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『カオスノイズ:東京拠点化計画~拠点を東京に移し、自分を殺せる勇者の育成に励むことにしました~』  作者: 猫寿司
第1章:カオス城、大地を駆る!

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第8話「白き彗星と紅の巫女」

純白の狂信


同時刻。聖浄軍ピュア・オーダー中央指令本部『ホワイト・アーク』の大講堂は、一点の塵も許さぬ無機質な白に包まれていた。整列した数千の兵士たちは、微動だにせず、壇上の男を仰ぎ見ている。


聖浄軍陸軍元帥、ラファエル。


「……聖浄なる民よ、今こそ立ち上がる時だ」


ラファエルの声は、計算され尽くした熱量を持って講堂に響き渡った。


「我々は、混迷を極めたこの世界を、AIの尊き教えによって最適化しなければならない。……だが、その歩みを阻む野蛮な連中が存在する。……今こそ立ち上がれ、聖浄なる民よ!」


その演説は、かつての独裁者が用いた扇動術そのものだった。選ばれた民による支配を説く、苛烈で過激な選民思想。


隊列の中に、ショウゴ少佐の姿があった。

彼は純白の軍服の袖を直し、壇上の「神の代理人」を冷めた目で見つめていた。


(選民か……。おまえが選ばれるとは限らんだろう……)


ショウゴは口元にニヒルな笑みを浮かべた。

(美しい言葉だ。だが、おまえの言葉には血が通っていない。救済という名の、ただの家畜化に過ぎない)


ショウゴは静かに、その否定を思考の底に沈めた。


鋼鉄の再構築


演説の後、ショウゴは地下の兵器格納庫でメカニックと対峙していた。

目の前には、修復中の愛機『ホワイトグレイブ』が鎮座している。


「反応速度と出力をさらに上げろ」


ショウゴは自らの胸部、鈍い光を放つチタンのプレートを見つめた。


「たった一撃……あの醜い怪物の蹴りで、俺は地上へ叩き落とされた。あんな屈辱は二度と味わいたくない。これ以上、出力は上がらないのか」


老メカニックは困惑した顔で、ショウゴの胸にある融合炉の数値を指し示した。

「少佐。これ以上の性能向上には、あなたの胸にある融合炉自体のバージョンアップ……つまり、再手術が必要です。神経接続の限界を超えれば、あなたの身体は今度こそ完全に機械に飲み込まれますよ」


「構わん。やれ。あの化け物を超える力が手に入るなら、人間である必要などない」


ショウゴは診察台に横たわり、麻酔なしで神経束を焼き切るようなアップデート手術を受け入れた。胸の奥で、核融合の熱が新たな咆哮を上げる。


(もっと速く、もっと鋭く。あの醜い怪物を凌駕するために……)


宣戦布告の巫女


手術が終わり、ショウゴが意識を覚醒させたのと同時だった。


――ドォォォォォンッ!!


本部の正面ゲート付近で、空気を震わせる巨大な衝撃音が轟いた。

緊急アラートが基地中に鳴り響き、兵士たちが右往左往しながら武装を整える。


「敵襲! 敵襲ッ!」


ショウゴが現場へ急行すると、そこには信じがたい光景が広がっていた。

白銀の廊下を、一糸まとわぬ姿で、悠然と歩いてくる影。白磁の肌に透明な鱗を纏い、角と翼を持つ異形の美少女――シズクだった。


「撃て! 排除しろッ!」


兵士たちが放つ無数の光線銃。だが、シズクは眉一つ動かさない。レーザーは彼女の鱗に触れた瞬間に屈折し、虚空へと霧散していく。


シズクがこちらを見つけると、無邪気に手を振った。

「あら。知り合いがいるとはな。こんなところでお会いするとは、何かの縁でございますね」


その言葉に、周囲の兵士たちが一斉にショウゴを振り返った。不審、疑惑、敵意。

「……ショウゴ少佐、貴様、あの異形と知り合いなのか!?」


シズクは平然としたまま、歩みを止めない。

近づいてきた兵士の胸を、彼女は指先一つで貫いた。血飛沫が舞う中、彼女はショウゴを一瞥して告げる。


「ショウゴ、というお名前でしたのね。完全に認識してしまいましたわ。なれど、わたくしは忙しいので、今日はお相手できなくて残念ですわ」


ショウゴは、その殺戮の凄惨さに反比例する彼女の美しさに、一瞬だけ見惚れてしまった。


――ドォォォォンッ!


シズクは天井を突き破り、隔壁をぶち抜き、一直線でラファエル元帥の執務室へと向かう。


「な、なんだ、貴様は……!?」


執務室の机を蹴散らし、唖然とする元帥の前に降り立ったシズクは、一通の果たし状を突きつけた。


「わたくしの愛する魔王様が、この世界を統べ、おまえを奴隷のように飼って差し上げましょう。……それまで、楽しみに待つがよいですわ」


シズクは高笑いと共に空へと消えた。

残されたホワイト・アークには、物理的な破壊と、ショウゴに向けられた拭いきれない疑惑の影だけが漂っていた。

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