表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/9

追放された令嬢

「お嬢様、おやめください!!」


 屋敷に仕える侍女を顔の骨が折れるほど殴った。






「き、貴様…こんなことをして、タダで済むと思うな!!」


 婚約相手の第三王子の手にナイフを突き刺した。






「リナよ。聡明だったお前が、訳もなくこんなことをするはずがない。理由があるなら話してくれ…頼む」


「…理由などありません、父上。これが、今の私です。どうか、親子など関係なく、相応の処罰を」


 父は顔を歪め、母は涙を流した。

 そうして1週間も経たずに、私は王都から追放された。



◇ ◇ ◇



 ガラガラと、車輪が地面を擦る音がする。およそ半日前からずっと続いている。

 追放されてから約12時間、ずっと馬車に揺られている。王都はすでに見えなくなっており、窓の外には何も無い平原が広がっている。

 読んでいる小説も、もう4冊目だ。こんなことならもっと持ってくればよかった。


「お嬢様、もうすぐ最初の村に着きますよ」


「…ようやく?」


「半日など短い方ですよ」


 いま話しかけてきたのは、唯一私につけられた護衛兼従者のクロエ。無愛想で可愛げのかけらもなく男みたいな女である。ただ、実力は折り紙つきだ。王都でも上位の強さだという。

 馬車が止まり、私とクロエが降りる。


「フツーの村だな」


「これでも富んでいる方ですよ。王都からも近いですし」


 クロエが近くの村人に話を聞く。


「すみません、この村に宿泊施設はありますか?」


「あ〜…宿は無いけど、あっちの方に空き家があったな。自由に使ってよかったはずだ」


「分かりました、ありがとうございます」


「でも、アンタら…そこらの平民じゃないだろ。服からして、どこかのお貴族様じゃないのか?」


「いえ、私たちはそういうのじゃありませんのでご心配なく。それでは、空き家は使わせて頂きます」


「あ、ああ…」


 そうして私とクロエは空き家の確認をした後、村を歩いて回ることにした。


「思ったより子どもいるもんだな」


「そうですね」


 子どもたちが無邪気に笑って走り回っている姿を見ていると、微笑ましく思える。それと同時に悲しさも込み上げてくる。

 村の中央の広場に来た。


「あれは…」


「おそらく商会の下請けでしょう」


 広場には馬車が3台停まっており、その近くで人々が売買している。


「せっかくだし、何か見てこうかな」


「お嬢様、お財布は持ってきましたか?」


「そのくらい持ってきてるわ、馬鹿にしてる?」


「そうですか。まあ、私は忘れたんですけど…」


「…え、王都に?」


「いえ、馬車の中に」


「じゃ早く取りに行きなさい」


「ッス」


 クロエがわざとらしい駆け足で来た道を戻る。強いけど間抜け、それがクロエ・ワンドレインという女なのだ。護衛には丁度いいが、私の趣味じゃない。

 まあ、あのアホはほっといて市を見よう。


 村に来たにしては、色んなものが揃ってる。王都に近ければこんなもんなのかな。

 何か果物でも買っていこうと思ったら…。


「お願いします!今回だけ、今回だけですから!」


「そう言ってこの前もおまけしてやったじゃねえか。今日という今日はダメだ」


「…」


 少女が売人の男に懇願している。


「そこをなんとか、お願いします!」


「いい加減…」


「私が出そう」


「え?」


「これで足りるか?」


 私は少女と男の間に銅貨を十数枚出した。


「あ、ああ…」


 男は戸惑いながらも、袋に入った野菜と果物を渡してくれた。


「どうも。はい、どうぞ」


「あ、ありがとうございます。何とお礼を言ったらいいか、このお金はいつか…」


「それより、話し相手になってくれない?」


「あ、はい…」


 そうして、私と少女は近くのベンチに座った。


「私はリナ、君は?」


「レンです」


「レンちゃんはお金無いの?それともさっきのは値切るためのお芝居?」


「ほ、本当にお金が無いんです」


「一人暮らしなの?」


「お父さんがいますが、働いてなくて…。私が他の家の手伝いをしたりして日銭を稼いでます」


「大変だね」


「リナさんはこの村の人じゃないですよね。どうしてこんな村に?」


「王都から追放されたからさ、旅をしようかなーって思ってさ。とりあえずこの村に立ち寄ったんだ」


「つ、追放ですか!?何をしたんですか?」


「まあ、色々とね〜…。実家からお金もくすねてきたから、行けるとこまで旅しようと思ったんだ」


「そ、そうなんですね…」


「………ちょっと、お花摘みに行こうかな。もしアレなら、帰ってもいいからね?」


「あ、はい…」


 立ち上がって、レンに背を向けて歩き出す。


 ポトッ


 そしたら財布を落とし、そのまま歩いていく。

 レンの視線は落ちた財布に向いた後、すぐに私の背を見た。私が十分離れたことを確認したら、財布を拾って中を見る。中には金貨が10枚以上入っており、その中から2枚を手に取った。

 その瞬間、初めて自分の首元に剣を置かれていることに気づいた。


「ひっ…」


「お嬢様の財布に、御用がおありですか?」


「…」


「返答次第では、今ここで斬首に処すことになりますが」


「…ひ、拾った、落としたので、拾っただけです…」


「そうですか。では何故、財布から金貨を取り出したのですか?」


 クロエがレンの顔を覗き込む。


「ハアッ……ハアッ……」


「おーい」


「!」


「お嬢様?」


「あんま虐めてやるなよ。財布は私がわざと落としたんだから」


「そうでしたか」


「わ、わざと…?」


「うん。まさか本当に盗もうとするとは思わなかったけど。恩を仇で返されて悲しいなー、どう落とし前つけるぅ?」


 私はしゃがんでレンの頭をポンポンと叩く。

 レンは恐怖でフルフルと震えている。


「ゆ、許してください。何でもしますから…だから、命だけは…」


 レンが私に土下座する。


「今、何でもするって言ったね」



◇ ◇ ◇



 夜。空き家の寝室。


「傷はつけないから、リラックスしていいよ」


「…は、はい」


「それにしても、もっと嫌がるもんだと思ったけど、案外素直に了承したね」


「何でもすると言ったのは、私なので」


「まあいいや、自分で脱いで」


 私はベッドに座り、前にレンを立たせて服を脱がせる。

 彼女が自ら衣服を剥ぐごとに白い肌が露わになっていく。


「下着も脱いでね」


 恥ずかしそうにしながら下着も脱ぎ捨て、ついに一糸も纏わぬ姿となった。さすがに手で秘部は隠しているが。


「やっぱりな…」


 レンの体には痣や火傷の跡が複数あった。


「父親に?」


「はい…お酒を飲んで機嫌が悪いと、殴ったり、煙草を押し付けたりします」


「…ハアァ、ちょっと待ってて」


 私はバッグから緑の液体が入った小瓶をレンに渡した。


「こ、これは…?」


「いいから飲んでみ。毒じゃないから」


 レンが恐る恐る液体を飲む。


「ゔー。不味いです」


「あっはは、言うねえ」


 すると、レンの体にあった痣や傷がどんどん治っていく。


「……」


「一応安全な市販の回復薬なんだけど、痛みとか痒いとことか無い?」


「…はい」


「よかった。じゃあ…」


「リナさんは……私はあなたのお金を盗もうとしたのに、どうしてこんなに優しくできるんですか」


「優しく見えたの?」


「だって、回復薬なんて高価なもの…」


「分かってると思うけど、お金は有り余ってるからさ。それに…」


 レンの顎をクイッと上げる。


「レンは可愛いんだから、傷があっちゃ勿体ないだろ?」


 少しだけレンの顔が緩む。


「そうだ。念の為、こっちも飲んどいてもらえる?」


 今度は薄いピンク色の液体が入った小瓶をレンに渡す。


「これも何かの薬ですか?」


「まあそんなとこ。とりあえず飲んでみて」


 レンが、今度はグイッと液体を飲む。

 私は空になった小瓶を受け取る。


「どう?」


「少し、甘いような…」


「最近の媚薬は味にも気を配ってて良いよね」


「………………え?」


「体を好きにしていいって、了承したのは君だからね?」


 驚きと怒りが混ざった表情の彼女を眺めてると、段々と顔が紅潮し、息が荒くなってくる。

 胸の突起はツンと勃って、股からはポタポタと汁を滴らせ始める。


「ハァ、ハァ…んむっ」


 辛そうな彼女を抱き寄せて、唇を重ねる。


「ん〜、ん……」


 キスの最中、レンは息を止めていた。だから10秒も経たずにキスを終わらせた。

 だが、ウブな彼女を蕩けさせるには十分だった。

 精一杯息を吸うレンの頭を優しく撫でる。

 そして耳元で囁く。


「安心して。ちゃんと気持ち良くしてあげるから」


 その夜は、日付が変わるまでレンの華奢な体を弄んだ。



◇ ◇ ◇



「…………わっ!」


 レンが飛び起きる。


「…あ、朝?」


「あ、起きたね」


 私は寝室に入ってホットミルクをレンに渡す。


「あ、ありがとうございます」


「体の調子はどう?」


「全身バッキバキです」


「あれだけイキまくってたらそりゃあね」


「い、言わないでください…」


 レンがゆっくりホットミルクを飲む。


「これから家に帰るんだろ?」


「はい、そうですね…」


「もしレンさえ良ければ、私たちと一緒に旅をしないか?」


「え?」


「正直これからの旅、私とクロエだけだと退屈で死んじゃいそうなんだよね。それに…」


 レンの桃色の髪に触れる。


「私自身、レンのことを気に入ったってのもあるかな」


「……」


「強制はしない、決めるのはレンだよ」


「…………私も一緒に行きたいです」


「いいの?お父さんを置いていくことになるけど」


「いいんです…。確かに悪い思い出だけではありませんが…今のお父さんは、私をお金を稼ぐ道具としか思ってませんから」


 私はレンの頭を優しく撫でる。


「それでも、少しでも、救われてほしいとは思います。他人事になってしまいますが」


「救済かぁ……。そうなればいいね」



◇ ◇ ◇



「本当にお金を持ってこなくてもいいんですか?」


「いいのいいの」


 私とレンは、空き家を離れて馬車の方に向かう。


「それより、お別れはよかったの?」


「それこそいいんです。怒鳴って殴られるだけなので…」


 馬車の近くでは、クロエが剣を拭いて待っていた。


「付いていくことにしたんですね」


「は、はい、よろしくお願いします」


「昨日は随分とお楽しみなようでしたが」


「…そ、そんなに、声大きかったですか?」


「下の階にいましたが、とても気持ち良さそうでしたよ」


 レンが両手で顔を覆う。


「それよりクロエ、ちゃんと処理した?」


「…処理とは?」


「…え、まさかそのまま?」


「言われたことしかしてませんが」


「ハァァ……」


 クロエの融通の利かなさに頭を抱える。


「あの、何の話ですか?」


「天使の代わりの話。末が天か泥黎かは知らないけど」


「?」


「終わったことだしいいよ。じゃあ、出発しよう」


 2人と一緒に馬車に乗り込む。

話が進むにつれてダークさが滲み出てきますのでご注意を。不定期更新です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ