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『カオスノイズ:東京拠点化計画~拠点を東京に移し、自分を殺せる勇者の育成に励むことにしました~』  作者: 猫寿司
第2章:神か悪魔か!? 地獄にあらわれた最強の男

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第1話「ハマの揺りかご」

【まえがき:第一章のまとめ】


かつて地上を統べていた管理AIヘスティアが沈黙し、世界は混迷の極みにあった。 地底に落とされた「さえない40男」ユウサクは、異形の女王・浅葱と、彼を魔王と仰ぐ巫女・シズクと共に、移動要塞「カオス城」を駆って地上へと這い出した。 聖浄軍の精鋭、ショウゴ少佐を文字通りの「汚物」で撃破し、その身をカオス城の苗床として蹂躙した一行は、管理社会の残滓であるドームを突き破り、次なる目的地へと進軍を開始する。 彼らが歩む後に残されるのは、秩序の崩壊と、異形の生命が謳歌する混沌のみであった。


この城が撒き散らす桃色の「ASG粒子」は、高度な科学文明の物理法則を拒絶・上書きし、世界を強制的に「剣と魔法」の時代へと先祖返りさせる混沌の種である。 聖浄軍の精鋭、ショウゴ少佐を文字通りの「汚物」で撃破し、その身をカオス城の苗床として蹂躙した一行は、管理社会の残滓であるドームを突き破り、次なる目的地へと進軍を開始する。 彼らが歩む後に残されるのは、秩序の崩壊と、異形の生命が謳歌する混沌のみであった。

横浜の傷跡


ピンク色の霧を切り裂き、その巨体から絶えず桃色のASG粒子を周囲に撒き散らしながら、多脚歩行の巨大な肉塊――カオス城は、崩落した外壁の巨大な亀裂から、かつて「横浜」と呼ばれた地区へと侵入した。


そこは、中心部よりもさらに無秩序な戦場と化していた。

カオス城は重い足取りで中心部に位置する巨大な円形の建造物――かつて野球が行われていたスタジアムの跡地へと入り込み、そのフィールドの中へと小さく収まった。


城の産気づき


スタジアムに鎮座した瞬間、カオス城全体がこれまでにないほど激しく震え始めた。


『あー……扱われたわぁ……。でもぉ、もう歩けない……。うま、生まれる……っ!!』


城そのものが、震えながら艶めかしい声を上げる。産気づくような不気味な胎動に、ユウサクは玉座の上で絶句するしかなかった。


「ふむ、たまごを産み落としそうな気配じゃな。これ以上、この城を歩かせるのはいささか酷というもの。わらわたちも歩いて探索しようぞ」


浅葱が優雅に立ち上がり、触角をピクリと動かした。


「魔王様、この横浜なる地は、ブラッドアイアンなる勢力の最前線地域のようですわね。ピュア・オーダー軍と交戦中ですが、もはや持ちそうにありませんわ」


シズクが淡々と戦況を報告する。彼女の手には、不気味に脈打つ肉の装飾が施された、生物的な「剣」が握られていた。


探索への身支度


ユウサクは、返り血のような赤い模様が刻まれた生暖かい「マント」を羽織り、竜の鱗が貼り付いた不気味な瞳の「杖」を手にしていた。浅葱は、城が残した優雅な「扇子センス」を広げ、自身の口元にあてている。


ユウサクは、依然として露出の激しい二人の姿を見渡し、意を決して言った。


「……とりあえず、その裸はやめてくれ。服を擬態化するかして、ちゃんと何かを纏ってください」


「ふむ。そちの注文は細かいのう。だが、郷に入っては郷に従え、か」


浅葱が扇子を閉じて指を鳴らすと、彼女の肌を城の粘液が覆い、瞬く間に漆黒のドレスへと形を変えた。シズクもそれに倣い、機能的なメイド服のような形状に肉を変化させる。


「よし。じゃあ……行くか」


ユウサクは杖を突き、マントを翻しながら、スタジアムの外――戦火の漂う横浜の街へと一歩を踏み出した。


荒野の「登録官」


スタジアムを一歩出れば、そこは緑に侵食された静かな地獄だった。

ひび割れたアスファルトを突き破って巨大なシダ植物が茂り、崩落したビルや折れ曲がった高架道路が、死んだ巨獣の骨のように横たわっている。


そんな廃墟の隙間に、トタンや瓦礫を組み上げたバラックが点在し、原型を留めたビルに人が住んでいる様子であった。近くの集落を目標に歩いていると、アイアン・ブラッドの旗を掲げたバイクの集団に囲まれていた。そして彼らはバイクを降り、こちらへと近寄ってくる。


浅葱とシズクは、わざとらしく悲鳴を上げている。

(めんどくさい……。つくづく、めんどくさいことしやがって……)


「……あの、何でしょうか」

ユウサクがおそるおそる、バイク集団のリーダーであるモヒカンに向かって伺いを立てる。


「ここがアイアン・ブラッドの支配下だって知ってて歩いてるのか? この領地じゃ全員登録制だ。お前ら、登録してねえだろうが」


「……登録、ですか。困ったな……」

ユウサクが呟くと、リーダーの手がシズクへと伸びた。


「特別だ。その姉ちゃんを先に『登録』させてやるよ」

リーダーがシズクの手を強引に引っ張る。シズクは「あーれー旦那様ー」と棒読みで叫びながら、期待に満ちた目でユウサクを見ていた。


「……あの、ユウサクです。どうすれば許してくれますかね。女性には手を出さないでください」


「うるせえ! 穢らわしい手で触るな!」

浅葱までがノリノリで罵声を浴びせる。ユウサクは溜息をつき、リーダーに告げた。


「……忠告しておきますけど、この後の展開、どうなっても知らないですよ?」


それが、余計な一言だったらしい。


「ああん? お前が見てる前で、たっぷり登録してやるよ!」


リーダーが激昂し、拳を振り上げる。

(……無視したら、またいくじなしと責められるのだろう。仕方ない)


ユウサクは諦めたように、手に持っていた杖で、リーダーの頭を「ポン」と軽く叩いた。

本当に、埃でも払うような軽い一撃だった。


――ドボォッ!!


異様な衝撃音が響いた。

次の瞬間、リーダーの頭部が、まるで強力なプレス機にかけられたかのように、ものすごい勢いで胴体の中にめり込んでいた。


「……え?」

杖を握ったまま、ユウサクは絶句した。


「なんだ、この杖……!?」

ユウサクが驚愕する傍らで、杖に貼り付いた「瞳」が満足げに一度だけ、カチリと瞬きをした。


旋風の断罪


リーダーが肉の塊と化して崩れ落ちた瞬間、静寂が訪れ、直後に怒号が爆発した。


「て、てめぇ! 何しやがった!」

「殺せ! この野郎をぶち殺せッ!」


周囲の取り巻きたちが一斉に抜いた光線銃をユウサクに向ける。指が引き金にかけられ、殺意が放たれる――はずだった。だが、銃口からは光の一条すら射出されない。電子機器の動作を阻害する高濃度のASG粒子が、彼らの武器をただの重い鉄クズに変えていた。


「あれ……? 出ねえぞ!」

「おかしい、どうなってんだ!」


首をかしげ、銃をガチャガチャと弄る部下たち。ユウサクはおそるおそる、彼らに問いかけた。


「……あの、どうしますか? もうリーダーもいないし、見逃して頂けませんか。俺たち、急いでるんです」


「冗談じゃねえ! 頭をやられて、ハイそうですかって帰れるかよッ!」


逆上した一人が、銃を投げ捨ててナイフを抜き、ユウサクに飛びかかろうとした。

ユウサクは反射的に、手元で邪魔に感じていた杖を「払う」ように横へ振った。


――ヒュォッ!


杖の瞳が怪しく光り、空気が凍りつくような鋭い音が鳴る。

次の瞬間、杖の軌跡を追うようにして、目に見えない「風の刃」がユウサクを中心に円を描いて広がった。


「が……っあ?」


一瞬の出来事だった。

ユウサクを取り囲んでいたバイク集団の男たちが、何が起きたのかを理解する間もなく、その胴体を水平にまっぷたつに断たれた。

上下に泣き別れになった肉体が、重力に従ってアスファルトへ崩れ落ち、断面からは温かい臓物と鮮血が溢れ出す。


「……嘘だろ」


ユウサクは血の海の中で、自分の杖を見つめて震えた。

軽く払っただけで、十数人の人間が物言わぬ肉片に変わったのだ。


「素晴らしいですわ、魔王様! まさに一閃、一掃ですこと!」

シズクが拍手を送り、浅葱は扇子の陰でくすくすと喉を鳴らした。


ユウサクの足元では、まだ息のある上半身が、自分から零れ落ちた下半身を求めて虚しく地面を掻いていた。

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