第一話 どこだ?ここ。
なんだか暖かい。こう、なんとも言えない気持ちよさに包まれている。
すっと目が覚めた。珍しく目覚めが良かった。
だが、いつもの母親の言葉は無かった。
周りを見渡すが、特に何も無い。
まるでミニマリスト最終形態が住んでいる部屋の様だ。
「どこだ?ここ。」
なんて、ありふれたセリフを口にしてみるが、
少し小っ恥ずかしいだけだった。
「初めまして。」
と後ろから綺麗な声がした。
後ろを振り返ると、椅子に座り静かに微笑む美人がいた。
俺は状況が分からず、ぼーっと彼女の顔を見ていると、
突然その可愛らしいお口から針の様に鋭い一言が飛び出た。
「あなたは死にました。」
は?急に何を言っているんだ?
だって、俺は今ここにいるじゃ無いか。
と、冷静に判断したが、何故か心臓の鼓動が鳴り止ま無かった。
「そうか!これは夢か!」
頬をつねってみた。痛かった。
痛かったので、夢では無いかもしれない。
次に目を瞑ってみた。何も変わらなかった。
他にも夢から覚める解決策を考えてみたが、出てくるのは
解決策では無く、涙だった。
俺は思い出した。ついさっきのことを。何があったのかを。
「まだやりたいことめちゃくちゃあったんだけど…。」
泣いた。風呂が満タンになるくらい泣いた。こんなに泣いたのはスタンドバイミードコえもんを見た時以来だ。
10分ほどで気を落ち着かせ、美人の存在を思い出した。こんなに待たせたのに怒る様子もなく、ただ俺を見守るかの様に微笑んでいた。
「見て下さい。」
彼女は俺の足を指差した。
俺の足は消えていた。
「生きるということは、地球という生命の星に足を付くということです。
死んでしまい生と死の神に足を取られてしまったあなたは、足を付く。つまり、生きる権利を失ってしまったのです。」
なるほど。だから幽霊は足が無いと言われてきたのか。
「あなたには選択肢が3つあります。
一つ目は、魂のみの存在となり、あなたが元いた地球で
暮らす事。
二つ目は、別の次元の地球に転生する事。
三つ目は、魂を私に預け、無に帰す事。」
正直、何を言っているのか半分くらい分からなかったが、
三つ目は絶対選んではいけないという事は瞬時に見抜いた。
「二つ目はどういう事ですか。別の次元というのは?」
と俺が聞くと、彼女は丁寧に教えてくれた。
「地球という生命の星は数にして160個ほど存在します。あなたの住んでいた地球はその内の1つということです。」
意味が分からない。地球は160個あったのか?
疑問はいくらでも出てくる。
「分かりませんよね。簡単に言いますと…」
と言うと彼女は俺とよく似た、というか俺そのものを作り出した。
「これはあなたです。」
俺は目の前の状況に困惑し、訳がわからなかったが、
訳がわからなすぎて、逆にその状況に順応してしまった。
俺は俺をまじまじと見た。
俺ってこんな顔だったんだ。鏡で見る自分と他者が見る自分は同じだけど、違って見えた。
「千広はこんな顔の俺を愛していたのか。」
俺なのに俺じゃ無い奴と付き合っていたかの様に思えて、
少し嫉妬してしまった。
「あなたと私が作り出したあなたは同一人物です。
ですが、性格が違います。
つまり、私が言う別次元の地球とは地球という惑星は同じですが、作りや中身が違います。
ある次元の地球は、ガスが充満しており、人はそれに順応しています。
また、ある次元の地球は魔素が満ちており、人はそれを魔力に変換し、魔法を使っています。」
と言うと、彼女は俺に向かって手を広げた。
「炎魔法―ファイア
と言ってみて下さい。」
俺は言われるがままに口にした。
「炎魔法ーファイア」
その直後手のすぐ前に魔法陣が現れ、その魔法陣から火の玉が飛び出た。
「なんだこれ!かっけえ!」
と、少年の様にはしゃぐ俺を見て彼女は
「ほぼ全ての魔法が使えます。私の使える範囲ですが。
それが魔法です。」
魔法に関してはすぐ飲み込めた。
子供の頃から魔法を使うのに憧れていたからであろうか。
とりあえず魔法ってすげえ!かっけえ!




