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p.2

 数字は何の前触れもなく突然僕たちの生活に入り込んできた。初めのうち、人々はその数字の持つ意味が分からず、なるべく接触をしないように避けて生活をしていた。


 しかし、日を追うごとに空中に漂う数字の数は増していった。目の高さをまるで蝶のようにフワフワと漂う数字、2階の窓から部屋の中へ入りたそうにしている数字。屋根に上って手を伸ばさなければ届かないような場所にいる数字。人の出入りにくっついて室内へ入ってくる数字。


 空から落ちてくる数字は、至る所に漂った。僕たちの生活を浸食するかのように空間を埋め尽くし、いよいよ僕らは数字を避けられなくなった。


 逃げ場を失い、幾人もの人が意図せずに数字と接触をした。空中を漂っている数字に触れると、それはふっと消えてなくなった。まるで触れた者の体内にでも吸収されたかの如く綺麗にその空間から消え失せた。


 数字と接触してしまった人たちは、次に自分たちに起こる変化に怯えたが、特に体調が悪くなることも、体に異常をきたすこともなく、あれほどまでに数字に対して警戒していたのは何だったのかと、拍子抜けしてしまうほどに変化はなかった。ただ一点を覗いては。


 数字を体内に取り込んだと思われる人々は、傍目にはそれまでと変わらないように見えていたが、接触直後から、彼らの視界の右端には小さな数字が常に映るようになっていた。


 どうやらそれは接触した数字を加算して表示しているようだったが、それ以上のことは分からなかった。


 視界の端に常に数字が表示されるというのは、初めのうちは鬱陶しく感じたが、慣れてしまえばどうってことはない。特に影響らしい影響がないと分かると、人々は空中に漂う数字を避けなくなった。


 数字と接触をするたびに視界の端で小さな数字がその数値を伸ばしていく。数字との接触を恐れなくなった結果、そのほとんどが誰かの体内へと取り込まれ、空間を埋め尽くすほどだった数字は一掃された。その後も、数字は空から落ちてきてはいたが、人々が気にせず体内へと吸収するため、生活を侵食するほどの膨大な数字に埋め尽くされることはなくなった。


 数字が漂っていることが当たり前の生活になった頃、人よりも少しだけ抜きん出た才能を見せる者たちが話題になった。彼らに共通するのは、視界の端の数値が十万を越えているという点で、研究者たちは、この点にこぞって着目した。


 それは今ではスコアと呼ばれ、僕らの能力値を表すものとなった。

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