第3話「turning point」
清々しい。あぁ、無駄に清々しい朝だ。
現在8月2日、8時16分。俺以外のみんなは熟睡している。当然だ。昨日、あんなことがあって、深夜まで寝付くことが出来なかったのだから。
勿論、俺も遅くまで寝付くことが出来なかった。しかし、世の中は不条理なもので、早すぎる起床となったのだ。どうせ、8時半に無機質なアラームが鳴り響くので、然程変わらないが、やはり、眠気が、、、いけないよな、二度寝は。
というわけで、冷蔵庫を漁る今日この頃。眠気を飛ばすには、食事が一番だよね!
しかし、冷蔵庫には、僅かなマヨネーズとおはぎが数個、転がっているだけだった。
ハッ!そういえば昨晩カズが、
「少しお腹減ったから、何か喰らってくる」
とかなんとか言ってたよ~な。
いやいや、いくらなんでも、、、喰らいすぎだろ!!お前の胃袋は世界を喰らう胃袋かよ!っていう。
空腹も重なり、朝食すらないので、仕方なく俺は近所のコンビニに行くことにした。念のため書き置きを残し、外の世界へと足を踏み出した。
暑い。すんごく暑い。時間帯は朝だが、さすがに夏なんだな。何故長袖のパーカーを着てきたんだろ、、、よし、脱ぐか。いやでも、下にはアイドルTシャツ、、、よし、ガマンしよ。
それから延々とコンビニまで歩いた。それほど遠いわけではないのだが、体感距離はそれの数倍はあった。
コンビニに着いた頃には、生きる屍と化した俺がいた。一瞬、ここにきた目的さえ忘れてしまった。しかし、クエスト達成のため、砂原のオアシスにいる、ハンター気分の俺は、菓子パンやおにぎりを洗い浚い、カゴにぶち混んだ。会計は恐ろしい額に、、、いいやつだな、俺。
そして会計をしようとレジに向おうとしたとき、不意に目の前に人影が現れた。当然、避ける間もなく、ぶつかった。
「す、すいませぇんんんーーー!!」
コミュショーの俺にとって、こういうことは、大の苦手なのである。
「あぁ、此方こそすまない。」
どうやら声からしてどうも女らしかった。確かにパッと見れば、男っぽいが、よく見ると、緑色をした髪も長い。
そのまま、その人は消える様に去っていった。
思えば、あの人もパーカー着てたな。もしかして、あの人も下に恥ずかし、、、なわけがない。
まぁ、買い物を済ませ、事務所に戻った頃には、もう全員が起きていた。
「お、お帰り、ヤマト」
「飯だよな!?ありがとう!!」
「いや、いいよ。暇だったし。」
カッコいいな、俺って。
机の上に袋を置くと、みんな一斉に群がった。なんか牧場主みたいな気分だ。
ともかく、俺達は昨日のユカリみたく、食料を貪るのでした。端からみたら、随分と不気味な光景だっただろうな。
食料を貪り終え、とりあえず今後の予定を話し合うことにした。
沈黙を破ったのは、俺だった。
「で、どうする?このまま、こうしておくわけにはいかないだろ?」
「そーだよな。奴も絶対に動くだろうし。」
「でも、相手がどれだけ私達ののことを知っていて、どれだけ行動を監視、妨害できるのかがわからないと、、、」
どうやら、みんな同じ心境らしい。うーん。どーしよー。ドーシヨー。
「遠征組が帰ってくるわけないし、、、」
・・・・・・・・・・・。
「え?いや、そうだった!明日はフレイム&ユキヒナのコンビが帰ってくるはずだ!」
あ、ああ、あああ!!
「あのコンビなら、もしかしてだけど、犯人を追い詰められるかもしれない!」
フレイムとユキヒナは敏腕のコンビだ。そのコンビネーションで、数々の依頼を成し遂げ、些端羅団のなかでも、語り種となっている。今回は、難民救済の援助に行っていたはずだ。
「あいつらは、尾行や隠蔽が得意だからな。」
「よし、私ちょっと電話してくる。」
そういって、クレアがキッチンの方へと消えた。
しばらくして戻ってきたクレアは満面の笑みだった。
「了解だってさ!」
おうおう。いい展開じゃないですか。
「よし、反撃開始だ!!」
イシカが言い放った。
「「「おーーーー!!!!」」」