちで活動している。
でも「赤目」のおこした過ちは現在でもディープに存在しているため、正体は明かせないのだが。
だけど「能力」のほうは割と、ていうか存分につかわせてもらっている。それが一番良い使用方法かもしれないし。結局、神のみぞ知るということだな。
だから、、、だから脅される理由なんてものは見当たらない。でも、心の奥底に思い当たることはあった。それは我々の正体が露見しているということだ。みんなを脅かさないためにあえて言わなかったが、恐らくイシカもこのことを考えていたはずだ。
てなカンジでもっともらしく考えていた昼下がり。本当にどうしようか。みんなを救うにはいったいどうすれば、、、
するとやおらドアが開く。
「おりゃーーー!!!」
ドスッ。ゴヘッ。な、なんか上に・・・。
「これこれ、油断はいかんぞ、ヤ・マ・ト?」
こ、この声は・・・。
「や、やめろぉぉクレアァァァ!!!」
「ふふふ、ヤだね~」
そして一分後。クレアに自由を奪われた俺がいました。
「えーと、とりあえずなんでクレアに指図されて、正座させられてるのかな?」
すると一言。
「余暇を謳歌するため!」
へ?それだけ?
「仕事の合間にんなことしてんじゃねぇぇぇ!!!」
脅されてるにも関わらず、緊張感ゼロでお送りしています。
「嘘だよ、嘘。見回りの時間だから呼びに来たんだよ。だってヤマトいつまで待ってもこないんだもん!」
「あぁ、もうそんな時間?早く準備するよ。」
「よろしい。」
むむ。なんか腹立つ。
いそいで目立たない服装に着替えた俺は外へと踏み出した。
容赦無く紫外線が降り注ぐ。暑いね、しかし。やっぱり夏の暑さはいつまで経っても慣れないや。
「面倒だな」
そう呟き俺に任された任務を完遂するため、とある場所へと歩みを進めた。