第6話「物理法則の瓦解」
絶望の連鎖
一人の熟女を苗床とした儀式が終わる間もなく、浅葱は満足げにその女性を無造作に転がすと、次は震える美少女をユウサクの前に跪かせた。
「次はこれじゃ。ユウサク、種の多様性のために、若き生命の力も取り込むのじゃ」
「うわ……勘弁してくれ……」
ユウサクは内心で悲鳴を上げた。だが、背後に立つシズクの無機質な視線が、拒否権など存在しないことを無言で告げている。ユウサクは逃げ場のない現実を無理やり飲み込み、せめてこれ以上彼女を傷つけまいと、震える手で少女の衣服に手をかけた。
泣きじゃくる少女の、柔らかな肌が露わになる。ユウサクは自分の罪の重さに吐き気を覚えながらも、丁寧に、執拗にその身体を愛撫し、幼い乳房に舌を這わせた。彼の「優しさ」が、恐怖に凍りつく少女の肉体を裏切らせ、望まぬ熱を与えていく。
その凄惨で艶めかしい時間が、突如として切り裂かれた。
ドォォォォォォンッ!!
鼓膜を突き破るような轟音が廃墟を震わせた。
真紅と銀の急襲
ユウサクが反射的に振り向くと、爆煙の向こうから新たな軍勢が姿を現していた。
先ほどのグリーンアーマーとは比較にならない重厚な装甲を纏った、真紅のアーマーの群れ。そしてその中心には、一際異彩を放つシルバーのカスタム機が、殺意を放ちながら浮遊していた。
「ブラッドアイアン、秘匿精鋭部隊……! ヨルダンの奴、これを取りに行ってたのか!」
ユウサクが呟く。それは聖浄軍の「正解」による攻撃ではなく、この地を這いずる者たちが隠し持っていた、泥臭い反逆の牙だった。
シズクと浅葱は、驚く様子もなく平然としていた。彼女たちはとうにこの接近に気が付いていたのだ。
その足元では、異変が起きていた。
今まで聖浄軍の兵士を食らっていた「ミニ・ユウサク」たちが、突如としてお互いを喰らい合う「共食い」を始めたのだ。数千の小さな異形たちが、黒い塊となって蠢き、咀嚼し合う。もはや敵も味方もない、ただの飢餓の塊と化した混沌。
「目標、カオスノイズ一行! 全弾、放てッ!!」
シルバーアーマーから響くヨルダンの号令と共に、無数の追尾ミサイルがユウサクたちを狙って発射された。
物理法則の死
「……鬱陶しいですわね」
シズクが軽やかに地を蹴った。
彼女は飛来する巨大なミサイルの一基を、あろうことか素手で「掴んだ」。爆発するはずの弾頭は、彼女の指先が触れた瞬間に沈黙し、単なる巨大な鉄の塊へと成り果てた。
「お返ししますわ」
シズクがそのミサイルを無造作に投げ返すと、空中で別のミサイルを巻き込みながら大爆発を起こした。
一方、浅葱は地を這うような驚異的な速度で、前方の重装アーマー群へと突っ込んでいった。
「くふふ、鉄の玩具か。壊し甲斐があるのう」
浅葱の拳が、厚さ数十センチの超硬質装甲を誇るレッドアーマーに叩き込まれた。
ドォォォォンッ!!
金属がひしゃげる音ではない。巨大な大砲を至近距離で受けたような、現実離れした衝撃音が響く。一撃。たった一発のパンチで、数トンの質量を持つ機械の巨体が、文字通り粉々に砕け散った。
「ひどいな……」
ユウサクは、少女を抱きしめたままその光景を呆然と眺めていた。
ありえない。あんなに硬くて大きなものを、ただの肉体が粉砕するなど。質量保存の法則も、エネルギーの変換効率も、彼が知る「理科」の知識は、この戦場において完全に瓦解していた。
「……たとえ、この星の生物がすべて生き絶えたとしても、浅葱さんなら笑って生き残ってそうだ」
崩壊する物理法則と、飛び散る鉄の破片。
ユウサクは、自分がもはや戻ることのできない、人知を超えた地獄の深淵に立ち続けていることを改めて確信していた。




