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第2話 死の小隊

「お前たちがリブラの選抜したオーガか」

 王牙達を待ち構えていたのは赤髪をした女性型の魔物だった。


「私が死の髑髏。シノだ。お前達には私の下についてもらう。概要は簡単だ。私の魔法の守りを得て城壁内へ侵入する。城壁内は魔素キャンセラーによって魔素が失われていく。そこで私達は侵入後に中にあるバリスタを一基破壊する。そうすれば味方の工作部隊があらかじめ設置してあった簡易魔素ジェネレーターを起動する。ここまでが第一段階だ。何か質問は?」


 リンキンが手を上げる。

「逆らって逃げたらどうなるんだ? 生き延びれば安泰だろぉ?」

「良い質問だ。この戦闘では私の魔法の守りが無ければ一瞬で消滅するだろう。必ず私を守れ、私に従え、私から離れるな。戦闘が始まれば私から逃げることが即、死に繋がることがわかる筈だ」

 リンキンが黙る。


「もういい様だな。第二段階だ。本体が進軍してくる。それに合わせて私達は中の王城に侵入し魔素キャンセラーを発生させている聖剣を奪取、または破壊する。最低条件は魔素キャンセラーの停止だ。その後に再度起動できない様にすればいい。何か質問は?」

 誰も口を開かない。


「では最終段階だ。この聖王都を制圧する。ここまでくれば自由行動だ。この段階であれば逃げてもいいぞ。成果が欲しいなら付き合ってやる。以上だ」


ーーー


 王牙達シノ率いる死の小隊が到着する頃には戦闘は既に始まっていた。

 聖王都に繋がる平原は魔物と人間の大魔法で抉れていた。それを阻止せんとする両軍が互いの魔法部隊を潰すために進軍する。それは正に魔法という名の爆撃が降り注ぐ現代戦であった。


「これを俺達で潜り抜けろって事かよぉ!」

 リンキンが悲鳴を上げる。それにシノが答えた。

「安心しろ。そのための私だ。魔法の爆撃は私が防ぐ。だがそれは魔素の消費が激しい。とにかく前進して敵の魔法使いにまで肉薄しろ。そうすれば私が敵魔法使いを無力化できる。魔法を防ぐよりも、接近して敵魔法使いを抑える方が生存率が上がると知れ」


「良いじゃねぇか。それなら俺も成果が稼げそうだ」

 シノの言葉に白鬼のスコルピィが口を開く。珍しく上機嫌だ。それに不機嫌なリンキンが返す。

「近づけりゃあな。俺達は城門に向かうんでいいのかよ?」

「いや。あの戦力の薄そうな壁に橋を架ける。王牙、石柱はお前の得意分野と聞いた。行けるな?」

 シノの言葉に王牙が頷く。

「そういう事だ。まずは城壁に辿り着くぞ。壁の上の敵魔法使いは私が、弓兵は頼むぞリンキン。お前の投げ斧と素早い魔法に期待しているぞ」

 しぶしぶ頷くリンキン。


「それでは行くぞ!」

 シノが号令をかけると地面が盛り上がり人の骨を模した魔物、髑髏が現れる。シノがその胸部に乗り込むと黒のローブが現れ髑髏がそれを纏っていく。

「お、おい、アンタ。死の髑髏って死神の事かよぉ!」

 リンキンが絶叫を上げる。それに王牙が問いかける

「知っているのかリンキン?」

「知ってるも何もこいつと一緒に居て生きて帰ってきた奴なんていないだろうぜ。こいつはヤバいぜ」

 怯えるリンキンにマカツが答える。

「おい。今更どうした。それを言うなら俺もそう呼ばれてたぜ。死神二体だ。逆に安全じゃないか?」

「おいおいおい。なんで俺がこんな所に呼ばれんてんだよ。はー。死に戻り確定じゃねぇか。成果どころじゃねぇだろ」

「それは死ぬ奴が悪いんだろ。死ななきゃそれでいい。それだけだ。俺の取り分が多くなるなら頭数は減ってもいいんだぜ?」

 上機嫌なスコルピィが会話に入ってくる。

「はー。むしろ頼むぜ成果野郎。生きて帰れる心地がしねぇ。タウラスお前はどうなんだ? 静かすぎねぇか?」

「僕は王牙に見惚れていたよ。なんて顔をしてるんだ君は」

 タウラスの言葉で王牙の方を見るリンキン。

 敵陣を見つめる王牙の表情は悪鬼羅刹の笑い顔を思わせる。

「おおぅ!? 旦那、やる気満々じゃねぇか」

「そうか?  俺は恐怖で体が震えているぞ」

 その言葉とは裏腹に、いや小刻みに震えてはいるがその表情が全てを否定している。

「ぜってぇそれビビってんじゃねぇだろ! 完全に殺す気満々だろ! 殺意の喚起かよ! はー。旦那は問題なさそうだな。俺も腹をくくるか」

「準備は良い様だな。では行くぞ」

 談笑が終わるとシノが号令をかける。

 死の小隊がその鎌首をもたげた。


ーーー


 死の小隊が魔法の爆撃と弓矢の中を駆けだす。

 前述の言葉通り魔法はシノが防いでいる。弓矢は武器で切り払い、マカツが盾で防ぐ。被弾はタウラスの回復を使うまでもなく自己回復で賄える程度だ。

「地雷だ!」

 先頭を走る王牙が叫ぶ。それと同時に地面が爆発し木の杭が飛び出してくる。

「どわぁ! 道理で道が空いてるわけだぜ!」

 叫ぶリンキン。

「俺が先頭で地面を掘り起こす。その周りを耕してくれ。土の煙幕だ」

 王牙の言葉で理解した面々は大地の支配を展開し、周りの地面を隆起させる。そしてそれを破壊する。土煙が立ち込め飛んでくる弓矢の精度が下がりだした。

 魔物が起こした土煙煙幕の中を地雷を暴発させながら王牙が駆ける。木の杭は大地の支配で破壊が出来ない。それでも王牙の足は止まらない。


「接敵!!!」

 王牙は叫びながら壁の前に陣取ろうとした人間達を切り伏せる。

「速ぇよ!」

 王牙を止めようとしたリンキンをシノが止める。

「いや! それでいい! 敵の魔法使いは私が抑えた! 存分に暴れろ! リンキン! 今なら魔法が防がれる事は無い! 弓兵を抑えろ!」

 シノの指示で王牙は進み、リンキンは城壁の弓兵を魔法で落としていく。


「王牙が突出しすぎだ! 僕の回復が届かない! どうする!」

「そいつは俺に任せろ! 王牙、最高だぜ! 俺の得物が皆、ケツ向けてやがる! 入れ食いだぜぇぇぇ!!!」

 回復範囲外まで突出する王牙に戸惑うタウラス。それにスコルピィが応えると、王牙の開けた穴に突撃していく。二刀に構えたサーベルで次々に人間を切り裂きその穴を大きくしていく。


「おいおい。死神と呼ばれたこの俺がケツにいるんだがどういうこった」

「マカツ。お前は奴らのサポートをしてやってくれ。死にそうな奴の嗅覚には優れているだろう?」

「言ってくれるな指揮官さんよ。ヤレヤレこの小隊の死神は何人いるんだ?」

 ぼやくマカツにシノが指示を出す。だがマカツのその顔は明るい。


「これはヒーラーの僕の立ち位置がわからないぞ。どうするシノ」

「私達も前に出るぞ。奴らの近くが一番安全だ。出遅れるな」

「あの死地が一番安全なんて! なんて素敵な小隊なんだ!」

 敵陣に切り込む三人に追従するシノとタウラス。


 人間の包囲が完成する前に王牙の石柱が城壁前の堀を超えて城壁に突き刺さる。

「橋が出来たぞ!!!」

「上出来だ! 全員集まれ! マカツ! しんがりだ! 王牙! 私が来るまで待て! 魔素膜を展開してから突入する!」

 橋が架かると死の部隊が機敏に反応する。王牙を先頭にシノ、タウラスと続きリンキンが援護しながらスコルピィとマガツが下がる。


「王牙。君、魔素の消費が早いじゃないか。どこで被弾したんだい?」

「いや、敵の攻撃じゃない。自身の魔素を燃やした一撃だ。回復を頼めるか?」

「勿論だよ。被弾よりも自傷で傷を負うなんて君らしいね」

「ああ。こうでもしないと突破できないからな」

 石柱を守りながら回復を受ける王牙。


 そしてシノの魔素の膜が完成し、声を掛ける。

「魔素の膜は展開した。次は私から離れるな。魔素キャンセラー下では今の戦い方は避けろ。バリスタを落とすまで無補給だ」

「心得た。もう渡るか?」

「ああ。先導してくれ。橋を渡るぞ!!! リンキン! 敵の魔法使いを片付けろ! 私も魔法で援護したい!」

「人使いが荒いねぇうちの姉御は。俺様大活躍すぎだろ!」

 リンキンが投げ斧と速射魔法で魔法使いに止めを刺す。


「スコルピィ! マカツ! デカいのを撃つぞ! 死ぬ気で走れ!」

 シノが座標魔法を味方にわかるように設置する。

 王牙達は橋を渡り終え、スコルピィがその身軽さで続く、そしてマカツのしんがりを支えながらシノの魔法が炸裂する。

 追って来た人間達は魔素に焼かれ、追撃は止まったかのように見えた。

 だが問題は別の所からやってきた。

 マカツが渡り終える寸前で橋が折れ、堀に落ちていく。

 直前でジャンプしたマカツだが城壁には届かない。

「登れ!」

 王牙が自身の魔素で作った魔素アンカーをマカツに突き刺す。

 それを掴み上ってくるマカツ。


「助かったぜ」

 間一髪で登り切ったマカツが城壁を登りきるとスコルピィがやってきた。

「よぉ。城壁の得物は全部俺が貰っておいたぜ。残念だったな」

「ブレねぇなお前も。俺は人間行きなんて興味はねぇぞ。全部持ってっちまっても文句はねぇ」

 呆れるマカツに鼻を鳴らしながらスコルピィは吐き捨てる。

「へっ! 張り合いがないなんて言わないぜ。俺の成果がガッツリ稼げるうちはお前たちの命も安泰だ。精々俺の成果のタネになってくれよな」

 

 聖王都の城壁に昇り詰めた王牙達。

 だがこの先は魔素キャンセラーの張られた本当の敵地だ。

 王牙は目を凝らす。そこには地面から湧きだしてくる巨大なバリスタの姿が見えた。

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