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状態異常の亥城さん  作者: 栗尾りお
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状態異常の亥城さん 4―4

 え? 何これ?


 あまりの出来事に起きた瞬間パニックになった。気が付いた時にはすでに映画が始まっていた。それに関してはどうでもよかった。それより重要なのは――

 

 手首握られてる? それも亥城さんに? 何で?……いや、待て落ち着け。これは夢だ。さっきから寝てたみたいだし、こんな最高のシチュエーションが現実な訳がない。


 そう思いながら、左頬を思いっきりつねる。


 うん、痛い。ってことはこれ全部現実だ。つまり、今俺は好きな人と二人っきりで恋愛映画を見に来ている。しかも、向こうから手を握ってきてくれた。ダメだ。あまりにも素晴らしいシチュエーション過ぎて思わずにやけてしまう。落ち着け俺。隣でニヤニヤしているのがばれたら素晴らしいシチュエーションが終わってしまう。ここは平常心、平常心。


 軽く深呼吸をして勝手に上がる口角を落ち着かせる。


 よし、落ち着いた。手首を握られたまま映画を見続けるのもいいが、せっかくなら手を繋ぎたい。だが、手を握るには早すぎる気がする。この映画がいつ始まったか分からないが、おそらくまだ序盤だ。となれば、いい雰囲気になるシーンはたくさんあるはず。そのタイミングで手を繋げば完璧だ。せっかく亥城さんの方から繋いでくれたんだ。最後くらい男の俺がやらないと。


 映画を見つつタイミングを伺う。しかし、待っているときに限っていいタイミングが見つからない。というか、いいタイミングって何? 考えれば考えるほど分からなくなる。実際はそれほど時間は進んでいないが、焦っているせいか時の流れが速く感じる。


 ダメだ。このままだとどんどん映画進んで何もせずに映画が終わってしまうかもしれない。早く、何でもいいから分かりやすくていいタイミング早く来い。亥城さんが手首を離すその前に……あれ? でも何で手首なんだろ? 普通『繋ぐ』と言ったら手なのに。これじゃ『繋ぐ』というより『捕まえる』といった方が正しい気がする。まさか!


 頭の中に最悪の可能性が描かれる。


 まさか、俺寝ている間に右手で何かしたのか? それを止めるために亥城さんは俺の手首を掴んでいたとか。信じたくはないけど、可能性としてはそっちの方がまだある。普段あんなに大人しい子が手を繋ぎたいがために手を伸ばしたが、間違えて手首を掴んでしまったなんてあり得ない。

 でも、いったい俺は何をしたんだろ? 急に怖くなってきた。さっきまでシチュエーションとかタイミングとか言っていた自分を殴りたい。とりあえず、今はじっとして映画が終わったら謝ろう。


 はぁ、せっかく好きな子と楽しく映画が見れるチャンスだったのに……最悪だ。


 そう後悔しながら、俺は残り1時間程度をじっと過ごした。

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