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出会い

到着地の岩国基地までは約1時間のフライト。

さて、何をしようか?と考えていると

「ねぇ君、西武の部隊の子でしょ?」

飛行中、たまたま隣になった、おかっぱ頭で丸顔の美人に突然話しかけられた。

「え…?なんで分かったんですか…?」

急に話しかけられたのと、所属を当てられた事に怪訝な顔をしながら返事をする。

「ああ、突然ゴメンね。」

おかっぱ頭の美人は、私の顔を見て申し訳なさそうに両手を顔の前で合わせる。

「輸送機に便乗する人なんて、政府関係のお偉いさんか軍関係の人しかいないし。その制服のエンブレム、西武のHUMO部隊の標章でしょ?仕事柄気になっちゃってさ。」

と付け加えた。


よく見たらどこかで見覚えのある顔だが、多分気のせいであろう。

話してみると、どうやら彼女は科学者で国立に用事があり、今は本拠地に帰るところらしい。


彼女との会話は弾み、気がつけば岩国へ最終アプローチしている旨のアナウンスが流れていた。


「そういえば、笠戸までどうやっていくの?」


西日を浴びながらC-2輸送機は無事に岩国基地へ着陸し、駐機場までタキシングしている時、ふと彼女が思い出したかのように聞いてきた。

そういえば何も決めてない事に気づき、慌てて

「何も決まってないですけど、電車で行くと思います。」

と返した。

「よかったらなんだけど、帰り道同じ方向だし乗ってく?」

「え!?いいんですか?」

まさに渡りに船だった。昨晩妄想にふけってしまい、翌日行き方を調べる頭すらなかったからだ。

きっと、部隊章から私が土地勘ないことを勘づいてくれて、迷わないように親切してくれるんだ。ありがたや〜

ここはご好意に甘えようと頭を下げた。

「いやぁ〜こっちも助かったよ。岩国から2時間半も1人は寂しいから、せっかく仲良くなったしもうちょっと付き合って?ね?」

「へ!?」


超個人的な理由だった…


彼女の愛車、青色のスバルWRXに乗り込み笠戸へ向かう。

「本当は近くに錦帯橋っていう有名な橋があって、本当は寄り道して見せてあげたかったんだけど…暗くなっちゃうからゴメンね。」

申し訳なさそうに話す彼女に、一葉はいえいえと言いつつ手を横に振る。

「その代わりと言ってはなんだけど、途中まで海沿いを走るからそれで許してね。」

「え!海!?海を見られるんですか!?」

海という単語に反応し、途端に目を輝かせる一葉に一瞬驚いたが、今まで生きてきた中で海を見た事がないのであろうと納得し、自分が多少遠回りでも海沿いの道を選んだ事に、心の中で小さくガッツポーズをした。


瀬戸内海を眺めつつ彼女と話す楽しい時間もあっという間に終わりが近づく。


笠戸事業所の近くで降ろして貰おうとしたが、「事務所まで送るよ〜」と、検問所へ車を進める。

え、幾ら科学者でも検問所で止められるんじゃ…


検問所で一旦停止し、ブースから軍服を着た男性が

「従業員証または入場許可証を提出して下さい。」

と話しかける。

彼女は車から顔を出すと

「突然ごめーん、今日はこの子送りに来ただけだから出迎え要らないよ。」

と親指で私を指しながら答える。


は?正気かこの人。自分が美人だからって許される訳ないだろ!


「封筒ちょ〜だい」

ドン引きして顔を引きつらせている一葉から封筒を受け取ると、彼女は何事も無いように門番へ手渡す。

「確かに確認しました。どうぞお通りください。いつもお疲れ様です。」

封筒の中身を確認した彼は、ゲートを開けると背筋を正し彼女に向かって敬礼した。

「いつもありがとねぇ〜」

そう言ってウインクを返し、何事もなく車を発進させる彼女。


え?顔パス…?初めて見た…うちの所長ですら顔パス出来ないのに…


事務所の前に到着し一通り車内に忘れ物がないか確認し、お礼を伝えた時。

「ごめ〜ん!ここまでであなたの名前を聞いていなかったよね?教えて貰えるとありがたいな。」

と、思い出したように話しかけられたので

「萩山一葉です。」

と答えた。

「一葉ちゃんね!今日はありがとう!また会えたらよろしくねぇ〜!」

と、言いながら車を発進させる彼女。


その姿を見送りつつ、小さく

「私まだ名前聞いてないんだけど…」

と呟いた。

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