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やっと、事件解決です

「か、壁が犯人だと?」

「いや、壁は人じゃないだろう」

「犯壁?」

「なんだ、その中途半端な高さしかなさそうな仕切りは?」

「床と天井の場合だった時は・・・」


 ・・・普通、犯人を指定した時って、そちらに注目が集まるのではないだろうか?

 せっかく一世一代の発表したというのに、皆の視線は指の先より、私に集まってしまっている。


 まあ、私の指に従って、皆が皆壁を見つめるのも変だけど。


 私だって、いきなり指差されたのが壁なら、ん? ってなるし、早く説明して欲しいと思うだろう。


 いち早く、ハッ! とした顔で壁を叩いたり、耳を当てたりできる、騎士団長みたいな人ばかりではないのだ。


 ・・・調べるなら、パーティー会場の壁ですよ?


 そして、ビシッ! とさせた指は、いつおろせばいいんだろう?

 初めてやる事には、わからないところだらけだ。


 そして、アン。貴女はいつまで私に抱きついているのかしら?

 そろそろ暑くなってきたので解放して欲しいんだけれど。


 ◎ー ◎ー ◎ー


 王様が、すっ、と。手を上げただけで、室内に静けさが戻る。

 ちょうどいい。私もまた、このタイミングで腕を降ろさせてもらった。

 ・・・アンも離れなさい。


「皆様の疑問はごもっともです。ではまず、事件の始まりから御説明させていただきます」

 自分が不在の婚約破棄の一幕を説明するのって・・・。

 我ながら、何をしてるんだろう? と思いつつも口を動かす。


「次に、動機の線ですが」

 たどっては途切れ、たどっては途切れ。

 なぜ結論から言わないんだ? と無言で主張している人は会議慣れしてるんだろう。

 後一歩踏み出せればとなりの人のように、ああ。誰も動機がなかったかと悟れるのに。

 我ながら、下手くそな説明だなと思いつつも口を動かす。


「結論として、(もち)いられた手段が決め手となりました。・・・魔術師長?」

 えっ、わし? という顔ね。


「使われた魔法の分析結果と魔力圏の説明を」

「わかった。わしの調べた限りでは・・・」

 できれば “あの部分” を強調して欲しいんだけど、伝わったかしら?


「通常、魔力圏は心臓を中心に、幅は伸ばした腕が届く範囲、高さは頭から足元までとなっておる。高等とされておる、相手直近で発動させる魔法も実はこの圏内で組み立てられ射出されているんじゃな。つまり、発動させた魔法を飛ばすのか、材料と設計図を飛ばして現地で組み立てるかの違いしかないんじゃ」

 うん。伝わってなかったわね。


 そして、アン。うつらうつらしないで頂戴。

 飽きて寝てる人なんて───ちょっとしか───いないわよ。


 王様が何かメモってるんだけど、大丈夫かしら?


「今回は射出の痕跡はなかったのですね?」

 今度は逆。余計な事を言わないように祈る。


「うむ」

「魔力圏を伸ばしたりするのは?」

「人間技ではなかろうて」

 はい、頂きました。呆れ顔と引き換えに。

 いやいや、確かにさっき聞いたばかりだけど!

 私は覚えてても、ここには初耳の人がいるかもしれないじゃない!

 そして、アン? なぜ、「へー」とか言ってるのかしら?


 ◎ー ◎ー ◎ー


「私は、魔術師長の言った『人間技では無い』で閃きました」

 たっぷりの間。

 自分の言葉が相手に届き、染み込み、満ちるのを待って──。


「このような事、つまり王族がいきなり倒れる現象は、以前、いえ。そう呼ぶよりも過去と言うにふさわしい歴史の中にもあったのです! そうですね、魔術師長!」

 えー。またわし? って顔ね。


「このお城で王族が倒れた時の状況(・・・・・・・)を。できれば似たような事例で」

 似たような、のところで、おもいっきり目力を込める。

 ここで伝わらないと、本当に困るんだけど大丈夫かしら?


「では・・・二例ほど。最初は・・・もう百年ほど前になるのじゃが。当時の会議では税について話し合われており」

 よし! 伝わった!

 魔術師長が話したのは、税を重くしようとして反対された王と、些細な理由で戦争を始めようとした王の逸話だった。

 どちらも会議中、衆人環視の中で倒れた。


 つまり───。


「・・・愚かな行為を行った我らを、桜が(さと)してくれているわけか・・・」

 絞り出す、というのは。まったくもって、今の王様のような声なんだろう。


 魔力圏には体内も含まれる。

 それを踏まえて考えれば──

 ──(おの)ずと犯人もわかる。


 つまり、お城にいる我々は桜の木、つまり初代聖女もしくは勇者に常日頃から監視、いえ見守られているというわけだ。


「シャーロット。大義であった」

 一転、普段と変わらない様子で私は(ねぎ)われた。


「は」

 短く答えて、私達は退出した。


 ふーっともらした吐息は私とアン、どちらのものだったろう?


 二人分だったかもしれない。


 とにもかくにも、これでこの事件は解決と相成った。

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