Episode2 「新日本 インプレイスフォート」
約二週間ぶりの投稿です。色々トラブルがあって更新が遅くなりました。と言っても不定期更新なんですけどねw
早朝、愁恋はある臭いで目を覚ました。
「・・・・うっ、酒臭い!?」
愁恋が臭いのするほうへ寝返りをすると何故か愁恋のベッドにアレックスが寝ていた。恐らく酔っ払ってベッドを間違えたのだろう。
(このままだと気分が悪くなりそうだな。少し荒いけど叩き起こすか。)
愁恋は体を起こすとアレックスの頭を殴り、体を乱暴に揺すった。するとアレックスは気分が悪いのか青ざめた顔で起き上がった。
「うぅ・・・頭痛い、吐きそう。」
アレックスは何かをぶつぶつ言いながらシャワールームに入っていった。アレックスがシャワールームに入っていくのを確認すると愁恋は再びベッドに横になった。
(はあ・・・またベッド間違えやがって、これで何度目だ?どうせシャワー浴びればいつもの調子に戻るんだからシャワールームで寝れば良いのに。)
愁恋がぼーっとしていると睡魔が優しく愁恋を包み込んでいき、愁恋は二度目の眠りについた。
アレックスは基地内の兵士から「酒豪」と呼ばれるほどの酒好きでかなり酷い二日酔いになってもシャワーを浴びれば元気になるという謎の能力を持っている。
愁恋が眠りについて少し経った頃、アレックスがスッキリした顔でシャワールームから上がってきた。そして愁恋の冷蔵庫から勝手にコーラを一本取り出すと近くにあった椅子に腰掛け、愁恋の寝顔を眺めていた。
「人を起こしておいて二度寝するとか流石だな。まあ今回はコーラ一本で許してやるよ。次の転属場所でもよろしくな坊や。」
愁恋は深い眠りに落ちていたようで目を覚ましたのは昼頃だった。
「やっと起きたか坊や、もう昼になってるぜ。」
愁恋の視界にはエプロン姿のアレックスが映っていて、様子を見た限りアレックスは昼食を作っているようだった。
「アレックス、何作ってるんだ?昨日のパスタ残ってた気がしたんだけど。」
「まあ待ってな。その残ったパスタを更に美味しく生まれ変わらせるから。」
アレックスが昼食を作っている間、愁恋は食器等の準備をしていた。愁恋達の居る基地では食事は自炊になっていて、宿舎の各部屋ごとに立派なキッチンが用意されている。自炊の理由はここの基地の司令官が大の料理好きで「戦場でも栄養たっぷりの料理が作れるように」という事でそうなったらしい。
そしてアレックスは意外にも料金好きで朝食、昼食を作っている。夕食は愁恋が担当している。アレックスの料理の腕前は基地内の兵士全員が保証する程らしい。余談だがアレックスのエプロン姿はすごく似合わないと言われている。
「よし、できた。今日のランチは俺特製のスープパスタだ。味付けはお楽しみってことで。」
「こっちも食器の準備できてるぞ」
食事の準備が終わり、二人は椅子に腰掛けて皿に盛られたスープパスタを口に運んでいた。
「流石、顔に似合わず料理の腕前は一流だな。」
普段は不機嫌そうな表情の愁恋は珍しく笑顔とまではいかないが口元を少し緩ませていた。
「美味いだろ。喜んで食ってもらえるなら嬉しいよ。」
アレックスは黙々とパスタを口に運ぶ愁恋の姿を見て笑顔になっていた。アレックスの眼差しはまるで子供を見守る父親のようだった。食事が始まって少し経ってから愁恋が口を開いた。
「そういえばアレックス、転属場所何処になった?」
「転属場所か?それはな多分、お前が一番俺に行って欲しくない所だ。」
アレックスの言葉を聞いて愁恋は一瞬で不機嫌そうな表情になった。
(やっぱりな、嫌な予感が見事に的中しやがった。これも腐れ縁って
やつか。)
「はあ・・・またお前と一緒か、これで何度目だ?」
「さあな?五回目から数えてないな。やっぱ俺らは赤い糸で結ばれてるんじゃないか?」
アレックスがそう言った瞬間、愁恋は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。今のジョークは気に入らなかったのだろう。
「それだけはマジで勘弁してくれ、今までのジョークで一番最悪だ。笑えない。」
(またアレックスのジョークを聞く事になると思うと溜め息しか出ないな。確か新日本軍での訓練は明後日からでアメリカを離れるのは今日の夕方だったか。)
愁恋とアレックスは昼食を済ますと荷物をまとめて親しかった人に挨拶をすると新日本に行く為に空港に向かった。
新日本に着いたのは翌日の早朝で愁恋とアレックスは入国手続きだけで二時間以上かかってしまった。新日本はテロを未然に防ぐという理由で出身地、出生場所、職業等々調べ上げられる。そして何も問題が無いと確認されて初めて入国が許可される。
「はあ~入国審査が厳しすぎるな。二時間はきつい。」
「まあ、仕方ないだろう。俺らはむだマシなほうだ。酷い時は入国審査で一日かかる事があるらしいぜ。」
愁恋は入国審査で疲れたのか怠そうな表情を浮かべ、アレックスは眠そうな表情を浮かべていた。
空港を出た二人はタクシーを拾い、新日本第三基地に向かった。新日本の街並みは大都市と変わらず、高層ビルが立ち並び人の波ができている。愁恋は窓から景色を眺めていてその表情はどこか曇っている。そして瞳からは悲しみの色が浮かんでいる。
タクシーが出発して30分程経った時、アレックスが後部座席から運転席に寄りかかり運転手に話しかけた。
「すいません、行き先変更お願いしたいんですけど、どこかオススメの美味い店に連れてってくれませんか?」
運転手はアレックスの頼みを快く引き受けてタクシーを走らせた。しかし愁恋は行き先変更に対して反対なのか不満そうな表情を浮かべた。
「アレックス、飯を食いに行くのは良いけど基地に行くのはどうするんだよ。」
「まあ良いじゃねぇか。タクシーが捕まらなかったって言えば良いんだよ。」
愁恋は諦めたらしく、溜め息をつくと窓側に頭を預け眠りについた。しばらくするとタクシーは路地裏に入っていき、ある店の前で止まった。その店には「麺々軒」という看板が立っていて小さな店だった。
「タクシーは大通りの方に止めておくので。ここは塩ラーメンがお勧めですよ。」
「了解です。ほら、愁恋行くぞ。」
アレックスはタクシーから降りると愁恋を連れて店の中へ入っていった。店の中は狭いが埃一つ見当たらない程綺麗で厨房には大柄な男性が一人居た。その男性の身長は180cmのアレックスより高く、かなり引き締まった体で屈強な体つきだ。そして顔つきは子供が泣き出しそうな程険しく、頭にはバンダナを巻いている。
「いらっしゃい!ん、初めて見る顔だな。日本に来るのは初めてか?」
「おっさん、よくわかったな。今日着いたばかりだ。」
「そうか、ここの奴と匂いが違ったんでな。俺はこの店の店主をやっている我龍武蔵だ。まあ、ゆっくりしていってくれ。」
我龍はわざわざ厨房から出て二人を椅子に招いて座らせた。二人は椅子に座るとすぐに運転手が勧めていた塩ラーメンを注文した。愁恋は店に着いても曇った表情のままでそれを見かねたアレックスは愁恋の頭に軽く拳骨をした。
「痛っ、何すんだよアレックス!」
愁恋は拳骨をされた所を押さえてアレックスを睨みつけた。
「さっきから暗くなってるやつに気合いを入れてやっただけだ。」
アレックスはそういうと親指を立て、白い歯を輝かせていた。愁恋はそれを無視すると携帯を取り出し、音楽を聞いていた。
「ほら、できたぞ。熱いうちに食え。」
我龍は二人の間に入ってラーメンを運んできて二人に渡した。二人はラーメンを受け取るとすぐに食べ始めた。
「美味い!!これがラーメンってやつか。すごくあっさりしていて良いダシが出てる。最高だよおっさん。」
「兄さん、嬉しい事言ってくれるじゃねぇか。坊主も美味そうに食いやがって、良い食いっぷりだ。」
愁恋は先程まで機嫌が悪かったのが嘘だと思うくらい上機嫌でラーメンを食べていた。
「我龍さん、美味いラーメンどうも。」
我龍は愁恋に礼を言われ、嬉しそう表情を浮かべていた。それから我龍は冷蔵庫からコーラを二本取り出すと二人に渡した。
「ガッハッハッハ、お前ら程美味そうにラーメン食ってくれた奴は初めてだ。これは俺からのサービスだ。飲んでくれ。」
二人はラーメンを食べ終えると少しの間我龍雑談をしてから店を出た。二人はタクシーを待たせている事を思い出すと急いで大通りに出てタクシーに乗り込んだ。
「さて、次は何処に行こうか?坊や。」
「何処って、基地に決まってるだろアホ。」
愁恋はそう言うと運転手に第三基地に行くように頼んだ。それからしばらく沈黙が続き、愁恋は仮眠を取り、アレックスは「可愛い女の子を見つけてやる!!」と意気込み、血眼になって窓を眺めていた。
基地には一時間程で着き、二人はタクシーから降りると基地の中へ入っていった。基地内はかなりの広さで様々な建物が建っていた。二人は一番大きな四階建ての建物へ入っていった。建物に入ってすぐに受付を見つけた二人は宿舎の場所を聞く為に受付に向かった。
「すいません、、今日付けでここになったんですけど宿舎って何処ですか?」
「え~と、確認をしますので身分証と転属を証明するものを見せてください。」
愁恋とアレックスは鞄から免許証と辞令書を取り出すと受付の女性に渡した。受付の女性は二人の免許証と辞令書を受け取るとパソコンで二人のデータを照合して辞令が出ている事を確認すると二人に免許証と辞令書を返した。
「確認が取れました。第三基地は五つの施設があって、ここは司令棟となっております。第三基地は新日本内の基地の中で最大の面積を誇っています。ですから道に迷う方が多いという理由で地図をお配りしていますのでお受け取りください。あっ、お二人の部屋番号を調べるのを忘れていました。今調べますのでそちらのベンチでお待ちください。」
受付の女性が部屋番号を調べている間、愁恋はベンチに座り宿舎の場所を地図で確認していた。するとアレックスが愁恋に近寄り、耳元で話しかけた。
「なあ愁恋、あの子すごく可愛くないか?俺、一目惚れした。」
それを聞いた愁恋は呆れた表情を浮かべ、冷めた目でアレックスを見ていた。愁恋に冷たい目で見られているのを気にもしないでアレックスは愁恋に受付の女性の事をしつこく話していた。アレックスの相手が面倒になった愁恋は「惚れたなら告れば良いだろ。いちいち俺に報告するな。」と言って地図に視線を戻した。するとアレックスは深呼吸をすると何かを決意した表情になり、受付の女性に近づいていった。
(あいつ、マジで告るつもりか?どうせふられるだろうけど一応見守っててやるよ)
「そこのお姉さん、ちょっと良いかな?」
「はい?どうしました?」
アレックスに急に話しかけられて受付の女性は困っているようだった。
「お姉さん、あなたは俺のハートを射抜いていった。だから責任を取ってくれ。」
「はあ?何を言ってるんですかあなた。」
アレックスの意味不明な発言で受付の女性は怒り気味になっていて、手に持っていたファイルが折れそうになるほど力が入っていたがアレックスはそれに気づいていないようだった。
「照れるなって、なんなら今からデートにでも・・ギャフッ」
「今度私に近づいたら、そのおかしな頭を撃ち抜きますからね!!」
アレックスは受付の女性が持っていたファイルで頬を殴られ、大げさに2m程吹き飛んでいった。それを見ていた愁恋は苦笑いをしていた。
(ハハハ・・・女ってすごく怖いな。アレックスの事だからまた懲りずに別の女をナンパするんだろうな。)
「愁恋さん、部屋番号の確認ができたので来てください。」
倒れているアレックスを無視して愁恋は内心怯えながらも受付の女性の所へ行き、部屋の番号を聞いていた。女性は笑顔だったが妙な威圧感が出ていて愁恋は苦笑いをしていた。部屋番号を聞いた愁恋はアレックスの足を持って引きずりながら宿舎に向かおうとしたが受付の女性に呼び止められた。
「あの~、部屋に荷物を置いたら司令官室へ行ってくれませんか?司令官が是非とも会いたいそうです。」
愁恋は何故一介の兵士に司令官が会いたがるのか疑問に思ったが疑問をぶつける事無く宿舎に向かった。
建物から出て、しばらくアレックスを引きずりながら宿舎に向かっていた愁恋は立ち止まって一息ついていた。
「おいアレックス、いい加減自分で歩け。引きずるの疲れた。」
愁恋はそう言うとアレックスを無理やり立ち上がらせたがアレックスはまだふられた事から立ち直れていない様子で俯き、ぶつぶつ何かを言っていた。
「あぁ~くそ、これでふられるの何百回目だよ。てか百回目から数えてないな。どうせ俺はふられるのが宿命の二枚目だ・・・」
「ぶつぶつうるせぇよ。どうせ他の女見たらすぐに立ち直るだろう。いい加減その落ち込む姿見飽きた。」
愁恋はアレックスを励ます事はせず、きつい言葉を放った。しかし、アレックスは何故か元気になり愁恋の肩をがっしり掴んだ。
「そうだよな!!女の子はこの世に数え切れない程居るんだよな。絶対一人や二人は俺と付き合ってくれる子が居るはずだ!!」
「まあ、数え切れない程居る女の中からお前と付き合ってくれる女をお前が生きている間に探せるとは思えないけどな。」
愁恋の一言を受け、アレックスは一気に暗い表情になりふられた時より落ち込んでいた。愁恋はアレックスの相手が面倒になったのかそそくさと宿舎に向かっていってそれを追いかけるようにアレックスが走っていった。
二人がしばらく基地の外を歩いていると三階建てのアパートのような建物が見えてきた。その建物が宿舎だと地図を見て確認すると二人は宿舎へ入っていった。宿舎に入ってすぐに宿舎の部屋番号が載った看板あり、二人は自分達の部屋番号が載っている階を探すとエレベーターに乗り込み、部屋に向かった。二人は自分達の部屋を見つけると鍵を開け部屋の中に入っていった。部屋の中はそこそこの広さで二人で住むには充分過ぎる程だった。更に生活に必要な家具一式も揃っていて、キッチンも完備されていた。
「うお~!キッチンめっちゃ良いやつじゃねぇか。」
「新日本は兵士の待遇が良いんだな。てかキッチンがあるって事はまた自炊か。・・・やばい!司令官の所に行かないと行けないんだった。アレックス行くぞ!」
愁恋は急いで部屋から飛び出し、司令官室に向かった。
~To be continued ~
主人公の愁恋よりアレックスが目立っている気が(^。^;)
戦争ものなのに一切戦闘が無くて申し訳ないです。
設定があやふやな所あるのでしばらく設定を詰めるほうに集中したいと思います。