『幸福な王子』
神さまオレは
昔知った物語の中で
『幸福な王子』みたいな童話が
大大大嫌いだったさ
知ってる?
燕は
越冬するんだぜ?
その燕は
目がダイヤモンドで
唇がルビーて全身が金で
冠は本物の冠の
銅像の王子さまが大好きだったのさ
だって美しいから
だってその国で一番綺麗だったから
だからその燕は
いつだってその王子さまの銅像の肩に
止まって王子さまを礼賛していたのさ
美しいなぁ
綺麗だなぁ
うっとりと
王子さまに憧れていたのです
ある日王子さまは
燕に語りかけます
えっ?喋るの?王子さま
あの
ひもじくて震えているあの子に
私の体の金を一部運んで行ってほしいのです
王子さまの銅像は
街の中央広場に建っていたので
街中のひとたちの営みを
みることができたのです
そして遠く広くをみればみるほど
ひもじくて不幸なひとびとを
数限りなくみてしまうことになるだろう?
だから
王子の銅像は時を経れば経るほど
どんどんみすぼらしくなってゆく
燕は
冬が来るまえに暖かい国へ
行かなければ死んでしまうのに
王子の気持ちを大切に想って
この街で越冬しようと決めたんだ
それは
燕みずからの死を決めたこと
そして燕は死んでゆく
王子はみすぼらしくなったので
街の広場から撤去され棄てられる
神さまオレは
昔知った物語の中で
『幸福な王子』みたいな童話が
大大大嫌いだったさ
そしていまでも大嫌いさ
けれども少しだけ
今になればわかることもある
アイロニーかと想ってた
『幸福な王子』ってタイトル
あれは真実なんだろうな
王子も燕も
ホントのホントに
『幸福』だったんだって
それだけは
ようやくわかるようになった




