行商
あの村を消した次の日。私たちはとある商人の一隊と出会った。せっかくということで、商品を見せてもらうことにした。
「さあ、思う存分見てってくれ。ここにある宝石と装飾品、骨董品は全部王都の鑑定士が本物と認めた物だよ」
商人の1人が長いテーブルの上に商品を置いて言う。商品はクリスタルの原石、ダイヤモンドのペンダント、魔導書を始めとした高額な物ばかりだった。それをレンとルシアナが見ている。
「結構種類あるね〜」
「宝石って、私初めて見ました」
「リナっち、これ買ってもいいの?」
「1人1つまで」
「だってさ、レンレン欲しいのある?」
「えっと…金貨50枚!!??」
レンが商品の値札を見て大声を上げる。
「ほ、本当にいいんですか?」
「いいよどれでも」
「…」
レンが『こいつマジか…』って顔のまま視線を商品に戻す。
「これとか、レンレンに似合うんじゃない?」
「これは、イヤリングですか?」
「ピアスだねこれ」
「あ、そうですか…。何で似合うって思ったんです?」
「ほら、レンレンって美人っていうより可愛い系じゃん?だから下手に指輪とかネックレスとかつけるより、こういうちょっとしたピアスの方が合うと思うんよ。同年代の男子の気持ち考えてみ?レンレンみたいな純情そうで可愛い子が桃色の髪をかき上げたらキラリとピアスが見える。可愛いけど大人って感じがしてもう即堕ちっしょ」
「…」
レンが無視する。
「普通に似合うと思うよ。今夜試しにつけてみようか。手伝うからさ」
「…リナさんが言うなら、というかこれいくらですか?金貨20枚…」
「値段は気にしなくていいって。ルシアナは決まった?」
「ちょ待って、今考えてるから」
「…こいつが決まったら教えて」
「分かりました」
私は2人をその場に残して離れる。隣の馬車ではクロエが武器を見ている。
「これは…刀、でしたっけ?」
「お姉さんよく知ってるね」
クロエが刀を抜いて刃を眺める
「ほ〜、ちゃんと手入れしてますね」
「どうも。こっちはどうです?ソツラ鉱でできた剣ですよ」
「ソツラ鉱!?ほんとですか?」
「もちろんです。実際に魔力を流してみれば分かりますよ」
クロエがあんなに興奮してるのは珍しい。私でもあまり見たことがない。
やっぱり売買の話を承諾したのはよかった。こういう商人は偽物しか売ってない奴がほとんどだが、この商人たちは割と信用できそうだ。さっきの宝石も本物っぽかったし。
「売買の話に応じてくださってありがとうございます。高級そうな変な馬車が向かってきたので、つい声をかけてしまいまして」
「感謝するのは私の方です。結果的にあいつらも楽しそうですし」
私はこの隊商のリーダーとお喋りを始める。
「タランヘイルから?」
「ええ、あそこは陸の流通の要ですし、物だけなら王都より揃っているので。それにしても、例のシュレイセンデラー家のご令嬢とこんなところで会うとは思いませんでしたよ」
「…知ってるんだ」
「商人ですから。中でも私は何でも商品にしたいタイプの人間でして。鉱石も武器も奴隷も、情報も…。ですが、取引に私情を持ち込むつもりはありませんのでご安心ください」
「それは安心できそうだ」
「ところで、あなたは何か買わなくてよろしいのですか?先ほど言った物は全てありますよ」
「奴隷も?」
「ええ、あちらの馬車の中に」
リーダーが一番後ろの馬車を示す。
「見てみても?」
「もちろんです」
私はリーダーについて行き、馬車の後方に回る。リーダーが幌を捲ると、そこには20くらいの奴隷が詰め込まれていた。
奴隷の種類は人間、獣人、亜人、魔族と様々だった。奴隷たちは誰一人として目を合わせようとせず、ただ俯いている。
「これは、結構状態いいですね。3つ4つは死んでると思ったんですが」
「商品ですから。欲しい物はありましたか?」
「そうですね…」
特に奴隷が欲しい状況ではないけど、せっかくだから1つくらい…。
「リナさん」
「ん?ああ、決まった?」
「はい…」
レンが馬車の中を見る。
「奴隷、ですか…」
「うん。そうだ、欲しいのある?」
「え…?」
「正直私はいらないから、レンが欲しいのあったら買ってあげるよ」
「1人1つまでなんじゃ…」
「特別特別。ほら、あの白いのとかどう?この中では一番綺麗だし、獣人奴隷は王都でも人気だったし…レンに合うんじゃない?」
「この人たちは…」
「人じゃなくて奴隷ね」
レンが一瞬睨む。
「この奴隷たちは、いくらするんですか?」
「いくらです?」
「1つ銀貨5枚です」
「銀貨5枚…。2、4……」
レンが2つずつ奴隷を数える。
「20人。…100枚。つまり金貨1枚で全員買えるんですよね?」
「…そんなに買ってどうするの?」
「どうって、連れていくんです」
「どこに?」
「…きょ、教会に。奴隷を助ける教会があるって話をどこかで…」
「そう言う話もあるけどさ、いきなり20も持ってったら単純に迷惑じゃない?教会はボランティア団体じゃないんだからさ」
「……」
レンが次の言葉を必死に考えている。がんばれ〜。
「…じゃあ、何人ならいいんですか」
「1つ」
「……じゃあ、リナさんが言ったので」
「白い髪の獣人でいい?」
「はい…」
「じゃあ、あれを」
「分かりました」
そしたらリーダーは馬車の中から白い髪の獣人を強引に引っ張り出してきた。降りると同時にその奴隷の腕を強く引く。結果奴隷はバランスを崩してドサッと地面に倒れる。
うぅ…
「お会計は」
「あっちで一括でやっても?」
「ええ構いません」
「レンはこれ持ってって。すぐ行くから」
倒れ込む奴隷を指差して言う。
「…分かりました。大丈夫ですか?」
レンが奴隷に優しく声をかける。奴隷は何も言わなかったが、足に力が入らず立てないようだった。
そしたらレンは、奴隷を抱き抱えてルシアナの元に向かった。
「使用人、って訳でもなさそうですね」
「レンは私が個人的に連れてきた子なので、家柄とは何の関係もありませんよ。あと、さっき情報も取り扱っているって言ってましたよね?」
「ええ」
「ここ数日の内で、私に関する新しい情報はありますか?あれば全て買います」
「…もちろんあります。お値段は嵩みますが」
「これを」
私はリーダーにある銅貨を渡す。
「銅貨?…っ、これは…!」
「魔族歴27503年、3代目魔王シゥレッハ・ファルバル・サタンにドワーフ国ダルデムが友好の証として贈った物です」
「古代遺物ですか。どこでこんなものを…」
「ヒュータンの骨董品店の隅にありました。どうしてかは知りませんが」
古代遺物。遺失技術が戦争時代に生み出された物や技術を指すならば、古代遺物はそれ以前の時代の未だ未解明の技術が組み込まれた物全てを指す。
大きな違いは、技術の解明度と用途の方向性だ。遺失技術の解明率は今のところ50%といったところだろう。そして用途が狭すぎて戦い以外に使い道がない、または採算が見合わず実質使用不可のものがほとんどだ。しかも使用者の命と引き換えに力を発現させるものがやたら多いから、実物はあるが使用したことがなく能力が不明といったものも多い。
比べて古代遺物の技術の用途は多岐に渡る。例としてこの銅貨。名称は『ダルデムの魔銅貨』。通常の銅貨の成分は約90%が銅で残りが他の金属である。だが『ダルデムの魔銅貨』の成分は、30%が銅、5%がその他金属、残りの65%が魔石となっている。そもそも金属と魔石を融合させる技術すら驚愕に値するが、一番驚くべき部分は魔力を蓄えることができると言う点だ。蓄えるだけなら現代の技術でも可能だ。だが現代の物では時間と共に魔力が逃げていき、そもそも蓄えられる魔力量も多くない。それに対して『ダルデムの魔銅貨』は時間経過で魔力が逃げることはなく、この小ささで蓄えられる魔力量はドラゴン30匹分に相当すると言われている。そんな技術が解明できれば魔法研究界に激震が走る。生活も今より圧倒的に便利になる。でもしばらくその時はこないだろう。
古代遺物の数は見つかっているだけで遺失技術のおよそ倍。だが、解明率は0%である。多くの理由は製作者の死亡、設計図の紛失などである。ダルデムという国も、銅貨を贈った翌月に火山の噴火で滅亡した。そうやって技術は途絶える。それは仕方のないことだ。
よくそれらに対してロマンを語る奴もいるが、私にとって現代技術も遺失技術も古代遺物も道具の一つにすぎない。使えるかどうか、ただそれだけだ。
「本当にいいんですか?こんなもの…」
「足りませんか」
「足りなくなります、お釣りが…」
「釣りは結構です。では教えてもらっていいですか?私に関する新しい情報を」
「…といっても2つしかありませんが。1つはご両親が殺害されました。もう1つはあなたに懸賞金がかけられました。今のところ額は金貨100枚です」
「…あのクソ王子か」
「どちらもその通りです」
やっぱり殺しておくべきだった。手を刺されたくらいでギャーギャー喚いていたから、こんなことするだろうと予想はしてたけど…少し面倒くさいことになったな。
「でも、あのクロエさんがいれば、ほとんどの輩など一瞬で片付くでしょう」
「そうだね…。まあいいや。お金を持ってくるので…」
「他に欲しい情報はありませんか?この銅貨に対して情報2つは流石の私も気が引ける」
「んー…。じゃあ、メガルとイスリルドの現在地を」
「…メガルは現在、魔族国ナー州の辺境で盗賊の頭をしているそうです。イスリルドは…申し訳ありません」
「分かりました、十分です」
私はそのままお金を取りに戻ろうとする。
「この旅は、復讐の旅ですか?」
「…」
「そのために、わざと追放…」
「追放されたから旅を始めた。復讐はついでです。あくまで私の目的は旅ですから」
「…そうでしたか、変に詮索してすみませんでした」
違う。
この人の言う通り、これは復讐の旅だ。
奴らを根絶やしにするまで終わらない。奴らの頭が地を転がり、溢れた臓物が蛆で塗れ、その血によって雑草が生い茂るまで…絶対に。
◇ ◇ ◇
隊商と別れた後、私たちはそのまま馬車で進んだ。赤子が泣き叫んだり、それをルシアナがあやしたり、レンが奴隷となんとかコミュニケーションを取ろうとしていたりと随分賑やかだった。
日が暮れる前に馬車を停めて、辺りから食糧を調達した。兎数匹にきのこと薬草が取れたから、大鍋で煮込んでスープを作った。はっきり言って不味かったが無いよりマシだ。
夜はいつもの如く2人で遊ぼうとしたがルシアナに拒否られた。まあ昨晩散々虐めたし、今日くらい仕方ない。私とレンがテントでその他が馬車の中で寝ることになった。
テントの中。
「いくよ」
ズブッ…
「い゛ッ……」
「もう片方」
ズブッ
「ッ…!」
「はいこれ飲んで」
レンの耳たぶに針を突き刺した後、回復薬を飲ませる。
レンが回復薬を飲み干す。
「痛みはどう?」
「…治まりました」
そしたら針を優しく引き抜く。
「変な感じとかしない?」
「特には。耳に穴が空いてるのが変な感じですけど」
レンが耳たぶの穴を触りながら言う。
「あまりイジらないでね。傷つくかもしれないから」
最後に昼間に買ったピアスをつける。
レンに手鏡を持たせて自分に見せる。
「どう?」
「……リナさんは、どう思いますか?」
「似合ってるよ」
「ちゃんとした感想をください」
「…可愛くなったよ。前より大人っぽくもなったし」
「…そうですか」
「昼のこと根に持ってる?」
「…」
「奴隷を人として見なかったこと?それともレンを言いくるめたこと?」
「…どちらかと言えば、どっちもです」
「奴隷をどう扱うかは人それぞれだよ。優しくしたいなら優しくすればいい。あの奴隷はもうレンの所有物だからね。でも合理的な思考はできるようになっておかないと。ルシアナにお子ちゃまって馬鹿にされるかもよ?」
「じゃあ教えてください。どうすればリナさんみたいに大人な考えができますか?私だって早く大人になりたいんです」
「すぐにはなれない。ていうか私が大人に見えてたの?」
「大人じゃないですか。的確に状況判断して…」
「頭がおかしい奴を大人とは言わないよ。レンからはそう見えるかもしれないけど、実際は違うんだよ」
「じゃあ…大人ってどんな人のことなんですか?」
「完璧な大人は存在しない。ちゃんとした定義は無いけど、社会を俯瞰して的確に判断を下して冷静沈着で決して間違うことがないような人を大人って言うんだと思う。だけど、人が人である限りそれは不可能だし、いたとしても周りの人間がそれを良しとしないだろうね。自分より優れた人を羨んで妬んで陥れるのが人間だから。人間は不完全な生き物だから」
「聞けば聞くほど、リナさんが大人だと思えるんですけど。確かにリナさんは冷酷で無慈悲な時もありますけど、さっきの大人の定義は全て当てはまっているように感じます。私にとってリナさんは大人なんです」
「…じゃあ、私の良いとこだけ真似すればいいんじゃない。私だけじゃなく、クロエやルシアナの良いとこも…できるだけでいいから」
「良いところ、って…例えば何ですか?」
「ん〜…私が合理性、クロエが人間性、ルシアナが感情論…かな」
「クロエさんが人間性…。感情論って、役に立つんですか?」
「そりゃあもう、人の心を動かすのは正論よりも感情論だよ」
「そう、なんですね…」
レンが少し悲しそうな顔をする。
「ゆっくり学んでいけばいい。時間ならたくさんあるんだから」
「…最後に一つ、訊いてもいいですか?リナさんはどうして私を連れてきたんですか?王都には私より綺麗で可愛い子なんてたくさんいるはずですし、1人くらい連れてきてもよかったんじゃないですか?」
「…まあ、それでもよかったんだけど…なんていうか、ルシアナよりろくでなしな奴が多かったからあまり連れてきたくなかったんだよ。あとレンを誘ったのは、似てたから…かな」
レンの頬を撫でる。
「誰にですか?」
「………何でもない。始めよっか。3日ぶりだっけか、レンで遊ぶの」
「確か、そのくら…ンッ」
喋り終わらない内にレンにキスをする。
初めは優しく、唇を合わせるだけの軽いキス。10分くらい経ったら、次は舌を絡めるキスをする。でもあくまでキスは優しく行う。その間に頭を撫でたり、服を脱がせて胸を触ったり、乳輪を指でなぞったりして感度を高める。
「んっ……はぁ、リナさん…」
レンがねだるような眼差しで私を見つめる。
「…ちゃんと言って。どこ触って欲しいの?」
私がそう言うと、レンは私の手を自分の股に触れさせて言った。
「ここ、触ってくださいっ…」
「…分かった」
私はまず割れ目をゆっくり指でなぞる。
「んひっ……〜〜ッ……」
レンがさっきよりも感じた声を出す。レンの秘部はすでに愛液が滴っており、すんなりと私の指を飲み込んだ。先程まで強い、でも達するにはまだ遠い快感に体を震わせる。そのまま指を動かさずしばらく置く。
10分後。
「んぅぐっ……ハァ、ハァ…」
緩く続く刺激に息が荒くなっていく。
30分後。
「フーーッ……フーーッ……」
体は更なる快楽を求めており、歯を食いしばって私の焦らしをなんとか耐えていた。
1時間後。
「あ゛ーーー………ぁ゛ーーー………」
ここまでくると半目になって呻くようになる。
そろそろいいかな。
「イキたい?」
レンが激しく頷く。
「分かった。じゃあまず、これ舐めて」
レンの愛液でふやけた指を抜いて口元に持ってくる。
レンはすぐに私の指をぺろぺろ舐めてからしゃぶり始める。
健気に自身の愛液を舐め取ろうとする姿は可愛らしい。
「もういいよ」
レンがしゃぶるのを止める。当たり前だが、指はレンの唾液に塗れていた。
「うぅ……リナさぁん……♡」
レンは我慢の限界なようで、袖を掴んで媚びるように私の名前を呼ぶ。
「はいはい」
私はレンの顔を掴んでこっちに向けさせると、今日一番の深いキスをする。両手で耳を塞いで、私の舌がレンの舌を蹂躙する音を脳に響かせる。
するとビクンッと一瞬レンの体が大きく跳ねる。私がキスをやめた後もしばらく手足をガクガクと震わせていて、本人は目をチカチカさせながら何個も頭に「?」を浮かべていた。
「ようやくキスイキできたね」
レンの頭を撫でながらそう言う。
一度イッてしまえば、後は簡単にイクようになる。それでもこっちもイジってあげないと、今のレンは満足できないだろう。
そう思いながらレンの中に指を入れて、天井のザラザラした部分をノックする。
「あぇ…?」
絶頂の余韻に浸っていた最中にいきなりGスポットを刺激されて、レンが間の抜けた声を出す。
「ハッ、ハッ…リナさん、まだダメ…」
「ん〜?ダメなの?こんなに私の指を締めつけてるのに?心配しなくても、もっと気持ち良くしてあげるよ」
そう言うと、グチュッとGスポットを強く押し上げる。
「お゛っ♡」
加えてもう片方の手で、レンの陰核をコリコリと指で摘む。
レンは私の袖を力一杯掴んで歯を食いしばって押し寄せる快楽に耐えようとしていた。
「……〜〜〜ッッッ……も、無理…………イ゛ッッッグ!!!!」
大声で絶頂を宣言すると同時に腰を精一杯浮かせて全身をガクガク痙攣させる。
「お゛ぉ゛〜〜〜〜…………♡♡♡」
レンの顔を見ると、涙を流しながらも瞼が閉じかけていて意識を飛ばしそうになっていた。
「トびそうになるの早くない?ねえっ」
グチュッッ
「あ゛っ…♡!!??」
再びレンの肉天井を押し上げる。レンは再度襲いくる強烈な快感に声を上げる。
「今日はルシアナがいないんだから、休んでる暇ないよ?」
レンの顔をこちらに向けると、もう勘弁して欲しいといった表情をしていた。私は全く気にせず、また深いキスをした。
その後のレンは、口と陰核とGスポットの3点責めを始めて20分くらいでガクッと気絶した。
そしたらいつも通りレンの体を拭いて、消臭のポーションを割って、寝袋に寝かせて娯楽を終える。
少しレンの顔を眺める。
「容姿が、少し似てるってだけなんだよな。性格なんて真逆もいいとこだし…。はぁ…会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい…………………………………………無理だけど」