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やっと、あのセリフです

 明るさは明らかになると明かされない。


 何を言っているのかわからないとお思いになる人は、我が国のお城の廊下を歩くといいだろう。


 巨木をくり抜いた───実際は人が何もせずとも生まれた───空間は窓も無く。


 磨き抜かれたような木目は、壁から内側に生えてる枝に咲き誇る桜の花が放つ光によって、ぼんやりと照らされている。


 はらり、はらりと。

 風もないのに散る花びら。

 個人的に桜が一番美しいのは、花びらが地面へと旅をする一瞬だと思う。


 それはさておき、天井一面に咲けば無くなってしまう、枝と枝の間の暗がり。


 明るさは明らかになると明かされない。


 真上から光を当てれば影が消えるように。


 光が満ちれば、個々の花は、輝きを失ってしまう。


 ・

 ・

 ・


 案内人がいるのはありがたい。

 自分が考えに沈んでいても目的地につける。


 頭はそんな事を考え、目は背中を追い、耳は足音を捕える。


「犯人はあなたです」

 物語のクライマックスで、よく探偵がいうセリフだ。


 彼らは、そうする立場に有り、知識に富み、自信に満ちている。


 同じなのだろうか? 違うのだろうか?


 彼らは内心に不安を抱えてはいないのだろうか?


 本当にこれで間違って無いと言い聞かせてたりはしないのだろうか?


 足元から伸びた影が、明かりの横を通りすぎるたびに、私自身を追い抜いて行く。


 何度も、何度も。


 ◎ー ◎ー ◎ー


「宮廷魔術師長及び、公爵令嬢シャーロット様、御入室!」


 案内人が声を張り上げて、重々しく扉を開いた部屋は、お城の結構奥の方、重臣の部屋と王族の暮らす境目辺りだった。


 というか、前に呼ばれた部屋と一緒。

 

 椅子に座っている人々も───今、最後の一人が着席して───同じ方々になった。

 前回とは違い、パーティーから直行してきてはいないので服は違うが、気合いは十分入っている。

 まあ、王様の御前なんだから当たり前か。


 スカートを、ちょんとつまんでご挨拶。

 後ろのアンと動きがそろってるのがわかる。


 呼ばれた理由はわかるけど、いきなり話しだしたりはしない。


 何事にも順番はあるのだから。 

 

 ◎ー ◎ー ◎ー


「息子が目覚めぬ」

 意外と言えば、意外。

 けれど、今の(・・)私にとっては、想定内。

 それは私に渡された、最後のピースだった。

 

 ざわざわ。


 前からも、後ろからも。

 予想を外し当惑したような気配がしてるが、皆の求める言葉も、当たり前だが発せられた。


「事件の調査は進んでおるか」

 ピタリ。

 全員、一番最初の一言が発せられる前に押し黙った。

 ・・・見事なタイミングだけど、一体どういう仕組みなんだろう?

 絶対王様の口元なんか見てないよね?


「はい。犯人もわかっております」

 まあ、それはいい。

 私のさほど大きくない返答が王様に聞こえれば。


 ・・・そして、後ろで誰かが言ってる「えええっ!」とかが聞こえなければ。


「では、聞こうか」

 ざわざわ、からの~ピタリ。


 もちろん王様だって、独自に調査はしているだろうし、私達の動向だって御存知のはず。

 つまりは、まったく手がかりがつかめてないのもばれてるわりには、眉一つ動かさ(おや?とも現さ)ない。


 まあ、いい。次もそうしていられるかしら?


「犯人は貴方です」

 私は真っ直ぐに人差し指を突き出した。


 ◎ー ◎ー ◎ー


 ここで、私の現在位置を説明しよう。

 王様の正面。説明終わり。


 ざわり、ざわざわ、ざわ、ざわり!


 ざわざわ、どころじゃあなく騒がしい。

 当たり前だけど。

 あ、お父様が顔を片手で覆って天井を見てる。


「おじょ、おじょ、おじょ、お嬢様~!」


 がばりっっと後ろから私にしがみついたアンが、私の腕の方向を変える。


 九十度、百八十度、まだ足りない。

 二百七十度からの~、三百六十度!

 ・・・同じところよ。


「・・・壁が犯人か?」

 さすがに少しは驚いただろうが、よく見ればすぐに気づいただろう。私の指が自分からずれていたのに。


「はい。床でも天井でもいいのですが」

 再び静まり返った室内に私の声だけが響いた。



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