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限りの宰 かぎりのつかさ  作者: kishegh
第2章~赤の眼~
6/9

港の柱

恋愛要素が絡みにくい・・・



新東京国際空港。


2000年に大規模拡張工事の始まった羽田空港は、僅か3年で工事を完了、現在は以前の成田空港の名前であった新東京国際空港となっている。


アジア圏最大規模のハブ空港として、現状の国際線登録数は世界でも有数の大空港だ。


一時は成田空港の使用率が下がり問題などにもなったが、在日米軍の沖縄基地問題解決のため、空軍部隊基地を旧成田空港に誘致した。未だに訓練場問題は残っているが、使用価値の低くなった成田への米軍基地誘致は、予想された反対も少なく完了した。


ともあれ、いまや航空機の最大集積地、アジア航空路の基点になった空港の出国ロビーに響き渡る声があった。


「何で説明も無しに空港ですのぉぉぉ!」


無論、叫んでいるのはフランカだ。当然の様に、脇にはマリアが控えている。大きなハードケースの旅行かばんをカートに載せて運んでいる。


「そもそも何で居るんだ?別に着いて来いとは言ってないぞ」


「フェルを探して下さるのでしょう!」


晃一郎はフェル?と一瞬止まったが、直ぐに愛称と思いつき手を叩いた。


「ああ、そんな事も言ったな」


ワンテンポ遅れて、美月も手を叩く。


「ああ、そっか。忘れてたねー」


「だな」


2人の会話に、フランカの顔面はペンキを塗った様に真っ赤になる。怒っているわりに、準備などがきちんと出来ているのはマリアの能力の賜物だろう。実に有能だ。一言も晃一郎達が行動予定を告げていないことも考えると、何らかの形で監視をしていたのだろう。


晃一郎にしても、気付いた上で放置していたわけだが。


ちなみに、美月は一切気が付いていない。察知する能力が無いわけではないが、基本的に人を疑わないので思いつかないのだ。


「すまんが…あの約束を直ぐにと言うのは、無理になった」


「何でですの!」


晃一郎は、深く深くため息を着き、お空を見上げて呟く。


「ドイツに空の下に居る爺さんよ、貴方の孫はダメダメです。貴方の苦労をお察しします」


ちなみに、方向は南東を向いていたりする。しかも、ロビー内に居るので、空など見えはしない。テロ対策もかねて、天井は高く取られており、しかも美麗ではあるが、装甲板で被われているからだ。以前、フランクフルト・マイン国際空港において、天井に仕掛けられた爆薬で、天井のガラスが降り注いだ事件の再来を防ぐためだ。


明らかにからかう晃一郎に、フランカは髪を引き千切らんばかりにかき乱し、肩を揺らして奇声を上げつつ怒っている。まぁ、当然の反応だろう。


「前も言っただろ。その筋の人間に会ったら、先ず何をするんだ」


「……霊視」


「今の俺たちを見れば、そんな事が言ってられない位分かるはずだが」


やれやれとでも言う様に、首を竦めて大げさなジェスチャーをしてみせる晃一郎に、より一層怒りを燃やしたフランカは、ズビシッと指を刺して宣言した。


「何であれ、約束は約束、今無理と言うなら、出来るようになるまで着いていきますわ」


「好きにしろ」


「え?」


あっさりと認められたことが不思議だった様だ。指し示した指のやり場に、少し困るようにおずおずと引っ込めたフランカは、確かめるように再度問うた。


「良いんですの?」


「お前が勝手に着いて来る分には構わん。何の手助けもせんが、お前の行動を制限する権利は俺には無いからな」


そう言いながら、ポケットから煙草を取り出す。火を点けようとした瞬間、横から出てきた手に煙草は取り上げられた。


「晃ちゃん。ここは禁煙だよ」


「ああ、そうか」


そう言うと、晃一郎は煙草を仕舞いパイプを取り出す。


「まだ、搭乗時刻には1時間ほどある。俺はちょっと喫煙室行って来るよ。そこの喫茶室で待っててくれ」


「分かった」


そう言うと、晃一郎はパイプに葉を詰めながら喫煙BOXの中に入って行く。


「あの方は、何で毎回吸う煙草が変わりますの?」


「個人的なこだわりが有るみたいだよ。私には良く分かんないけど」


「一応、ビンテージと言って良いパイプですね」


今まで黙っていたマリアが会話に入ってくる。その言葉に、フランカは胡乱げな眼を向ける。


「マリア、貴方煙草に詳しかったかしら?」


「あれは、以前オイゲン様も同じ物を持っておいででした。オイゲン様があの方に譲ったのかどうかは分かりませんが」


「違うんじゃないかな?多分あれは、お義父さんのだと思うよ」


「あの方のお父様から譲り受けたという事ですか。どうりで、古臭い趣味ですわね」


「そうだね」


その時、美月はやや思うところもあった様だが、晃一郎自身が懐古趣味的なところがあるのは事実なので、それ以上は何も言わなかった。


フランカは、そんな美月の心の動きについて、何も感じてはいなかった。


「Navigatorか」


そう呟く美月だったが、既に喫茶室に向かうフランカたちには聞こえてはいなかった。


「美月様、お茶にしましょうよ」


立ち止まっていた美月に、気が付いたフランカが声をかける。


「うん。今行くよ」



喫煙BOXの中で晃一郎が銜えているパイプには刻印が入っている。


Navigator


先導者と。


「必要な時には無い…か」



読んでいただきありがとうございます。

御意見御感想などもお待ちしています。


活動報告なども書いておりますれば、そちらにも触れて頂ければ恐悦至極。

Triftの方も御目汚しながらも、よろしくお願いいたします。

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