2.私が求めていたもの
私が女子中学生だということを明かせば何か変わるかもしれない、という気持ちがないことはない。
世の中には「若い女の子がやっているから」という理由で注目されることがたくさん存在する。
地味なおっさん趣味だとして女子高生をメインキャラにしてアニメ化すれば話題になるし、Vtuberのチャンネル登録者数ランキングは美少女アバターが大半を占めている。
創作界隈では若い女子、特に中学生が珍しい存在だということはなんとなく把握していた。
ただしこれは一歩間違えれば身バレに繋がる危険な手段だ。
身バレするということは、すなわち平穏な日常の終わりを意味している。
私はあくまで「ネット小説家の愛論」として自分の作品を読まれたいだけなので、現実世界とネット世界は分けておきたい。
インターネットに蔓延る気持ち悪い男が気持ち悪い絡みをしてくるかもしれないことも考えると、気楽に実行できることではなかった。
深夜アニメを見終わってXを眺めていたとき、とあるハッシュタグが目に入った。
#RTした人の小説を読みにいく
#RTした人の小説を読みに行く
RTというのはRPの昔の呼び方だ。
XがまだTwitterとして運営されていた時、ポストはツイートという名前だったらしい。
しかし今でも頑なに古い呼び方を続けるインターネット老人が数多く存在しており、Twitter時代をよく知らない私ですらRPよりRT、ポストよりツイートの方が見慣れているくらいだ。
まあ呼び方が違うだけで意味は同じなのでどちらでもいいと思う。
むしろTwitter、ツイート、RTと呼ぶのが趣があるという風潮があるとかないとか。
ハッシュタグをタップしてみると予想以上に多くの人が使用していた。
RT数はほとんどが50や60前後、多いものだと100を超えていた。
これこそ私が求めていたものだと直感した。
青色の文字が光り輝いて見えた。
このハッシュタグを使えば私の小説を大勢に読んでもらえて正当な評価が得られる。
私はXを最新話更新の告知と推しや公式アカウントの情報確認くらいにしか使っておらず、かなりもったいない使い方をしていたことにようやく気付いた。
いくつかのリプ欄を見ると、RTだけではなく読んでほしい自作小説のURLを貼ること、そして一言添えることが暗黙のルールになっていることがわかった。
とりあえず合計で50人RTしてリプを送り、アカウントもフォローした。
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初めまして!
愛論と申します!
ハッシュタグに応募させていただきます!
国を追放された主人公が努力で成り上がる異世界恋愛小
説です!
世界観に拘りました!
ぜひ読んで感想をお聞かせください!
『守護聖女の私を追放した帝国はもうすぐ滅ぶみたいで
すよ?〜隣国の第四王子に溺愛されて幸せな結婚生活を
送る〜』
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