最終話. 由緒正しい戦略
晒されてから3日後に『守護聖女の私を追放した帝国はもうすぐ滅ぶみたいですよ?〜隣国の第四王子に溺愛されて幸せな結婚生活を送る〜』の最終話を投稿した。
炎上商法というわけではないが、完結ブーストを最大限狙うなら今しかないと思った。
日常パートが続いていたおかげで話をスムーズにまとめることができた。
完結済み連載作品一覧に載ったことで、最終話投稿日の閲覧数がなんと1000を突破した。
初めての4桁PVに心が躍った。
一方で評価ポイントは12しか増えなかった。
新たに書かれた3件の感想も全て捨て垢を使った幼稚な荒らしだった。
最後の悪あがきとして完結報告ポストを何度もXに投稿してみた。
一応応援と称して引用RTしてくれた人はいた。
しかしこれまでの経験上、こういうのは大抵がRTだけで終わってしまい、ブクマもポイントも感想もレビューも提供しない。
無反応よりいくらかマシとはいえ、たった数人の無名アカウントが拡散したところで状況が変わることは滅多にない。
案の定バズりも何も起きないまま閲覧数はあっという間に減っていった。
完結ブースト失敗を見届けた私は愛論のXと小説投稿サイトのアカウントを削除した。
といっても創作活動をやめたわけではなく、新たなハンドルネームでアカウントを作成した。
愛論のアカウントのまま新作を投稿して人気が出たときに、規約違反だと晒されて炎上した過去が足枷になると思ったからだ。
実際に無名時代の差別発言が掘り起こされてアニメ制作中止になったラノベ作家や、原作を下に見たような発言がファンの怒りを買ってヒロイン役降板を求める署名騒動になった声優がいる。
一般人のくせに気が早いと言われるかもしれない。
だとしても、一度もランキングに載らなかった挙句、炎上の火種になった黒歴史を残しておくメリットはなかった。
私は自分がハッシュタグを使ってやったことが規約違反だと認めたわけではない。
しかし大勢の反感を買って炎上する方法だということは理解した。
同じようなことをしている人たちの中で偶然私が晒されて炎上してしまっただけで、要するに運が悪かっただけだと割り切ることにした。
私の二の舞を恐れたのか、互いにポイントを入れ合うことを条件にした募集ポストは以前より減った……ような気がする。
そこで今は「1話ガチャ」「序盤ガチャ」と呼ばれる方法を試している。
これは世界観や設定を少しだけ変えた序盤を何パターンも投稿して、その中から人気が出たものだけ連載を続けるという方法だ。
有名な書籍化作家やアニメ化作家も愛用している由緒正しい戦略なので、絶対に文句を言われないし晒されて炎上する心配もない。
『没落貴族家の三女に転生しましたが、精霊魔法の才能がありました〜護衛のイケメン騎士と2人で過ごす秘密の時間〜』
昨日の閲覧数は25。
評価ポイント4、ブクマ0、感想0、レビュー0。
どうやら今回もガチャ失敗のようだ。
今日投稿する5話で伸びなければ打ち切ってまた新作を書けばいい。
次は没落貴族家の三女を魔導国の第四王女に、精霊魔法を古代魔法に変えてみよう。