102 和太鼓のレッスン
和太鼓の先生がいらした。
イメージは”漢”みたいな感じだと思っていたが、ドレスを着た優雅に見える綺麗な女性だった。女性には女性の先生がレッスンを担当するのだろうか。
この和風でも無く洋風でも無いオシャレな体育館の様な練習場の綺麗なホールに似合う美しい方。
先生もクリスティーヌ様もドレス。
私だけラフな格好のワンピースで場違いな様に感じてしまう。
ふんどしの事など忘れ、今度はワンピースの事が気になってきた。
「まあ、こちらの方がクリスティーヌ様の仰っていた体験レッスンの方ね。私はエーリスと申しますわ。是非体験レッスンを楽しんでいって頂戴ね。」
「エリナと申します。本日はよろしくお願い致します。ラフな格好で申し訳ありません…」
「あら、ふんどしを忘れてしまったのかしら…?」
「いえ! ふんどしは着用しておりますが、ワンピースで来てしまったので…」
「それなら大丈夫よ! ふんどしさえ着用していれば後は何を着ていても大丈夫よ。正装の規定は赤いふんどしですもの」
「ああ、そうなんですね。それなら良かったです?」
やっぱり赤いふんどしが大事なのか…。
クリスティーヌ様がイチノセ様が広めたと前に言っていたが、なんて言って広めたんだろう?
何百年も前のことだから正確に伝わっているのかも分からないが、そんなに赤いふんどしが大事と伝えたのだろうか?
気にはなるがどうにも出来ない…。
とりあえず、赤いふんどしで今日のレッスンを楽しむとしよう。
ここは室内だから、風も気にならないし、解けて道端で落とす事も無いしね。
結果的に和太鼓のレッスンは楽しかった。
2時間のレッスンだったが、一瞬に感じる程に。
クリスティーヌ様は今練習している事を繰り返し練習していて、私は初心者という事でバチの持ち方から始まり、ここでの童謡の曲を教えてもらいドンドンカッカと叩き繰り返し練習をした。
音源の様な物はもちろん無いので先生が歌いながらの指導だ。
クリスティーヌ様は自分で歌いながらやっていて、太鼓の音でどんな歌なのかはあまり聞こえなかったが凄く迫力のあるアップテンポな演奏だった。
練習が終わり、クリスティーヌ様とエーリス先生に貴方も今後も続けないかと勧誘されたが、それにはきっぱりとお断りをした。
楽しかったが、継続してやるのは時間的にも難しいしね。
そんな感じでレッスンは終わり、再びの関門である帰宅までの道。
行き同様にちょこちょこ歩き、風に気を付けながらの帰宅。もちろんふんどしを落とさずの帰宅だ。
これまた慣れず行きの時のような疲労感でやっとの到着。
着替えたらランチに行きましょうとクリスティーヌ様からのお誘いがあり、着替えてすみおと戯れながら待つ。
今回もいつものメンバーで迎えに来てくれて、すみおと一緒に出発だ。
クリスティーヌ様に付いていき到着したのは居酒屋の様な雰囲気のあるお店。
早速中へ入りメニューを見る。
ここはやはり居酒屋の様でおつまみになりそうなメニューと日本酒(清酒)があるお店だった。
侍女と護衛は仕事中の為お酒は飲まないが、クリスティーヌ様と私は飲むことに。
そういえば、クリスティーヌ様の年齢は知らないが2人が止めないという事は成人しているという事だろう。
ただ、20歳以下の様に見えるから一応様子は気にして見ておかないと。
念願の日本酒での昼飲み。
最高すぎて涙ぐむ。
ヴェルジック領は、日本に戻って来たような気持ちになり、何度も涙している。
しかし、ここは日本では無いのも分かっているので複雑な気持ちにもなる。
帰れないなら日本を思い出したくない様な気もするし、まだ気持ちの整理はつかない様だ。
それでも、今楽しいかと聞かれれば楽しいと答えるし、幸せかと聞かれたら幸せだと答えるだろう。
さてさて、少し暗い気持ちになってしまったが今を楽しまないと。
昼飲み会を楽しく過ごし気が付くとおやつ時の時間になっていた。
クリスティーヌ様はお酒に強いようでテンションは上がっているが問題は無さそうだ。
ちょうど良い飲み具合なのでここでお開きとし城へ戻る事に。
クリスティーヌ様も自分の御殿へ帰り、私も泊まらせてもらっている御殿へ。
良い気分で寛いでいたつもりが寝てしまったようで気が付くと外は真っ暗だ。
まつさんに時間を聞くともう夜の8時だった。
寝すぎてしまった様で夕飯の時間も過ぎている。
ご飯を食べるか聞かれたが、昼に食べすぎているせいかお腹が空いていないので断り、寝ている間にクリスティーヌ様は来ていないか確認をすると、クリスティーヌ様の侍女であるせっちゃんが今日の夕飯は別でとここに言いに来ていたそうだ。
クリスティーヌ様も爆睡していたのかなと予想する。
夕飯は辞退したのでゆっくりとお風呂に入ることにした。
湯舟に浸かり、この約1週間を振り返る。
リフレッシュ休暇と言うかバカンス休暇と言うか、それとも里帰りと言うのか分からないが、ゆっくりだったり楽しく過ごすことが出来ているがそれも後少しだ。
後2泊したら帰宅となる。
やっぱり楽しいが家が恋しい。
仕事もみんなに会えることも楽しみだ。
お土産のかんざしは喜んでくれるだろうか?
…うん。それだけじゃ足りない気がする。
明日また城下町へ行き他にもお土産を買おうと思う。